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2009/06/16号◆癌研究ハイライト

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2009/06/16号◆癌研究ハイライト

同号原文

NCI Cancer Bulletin2009年06月16日号(Volume 6 / Number 12)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~

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癌研究ハイライト

・子宮頸癌患者に対して生存期間を延長する治療レジメン
・肛門癌標準治療が確認された
・大部分の急性骨髄性白血病(AML)患者に対するドナーからの幹細胞移植は自家幹細胞移植よりもよい
・マイクロRNA発現の正常化はマウス肝臓癌の増殖を抑制
・高齢者の大腸内視鏡検査による有害事象は稀である

子宮頸癌患者に対して生存期間を延長する治療レジメン

国際的な第3相臨床試験の結果によると、化学療法剤ゲムシタビンを局所進行子宮頸癌の初回治療薬の1つとし、初回治療後の治療にも使用することで局所進行子宮頸癌患者の生存期間が著しく改善した。

2009年米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で最近発表された試験結果は、開発途上国における子宮頸癌患者の治療に重要な意味を持っている。広く利用される検診プログラムがないため、開発途上国では女性の70~80%は局所的に進行した段階で診断されると、本試験主任研究者であるメキシコ国立癌研究所のDr. Alfonso Dueñas-González氏は述べた。

IIB期からIVA期の500人以上の子宮頸癌患者が、パキスタンやパナマのようにさまざまな国々から本試験に参加した。患者は無作為に割り付けられ、試験治療群は外部放射線療法とシスプラチン/ゲムシタビンの同時併用治療後、小線源療法に加えてシスプラチン/ゲムシタビンによる補助化学療法を行った。標準治療群は、シスプラチンと外部放射線療法を併用した後、小線源療法のみを受けた。

治療後3年間癌が進行しなかったのは標準治療群が65%であったのに対して、試験治療群ではおよそ75%であった。全生存期間は40%以上改善したことを研究者らは報告した。当研究チームはゲムシタビンを加えて毒性が増すことを予測したが、実際そのとおりであった。

「全体では、グレード3、4の毒性の頻度は試験治療群の方が高く、主に血液毒性であった」とDueñas-González氏は語った。グレード4は全体的には少なく、概して試験群の毒性は「忍容できるもので管理可能であった」と同氏は付け加えた。

本試験は、局所進行子宮頸癌患者に対して「おそらく新たな標準治療と規定されるものである」とダナ・ファーバー癌研究所婦人腫瘍科主任のDr. Eric Winer氏は述べた。

肛門癌標準治療が確認された

肛門癌患者を対象として最大規模の臨床試験を実施したところ、現在の標準治療を変更すべきではないことが判明した。さらに、当被験者は再発予防を意図した維持化学療法による恩恵を受けなかったと、940人が参加した第3相ランダム化ACTII試験により報告された。

毎年米国で肛門癌と診断される患者5,000人のうち大多数は、放射線療法と化学療法が奏効することの多い扁平上皮型である。10年間、肛門癌治療は放射線治療+5-フルオロウラシル(5-FU)とマイトマイシン-Cによる化学療法であった。本試験で、英国の研究者らはマイトマイシン-Cをシスプラチンに置き換えることで患者の転帰を改善するかを調べたが、結果は、改善されなかった。さらに、シスプラチン+5-FU併用の維持化学療法による利益もなかった。

しかし、現在までに発表された国際的ないくつかの臨床試験と比較して、被験者は概ねきわめて良好な結果を示したとケントにあるメイドストーン病院のDr. Roger James氏は指摘した。同氏は最近のASCO年次総会でその知見を発表した。6カ月で両群の95%の患者は癌の徴候が完全に消失しており、本試験の患者の約85%の患者は3年間生存した。

シスプラチンは肛門癌以外の扁平上皮癌の治療に一般的に用いられるので、今回は肛門癌の治療について評価されたと研究者らは述べ、シスプラチンは投与しやすい薬ではなくマイトマイシンCによる化学療法とは異なる毒性があると付け加えた。今後の試験はおそらく特定の患者が他の維持療法から恩恵を得るかどうかを問うものとなるであろう。

大部分の急性骨髄性白血病(AML)患者に対するドナーからの幹細胞移植は自家幹細胞移植よりもよい

プロスペクティブ臨床試験のメタ分析に基づくエビデンスが発表され、その結果は急性骨髄性白血病(AML)患者の治療に、ドナーからの(または同種)幹細胞移植の使用を支持するものであった。この研究結果は、Journal of the American Medical Association誌6月10日号で発表された。

AML患者は通常、この疾患に関連のある遺伝子的要因により、予後良好、標準リスク、予後不良と分類される。予後良好群の患者は回復の可能性が最も高く再発の危険性が最も低い。National Comprehensive Cancer Network(NCCN:全米癌総合ネットワーク)によると、予後良好群は初回化学療法後に自家幹細胞移植を行うか、できない場合は2回目の化学療法を受けるべきであり、予後不良群は化学療法後に同種幹細胞移植を行うべきであるとされる。また、標準リスクの疾患がある人はどちらの方法が良いか明らかではないのでどちらの方法で治療を受けてもよいという。

今回、ダナ・ファーバー/ハーバードがんセンターのDr. JohnKoreth氏主導による国際研究チームは、無再発生存率と全生存率に基づき各リスク群の患者に対してどの治療をエビデンスが支持するかを明らかにするため、同種および自家幹細胞移植を比較する文献をレビューした。研究者らは成人患者6,007人を対象とした米国、欧州、日本の24件のプロスペクティブ臨床試験を検討した。

予後良好群の患者は自家幹細胞移植を受けても同種幹細胞移植を受けても無再発生存または全生存において有意な差を示さなかった。しかし、標準リスク群と予後不良群は自家幹細胞移植に比べて同種幹細胞移植を受けた際、明らかな有益性を示した。

全体として、研究者らは標準リスク群と予後不良群の患者に対する同種幹細胞移植の有益性は著しく明らかであると述べた。しかし「患者の年齢、併存疾患、他の分子病変の存在などの要因に基づき、同種幹細胞移植の決定を一層個別化する必要性がある」ことを彼らは指摘した。

マイクロRNA発現の正常化はマウス肝臓癌の増殖を抑制

ジョンズホプキンズ大学医学部の研究者らは、肝臓癌細胞に欠如している単一のマイクロRNA(miRNA)の発現を回復させることでマウスの腫瘍増殖を阻害できることを示した。MiRNAは短いRNAで、遺伝子の活動を制御しており、それらの遺伝子のなかには癌に関与するものもある。この研究成果は6月12日号のCell誌上で発表された。

研究者らは、正常な成人の肝臓組織には豊富に存在するが、ヒト肝臓癌(肝細胞癌、HCC)や実験用のHCCマウスモデルにはともに欠乏しているマイクロRNA・miR-26aに注目した。

マウスモデルで肝腫瘍の形成を開始した後、肝臓組織を特異的に標的とするよう改変されたウイルスを注入して、腫瘍細胞内のmiR-26a発現を回復した。このウイルスは、miR-26a遺伝子とともに蛍光たんぱく質の遺伝子を持ち、導入の成否を視認できる。

MiR-26a遺伝子を含むウイルスを注入されたマウス10匹のうち8匹は、ほんの小さな腫瘍しか発生しないか、あるいは検知可能な腫瘍は発生しなかった。悪性腫瘍を発症した2匹のマウスでは、肝臓組織への導入が成功したmiR-26a遺伝子がきわめて少なかった。MiR-26a遺伝子を注入されなかった対照群のマウス8匹のうち6匹では、悪性度の高い腫瘍が発生した。

miR-26aの標的は、肝臓腫瘍のイニシエーション(発癌の初期段階)に主たる役割を果たしている特異的な癌遺伝子ではないと考えられている。むしろ癌細胞の増殖を広く抑制し、アポトーシス(細胞死)を誘導するように作用する。正常な肝細胞では、特に影響は見られないが、これはmiRNAがもともと高レベルであるためと考えられる。

本研究では、「miRNAの全身投与が臨床的に実施可能な対癌治療戦略になりうるという概念の検証ができた」と著者らは結論づけている。

高齢者の大腸内視鏡検査による有害事象は稀である

外来で大腸内視鏡検査を受ける高齢者では有害事象のリスクは低い。しかしながら年齢の上昇とともに、あるいは糖尿病、脳卒中、うっ血性心不全など特定の健康問題を抱える場合にリスクは増大する。この知見は、高齢者の外来大腸内視鏡検査による問題を評価する初めての研究で明らかになったものである。NCIの研究者らは、2001年から2005年までの間に大腸内視鏡検査を受けた66歳から95歳までの53,220人のメディケア(高齢者の健康保険)記録を解析した。

「大腸癌検診はその疾患の予防にとても大切です。そして大腸内視鏡検査が、高齢になっても安全な大腸癌検診の手法であるかどうか、またリスクを増大させる可能性のある特定の健康状態があるのかどうか、知る必要があります」と試験責任者のDr.Joan Warren氏(NCI癌制御・人口学部門)は言う。「今までこれらの問題に対するデータは全くありませんでした。」

Annals of Internal Medicine誌に本日報告されているように、大腸内視鏡検査から30日以内に発生した重篤な消化管合併症のリスクは1000件中6.9件であった。ただし、85歳以上の人の重篤な消化管合併症のリスクは、66歳から69歳の人に比べて2倍以上であった。

この結果は米国予防サービス特別委員会が昨年10月に行った勧告と整合している、とWarren氏は指摘する。この委員会では、リスクに対して潜在的利益が小さいとして、85歳以上の高齢者の大腸癌の検診をしないよう助言している。同委員会の勧告はまた、76歳から85歳の人に対する定型的な(個々の事情をあまり考慮しない)検診に対しても否定的である。

今回の知見は、老齢あるいは、健康上の事情により平均余命が限られている人に対する検診目的の大腸内視鏡検査の使用について、現在進行中の議論に寄与するものとみられる。報告書は臨床医に対し、大腸内視鏡検査のリスクについて患者と話す場合に、この結果を踏まえることを促している。

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福田 素子、杉田 順吉 訳

鵜川 邦夫(消化器・内科医/鵜川病院) 監修

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