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起源細胞の特定が癌治療のカギとなる可能性/デューク大学医療センター

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起源細胞の特定が癌治療のカギとなる可能性/デューク大学医療センター

起源細胞の特定が癌治療のカギとなる可能性
デューク大学医療センター
2008/8/11

ノースカロライナ州・ダーラム — 癌生物学者らは癌化する正常細胞に着目し、できるだけ早期に腫瘍増殖を抑制する方法についての理解をさらに深めようとしている。[pagebreak]「癌となる特定の正常細胞を同定することで、癌の発生について批判的な洞察が可能となる」とデューク大学医療センターで薬理学および癌生物学准教授であるRobert Wechsler-Reya氏はいう。「これにより、われわれはより合理的で効果的な治療法を開発できるかもしれない」。

すべての癌は、ひとつの正常細胞から発生する。難しいのは、癌のタイプ別に、起源となっている細胞を特定することである。デューク大学のチームは、悪性脳腫瘍である髄芽細胞腫となりうる2種類の脳細胞を初めて明らかにした。デューク大学Preston Robert Tisch脳腫瘍センターのメンバーでもあるWechsler-Reya氏によると、この危険な癌は、小児に最も多く発生し、現在は手術、化学治療および放射線治療を併用した治療が行われているものの、非常に重度の副作用を伴うという。

髄芽細胞腫の原因となる正常細胞を特定するため、Wechsler-Reya氏の研究室はオーストラリアのクイーンズランド大学のBrandon Wainwright氏の研究室と共同で、発達過程にある小脳で細胞増殖の主要調節因子となるPTCH遺伝子のスイッチを切ることで髄芽細胞腫のマウスモデルを作成した。具体的には、ある特有の神経細胞(ニューロン)しか作ることができない顆粒神経前駆細胞(GNP)において、あるいは小脳であらゆる種類の細胞を作ることができる幹細胞において、PTCH遺伝子を不活性化することによる影響を調べた。

神経前駆細胞内のPTCH遺伝子を取り除いた場合、全てのマウスで髄芽細胞腫が発症した。幹細胞からPTCH遺伝子を取り除くと、最初はより多くの幹細胞が形成したが、これらの幹細胞の大部分は小脳内の正常細胞型となった。PTCH細胞不在でGNPを発生した幹細胞だけが髄芽細胞腫瘍を形成したのである。

Wechsler-Reya氏によると、これらの研究で髄芽細胞腫がGNPあるいは幹細胞で誘発されることが初めて決定的に示されたという。だがさらに重要なのは、癌形成においては変異が起こる細胞型が変異自体と同様に重要であることを示唆している点である。PTCH遺伝子不在の幹細胞はその他の型の脳細胞も形成したが、それらの細胞は腫瘍を形成しなかった。

「単に遺伝子が変異するだけでは癌発生にはつながらない」とWechsler-Reya氏はいう。「変異はしかるべき細胞型で、しかるべき時期に起こる。PTCH遺伝子の場合は、腫瘍形成の重要な背景としてGNPがある」。

正常細胞における増殖(細胞分裂)、分化、生存およびプログラム細胞死を調節している遺伝子について癌生物学者はさらに学ぶ必要があるとWechsler-Reya氏はいう。例えば増殖遺伝子に変異が起こると、細胞は過剰に分裂し、急速に増殖する腫瘍となる。これらの遺伝子が正常な発達中にどのような制御を受けているかを理解することで、ヒト癌において遺伝子が正常に発達できない仕組みを明らかにできる。

Cancer Cell誌8月号に発表されたこの研究およびWainwright医師の研究室への助成金は以下のとおりである。
Hope Street Kids Foundation, Kislak-Sussman Fund, Children’s Brain Tumor Foundation, Pediatric Brain Tumor Foundation, McDonnell Foundation, National Institute of Neurological Disorders and Stroke.
The collaborative work in Dr. Wainwright’s lab was supported by the National Health and Medical Research Council of Australia, the ARC Special Research Centre for Functional and Applied Genomics, the Queensland Cancer Fund.

本論文のその他の著者は以下のとおりである。
Zeng-Jie Yang, Shirley Markant, Tracy-Ann Read and Jessica Kessler of the Duke Department of Pharmacology and Cancer Biology; Tammy Ellis, and Melissa Bourboulas of the Institute for Molecular Bioscience at the University of Queensland in St. Lucia, Australia; Ulrich Schuller of the Center for Neuropathology at Ludwig-Maximilians-Universitat in Munich; Robert Machold and Gord Fishell of the Smilow Neuroscience Program and Department of Cell Biology at New York University School of Medicine; and David H. Rowitch of the Institute for Regeneration Medicine and Division of Neonatology at the University of California – San Francisco.

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河原 恭子 訳
中村光宏(医学放射線)監修

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原文

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