術前放射線療法で膵癌の治療成績が改善/ワイルコーネル医療センター | 海外がん医療情報リファレンス

術前放射線療法で膵癌の治療成績が改善/ワイルコーネル医療センター

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術前放射線療法で膵癌の治療成績が改善/ワイルコーネル医療センター


米ニューヨークプレスビテリアン/ワイルコーネルが行った試験で、術前放射線療法は、手術単独に比べて生存期間が約2倍になることが示され、患者に新たな期待をもたらしている。
ワイルコーネル医療センター
2008年11月5日

膵臓癌は最も致命的で、最も治療が困難な癌のひとつである。大きな進歩を見出した米ニューヨークプレスビテリアン病院/ワイルコーネル医療センターの研究者らは、手術可能な腫瘍を有する膵臓癌患者を対象に、術前放射線療法を行うことで生存期間が約2倍になることを明らかにした。[pagebreak]本試験の筆頭著者であるワイルコーネル医科大学臨床放射線腫瘍学助教であり、米ニューヨークプレスビテリアン病院/ワイルコーネルメディカルセンター放射線腫瘍医のDavid Sherr医師は次のように述べた。「術前放射線療法を受けた患者の全生存期間は、受けなかった患者のほぼ2倍で、腫瘍切除後に放射線療法を受けた患者と比べても生存期間は有意に延長しました。」

今回の結果は、International Journal of Radiation Oncology, Biology and Physics誌の2008年11月15日号に掲載された。

膵臓癌は、米国で5番目に致命的な悪性腫瘍であり、年間32,000人以上の米国人の命を奪っている。通常、治療が不可能に近い進行期にならないと発見されない。実際、膵臓癌の5年生存率は過去25年間、わずか5%という状態が続いている。

膵臓癌は発見可能となる時期には重要臓器に浸潤しているか、または転移してしまっていることが多いので、患者の15~20%のみが手術による腫瘍切除に適していると見なされる。術後放射線療法は、手術で切除できなかった可能性のある残存癌細胞を死滅させるために用いられてきたが、切除前に放射線を用いるという考えには一定の見解がなかった。

「術前放射線療法は、術後に行うよりも有益な可能性があります」とSherr氏は言う。「放射線療法により、腫瘍切除術の対象となる患者が増えるかもしれませんし、腫瘍を縮小させることによって、膵臓に近接した大血管などの重要臓器を危険にさらすこともなくなります」と話す。

さらに術前放射線療法によって、癌細胞が転移する可能性が低くなることがある。これは重要な考察といえる。というのも、手術で遊離した腫瘍細胞が血流に流れ込む可能性があるからだ。

「放射線療法は、十分に酸素を含んだ腫瘍組織に対して、より効果を発揮するため、手術前に施行したほうが有益であると思われます。手術後、瘢痕(はんこん)組織が形成される(傷口の治癒)ために組織に十分な酸素が送り込まれないことが多々あります」と同氏は述べる。

一般的に、患者自身も術前のほうが、術後に比べ放射線療法に耐え易い可能性がある。術後は衰弱しており、新たな治療を受けられるまでに体力が回復するには、長期の回復期を要する。

一方、切除可能な腫瘍を有する患者を対象とした術前放射線療法は、術後放射線療法に比べ生存期間が明確に優れていると示唆する主要な試験が、これまで存在しないことを著者らは認識している。

Sherr氏とともにワイルコーネル大学院の医科学院生Alexander Stessin氏と、米ニューヨークプレスビテリアン病院/ワイルコーネルメディカルセンター放射線腫瘍学の研修医であるJoshua Meyer医師は、全米調査である生存率・疫学・最終結果(SEER)の登録データベースの一環として1994年から2003年にわたり記録された膵癌切除3,885例のデータの後ろ向き解析を行った。

この症例のうち、2,337例(60%)が手術のみを受け、1,478例(38%)が切除後に放射線療法を受け、70例(2%)が術前に放射線療法を受けた。

術前放射線療法群の全生存率は23カ月であったのに対し、術後放射線療法群では17カ月、手術単独群ではわずか12カ月だったことを同研究チームは明らかにした。

患者の年齢、性別、癌のステージ、悪性度、診断時の年齢などの変数を調整したところ、術前放射線療法は、その他の治療法に比べて患者の死亡リスクが45%低下することが判明した。また、術後放射線療法と比べると37%の低下がみられた。

治療成績の改善はなぜ起きたのか?「術前放射線療法によって、腫瘍を縮小させることで、外科医が犠牲にできる正常組織の範囲が広がる可能性があります。そのおかげで、患者は顕微鏡的残存病変を有する可能性が低くなります」とSherr氏は推測する。

この研究の結果は、最終決定勧告がなされる前に医学研究における究極の判断基準であるランダム化前向き試験で実証する必要があると同氏は強調する。Sherr氏は将来こういった試験が実施されることに期待している。

「患者さんにとって勇気づけられるニュースでもあります」と話す。「術前放射線療法は、現実的に効果がありうると示唆されています。現在、膵臓癌が手術可能とみなされる場合、一般的に患者さんは迷わず外科手術に進みます。少なくとも、一部の症例においては、私たちが放射線を術前に用いることで治癒の見込みを助長できる場合があると思います。さらなる試験が必要ですが、このタイプの研究は治療を変えていく可能性を秘めていると信じています。」

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遠藤香利 訳
中村光宏(医学放射線)監修
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[url=http://news.med.cornell.edu/wcmc/wcmc_2008/11_25_08.shtml
Radiation Before Surgery Improves Pancreatic Cancer Outcomes
]原文[/url]

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