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2009/06/16号◆特集記事「稀な卵巣癌の関連遺伝子が見つかる」

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2009/06/16号◆特集記事「稀な卵巣癌の関連遺伝子が見つかる」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2009年06月16日号(Volume 6 / Number 12)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~

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特集記事

稀な卵巣癌の関連遺伝子が見つかる

顆粒膜細胞腫という稀な型の卵巣癌において通常起こっていると考えられる遺伝子変異をカナダの研究者が同定した。この変異は、顆粒膜細胞腫の女性患者4人から採取した腫瘍のRNAをシークエンス解析(遺伝子の塩基配列を決定)することにより発見された。顆粒膜細胞腫は卵巣癌全体の5%を占める。

この研究結果はNew England Journal of Medicine誌電子版の先週号に掲載されており、DNAが「1文字分」入れ替わるという変異により、顆粒膜細胞腫のうち主たる型である成人型を発症すると考えられると研究者は述べている。

このことについて2つの証拠が提示されている。第一に、腫瘍の発生源となる細胞が正常に成長するために不可欠な遺伝子(FOXL2)において変異が起こっていること、第二に、研究者らが調べた顆粒膜細胞腫のほぼ100%にこの変異が発見されたことである。

「本研究で、成人型の顆粒膜細胞腫はすべて同じ点変異を有することが実際に明らかとなりました」と、研究責任者でブリティッシュ・コロンビア癌研究所 (British Columbia Cancer Agency)のDr. David Huntsman氏は述べた。さらに同氏は、今回得られた知見は、診断ツールの改良と、遺伝子変異がもたらす影響に対抗する標的治療の確立の双方に役立つ可能性がある、と付け加えた。

顆粒膜細胞腫の標準的治療法としては、手術以上のものは存在しない。加えて、顆粒膜細胞腫は比較的稀な癌であり、他の癌に類似する場合もあることから誤診されることも多い。FOXL2遺伝子をベースとした分子テストが開発されれば現在の診断法より正確な診断が可能となり、患者の利益となる可能性がある、と研究者らは述べた。

Huntsman氏らはまず4検体の腫瘍におけるメッセンジャーRNA(DNA類似の化学物質)の全塩基配列を決定し、すべての検体でFOXL2が変異していることを発見した。さらに研究を進めたところ、顆粒膜細胞腫89検体のうち86検体で変異が存在していたのに対し、300検体を超える卵巣上皮性腫瘍および乳癌ではこの変異は存在しないことが示された。

今回の変異も予想外の発見であった。バイアスが生じない方法でゲノム解析を実施するとしばしばこのように予想外の変異が発見される。ヒトゲノムにおいて30億個もあるDNAのうち1個が腫瘍細胞では常に変化している―あるいは、そのような変異が顆粒膜細胞腫と生物学的に関連性のある遺伝子に起こるということは研究者も予想していなかった。

DNAではなくRNAに着目したことで、同じサンプルで全ゲノム配列決定に要するコストの何分の一かで、重大な意味を持つ可能性のある変異を発見したとして、付随の論説では本研究を賞賛している。

RNAのシークエンス解析は全ゲノムシークエンス解析に比べればコストダウンとなるが、得られる情報もまた少ない。今回の研究では、顆粒膜細胞腫は比較的均一な疾患であり、また安定した染色体を持つ疾患であることからRNAのシークエンス解析が功を奏し、RNAのゲノムワイドな分析を可能にしたと、研究者らは述べた。

対照的に、大半の癌では、どの変異が癌にとって重要であるかを決定するには、何百もの癌サンプルのシークエンス解析を行わなければならないくらい多種の遺伝子変異を有している。

今回発見されたFOXL2変異は、癌ゲノムのシークエンス解析のための強力な新技術を用いた初めての臨床的意義のある発見のひとつである、とHuntsman氏は話した。だが、今後もこのような変異が発見されることは確実で、FOXL2以上に重要な部分がおそらく存在する、と続けた。

「今回の事例は、シークエンス解析により癌細胞のしくみを明らかにすることで、癌やその他の疾患に対する考え方が完全に変わるという1つの例にすぎません」とHuntsman氏は付け加えた。

— Edward R. Winstead

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橋本 仁 訳

大藪 友利子(生物工学)監修

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