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癌患者の血栓予防試験/ロチェスター大学医療センター

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癌患者の血栓予防試験/ロチェスター大学医療センター


ロチェスター大学医療センター 2008年10月6日

外来で治療を受ける癌患者が増えていることを受けて、ロチェスター大学医療センターでは新たな課題に取り組んでいる。それは、最新の癌治療薬によって引き起こされうる、生命を脅かす血栓の予防対策である。

研究チームは今月、米国国立心臓・肺・血液研究所(National Heart, Lung and Blood Institute)から300万ドルの資金提供を受けて注目の臨床試験を実施し、現在の標準治療法を変えようと取り組んでいる。外来で化学療法を受けている患者を対象として、dalteparin(現在流通している1日1回投与の低分子ヘパリン)で肺塞栓症や静脈血栓塞栓症(VTE)などを予防できるかどうか検討する予定である。[pagebreak]同チームには、試験統括医師としてCharles W. Francis医師(同大学のJames P. Wilmotがんセンターの血液学/腫瘍学教授)、URMC試験担当医師としてAlok A. Khorana医師(血液学/腫瘍学准教授)およびMark B. Taubman医師(医学部主任、かつAab心臓血管研究所に所属)が加わっている。また、デューク大学は研究パートナーである。

血栓のリスクが高い患者を特定する手段は最近までなかったが、ロチェスター研究グループがリスクモデルを考案し、Blood誌に発表した。その後、同グループの情報に基づいて、米国臨床腫瘍学会は2007年に「癌患者を対象とした血栓予防に関する医療従事者向けガイドライン」第1版を発行した。次の課題は、高リスクの患者で血栓を予防可能であると立証することである。

Francis氏は「静脈血栓塞栓症は癌患者における主要な合併症の1つであり、2番に高い死因となっている。本試験の結果によって、これらの問題を予防し、癌患者に対する治療を改善する方法が示されるであろう」と述べている。

下腿や大腿部の深部静脈で血栓が生じた場合、血流が阻害され、疼痛が起こる場合がある。さらに重篤な場合では、血栓が移動して肺に到達し、動脈を閉塞するために致命的になり得る。入院中であることやベッド上で安静状態であることはリスクファクターであるが、より活動的な患者でも血栓は生じ得る。

入院患者の場合、血栓を予防するため、または発症後直ちに治療するため、dalteparinなどの薬剤を通常投与する。しかし、外来患者の場合、dalteparinなどの薬剤を血栓予防として用いることは、癌治療のプロトコールに含まれていない。

Khorana氏は「外来患者に関する問題点は、血栓を有するすべての患者に症状があるとは限らないという点である。肺に血栓の症状が認められる場合、患者は胸痛、息切れ、疲労や咳嗽を訴えるが、これらの症状は癌の症状と間違えられることがある」と述べる。

米国司法長官代理のSteven K. Galson氏(医師かつ公衆衛生博士)は、深部静脈血栓塞栓症や肺塞栓症の症例数を減少させるために2008年9月15日に「行動への呼掛け(call to action)」を発表し、そのような状況に関する知識を深めるよう喚起した。政府は、最高600,000人の米国人が危険な血栓を毎年引き起こすこと、およびその数はベビーブーム世代の加齢に伴って増加すると予想されることを想定している。

また、発症率が新規クラスの癌治療薬である血管新生阻害剤(アバスチンなど)の使用に伴って上昇すると考えられている。これらの新しい薬剤の毒性は化学療法剤と比較して低いが、VTEの高い発症率と関連している薬剤もある。

さらに、ある腫瘍では、その特性が血栓の原因になると考えられる。癌に伴うVTEによって、治療が中断される場合、入院となる場合、および死亡リスクが高まる場合がある。

癌におけるVTEリスクの生物学的因子を十分に理解するため、Taubman氏率いるロチェスター研究グループは、組織因子(TF)血漿中濃度の上昇が癌患者において血栓の予測因子であるかどうかも検討する。組織因子は、血小板内のタンパク質であり、凝固の発生機序および血栓の発症において重要な役割を担っている。dalteparin臨床試験に登録する患者および血栓リスクの低い対照群の患者から血液検体および生検試料を採取し、TF仮説について検定を実施する。

Taubman氏は何年もの間、心疾患における組織因子の役割を研究してきたが、最近、ある癌(特に膵臓癌)でTF濃度の上昇が関連することを示すデータを発見した。また、TF濃度は長年生存している前立腺癌患者で高くなる傾向もある。

TF濃度が高まる理由は完全に理解されているわけではないが、癌細胞が成長して死ぬたびに、血流にTFが流入すると考えられている。化学療法剤は、癌細胞が死ぬ場合、血流により多くのTFを流入させる一因でもある。

同氏は、「今回の助成金を得たことで、この興味深い分野の最先端に踏み出すきっかけができた。癌関連の組織因子に関する疑問点および癌患者の血栓リスクに関して抗凝固療法が有効であるかどうかについて、答えを導き出せると確信している」と締めくくっている。

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斉藤芳子 訳
林 正樹(血液・腫瘍科)監修
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原文

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