血管新生阻害剤は、血管を破壊するのではなく、強化することによって腫瘍縮小に貢献している可能性/ムーアズがんセンター | 海外がん医療情報リファレンス

血管新生阻害剤は、血管を破壊するのではなく、強化することによって腫瘍縮小に貢献している可能性/ムーアズがんセンター

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血管新生阻害剤は、血管を破壊するのではなく、強化することによって腫瘍縮小に貢献している可能性/ムーアズがんセンター


ムーアズがんセンター
2008年11

腫瘍が増殖するために血管を形成すること、いわゆる血管新生と呼ばれるプロセスを阻止する一つの方法は、血管増殖を促進する主要タンパク質を抑える薬剤を開発することである、と研究者らは考えてきた。しかし今、事実はその逆のようである。[pagebreak]ラホーヤにあるカリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)ムーアズがんセンターの研究者らは、VEGF(血管内皮細胞増殖因子)と呼ばれる標的タンパク質を阻害することによって、血管新生のプロセスに歯止めがかかることは現実には全くないというエビデンスを見つけた。それどころか、実際には、腫瘍内のVEGF濃度が低下することによって既存の血管が強化され、より強くより正常になる。場合によっては腫瘍がより大きくなることもある。しかし、その結果として、腫瘍は化学療法薬の影響をより受けやすくなるのである。

Nature誌2008年11月9日のオンライン版に掲載された論文によると、UCSD医学部の病理学教授およびムーアズがんセンターの副長官を務めるDavid Cheresh博士らは、マウスの腫瘍内のVEGF濃度および膵癌を含む様々な癌の炎症細胞を遺伝子学的に減らすことによって、血管新生阻害剤の作用を模倣した。またVEGF受容体の活性を阻害する薬剤も用いた。すべてのケースにおいて、血管は正常な状態に戻った。

アバスチンなどの血管新生阻害剤を化学療法薬と併用した場合に、はるかに効果をあげることがあるという最新のエビデンスについては、今回の知見によって説明可能であると研究者らは述べた。この結果によって、様々な癌に対してより適切な治療戦略への道が開かれるかもしれない。

「血管新生阻害剤を用いて腫瘍内のVEGF濃度を下げる場合、血管内皮細胞の減少および血管消失の程度は、腫瘍血管支持細胞の活性化ほど大きくないことに気付いた」とCheresh氏は述べた。「これによって血管は成熟し、より適切に薬物を腫瘍へ送ることになる。初めは腫瘍がより大きくなるが、化学療法薬に対する感受性は著しく高まる。」

その結果として、この知見により新たな癌治療戦略がもたらされるだろう、とCheresh氏は述べた。「つまり、適切な時期を選んで化学療法を施すことができるようになるだろう。最初に血管を安定化させ、その後で癌を治療できる化学療法薬を用いることができるだろう。」

UCSDの生物学教授である共著者のRandall Johnson博士、Cheresh博士および研究チームは、同誌の関連論文の中で、炎症細胞がVEGFを発現することができなくなった後、薬剤に対する腫瘍の感受性はより高くなることを明らかにした。

「これら2つの論文において、VEGFおよび血管新生阻害剤の新しい作用機序が明確になった」とCheresh氏は述べた。「薬剤によってVEGF活性を阻害する際、積極的に血管を成熟化し、それによって血管を減少させるのではなく、安定化してより正常な状態にするようである。」

VEGFは、通常、血管内皮細胞の増殖を促進し、それが腫瘍の新しい血管の形成に役立っている。しかし、腫瘍血管は脆弱に形成されており、血液や酸素、そして薬剤の供給は十分に行われていない。腫瘍内のVEGF濃度を下げることで、血管を取り巻く周皮細胞と呼ばれる細胞の活性が高まり、それによって血管は安定化し、化学療法に対してより感受性が高くなる、とCheresh氏は説明した。

Cheresh氏のグループは、VEGFと他の増殖促進タンパク質であるPDGFの受容体が、PDGFおよび血管支持細胞の活性を抑える複合体を形成することを見いだした。腫瘍は血管の形成を急ぐあまりVEGFを過剰に作り、それによって受容体複合体が生成される。「VEGFを取り除く場合、“ブレーキから足を離す”ことになる」と同氏は述べた。それによって周皮細胞の活動が始まり、血管が成熟する。創傷修復時に同様の作用機序が働く。

Cheresh氏は、今回の結果から癌に対する宿主の反応、例えば、血管成熟細胞を形成するかどうかは、治療に対する感受性に関して極めて重要であるということを示している、と述べた。「腫瘍が生き続けるか死滅するか、また薬剤に対する感受性があるか否かを左右するのは、治療だけではなく、癌に対して宿主が何を行うかである。私たちは、癌に対する宿主の反応、言い換えると癌に対する抵抗性を変えて、血管をより成熟させることができる。そして、それによって一次的に癌への血流を増大する。私たちは癌の感受性を上げているのだ。」

その作用機序は特定の癌腫に特異的なものではないので、固形癌の種類が問題になることはない、と同氏は指摘した。腫瘍血管の質が患者の化学療法に対する反応に影響する可能性があるということは、類似する癌を患う2人の患者が同じ治療に対して異なる反応を示す一つの理由となるかもしれない。

Cheresh氏は、一部の化学療法レジメンについては再検討する必要があるかもしれないと考えている。「利用可能な化学療法レジメンを検証し、おそらく薬剤の投与方法を再構築しなければならない」と同氏は述べた。「われわれは正しい薬を投与しているかもしれないが、投与の順番は正しくないかもしれない。どのように作用するのかを理解し始めたばかりなのだ。」

共著者は以下である:Joshua I. Greenberg, M.D., David J. Shields, Ph.D., Samuel G. Barillas, Lisette M. Acevedo, Ph.D., Eric Murphy, Ph.D., Jianhua Huang, M.D., Lea Scheppke, Christian Stockmann, Ph.D., and Niren Angle, M.D.

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豊 訳
千種葉月(薬学)監修
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[url=http://ucsdnews.ucsd.edu/newsrel/health/11-08Tumors.asp]原文[/url]

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