膵臓癌術後患者に化学療法と放射線の併用で生存期間が延長/ジョンズホプキンス大学 | 海外がん医療情報リファレンス

膵臓癌術後患者に化学療法と放射線の併用で生存期間が延長/ジョンズホプキンス大学

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膵臓癌術後患者に化学療法と放射線の併用で生存期間が延長/ジョンズホプキンス大学

膵臓癌患者の手術後に化学療法と放射線を併用することで生存期間が延長する
ジョンズホプキンス大学・キンメルがんセンター
2008年7月24日

膵臓癌では、手術後に化学療法と放射線治療の併用療法を受けた患者の方が、手術単独療法の患者より生存期間が約6ヵ月長いことをジョンズホプキンス大学キンメルがんセンターの研究者らが報告している。[pagebreak]1980年代~1990年代にかけて米国で実施されたこれまでの臨床試験により、術後の化学療法と放射線治療が有益であることが確かめられた。しかし、ヨーロッパでの臨床試験の結果が逆の結果、すなわち生存期間の短縮が示されたことから、この治療の実施の是非に関して専門家の間で未だ意見が分かれている。

「生存に寄与することがはっきりしない場合、化学療法および放射線治療を避ける医師もいます。しかし、しかし、確証が無いからといって、化学療法や放射線治療を無視することは患者に不利益をもたらすことになると思います」と試験を統括した放射線腫瘍医のJoseph Herman氏は語る。

Herman氏らはこの問題に決着をつけようと、1993年8月30日から2005年2月28日までに膵臓癌の外科的切除術を受けたジョンズホプキンス大学の患者616人の記録を詳細に検討した。試験担当者らは、手術単独療法を受けた患者345人の生存期間を、術後に5-フルオロウラシル(FU)をベースにした化学療法剤の投与および最新の放射線治療を受けた患者271人と比較した。

化学放射線併用療法を受けた患者の方が受けなかった患者よりも生存期間の中央値が改善した(21.2ヵ月vs. 14.4ヵ月)。2年生存率(43.9% vs. 31.9%)および5年生存率(20.1% vs. 15.4%)も改善した。試験成績は、Journal of Clinical Oncology誌7月20日号に発表された。

「化学放射線併用療法を受けた患者は、手術単独療法の患者よりずっと生存率が高く、慎重に適切な方法で行った場合の化学放射線併用療法の安全性や有益性が今回の試験で示されたということをぜひ覚えておいてください」と放射線腫瘍科およびMolecular Radiation Sciences学科の助教であるHerman氏は話す。

氏は、この試験が後ろ向き試験であることと、化学療法および放射線治療を受けるだけの体力のある患者が選ばれていた可能性があることから、選択バイアスが生じていたことも考えられると注意をうながしている。「とはいえ、患者の多くが、進行の早い癌を患いつつ、大勢がこの併用療法を受けて数年後の今も生存していることには励まされます」

Herman氏らは、治療毒性を評価するデータを入手できなかったため、代わりに生存期間に焦点を合わせた。氏によると、大多数の患者が治療を完了しており、治療は耐容性に優れたものであったことがわかるという。

試験では、化学放射線併用療法から効果が得られる可能性が最も高い患者を特定するリスク要因も明らかになった。はっきりと効果が認められたのは、リンパ節転移陽性患者および腫瘍の大きさが3cm(約1.2インチ)以上の患者であった。進行癌および外科医が病巣の大部分を切除できなかった切除断端陽性例にも有益であった。

腫瘍の大きさ、リンパ節転移の有無および切除断端の状態に群間差はみられなかったが、化学放射線併用療法を受けた患者の方が若く(中央値64歳vs. 70歳)、他の重篤な合併症を有していない場合が多かった。

「生存期間に対する効果は、ハイリスクの腫瘍特性を示していても、年齢、他の併発疾患および手術の合併症を考慮した後にも認められます」とHerman氏は語る。

試験では、同時療法と呼ばれる化学療法と放射線治療との併用療法が約5.5週間にわたって実施された。この治療は手術施行の4~8週間後に開始される。

ほとんどの患者が5-FU持続点滴による化学療法も受けた。これは、急速に分裂する癌細胞の基本要素であるDNAを損傷する放射線の効果を高めるかたちの化学療法である。患者は初期治療終了後4週間休み、その後は処方に従い、数週~数カ月にわたって維持化学療法を受けることもある。

アメリカでは毎年、10万人中約5人が膵臓癌に罹患する。多くの場合、膵臓癌の早期には症状がないことから、癌が進行し、体調が悪くなるまで気づかないことが多い。長期生存率に関する予後は不良で、膵臓癌患者の診断後の5年生存率はわずか5%にとどまっている。

膵臓癌の最も積極的で有効な治療方法は、ウィップル手術として広く知られている複雑な術式(この試験にも用いられた)で、一般に胆嚢、総胆管、十二指腸の一部および膵頭部を摘出する。ジョンズホプキンス大学病院では過去25年以上にわたり、3,000件を超えるウィップル法による手術を手がけてきた。

この試験はジョンズホプキンス大学の放射線腫瘍科およびMolecular Radiation Sciences学科から資金援助を受けた。

Michael Swartz, Charles Hsu, Jordan Winter, Timothy Pawlik, Elizabeth Sugar, Ray Robinson, Daniel Laheru, Elizabeth Jaffee, Ralph Hruban, Kurtis Campbell, Christopher Wolfgang, Fariba Asrari, Ross Donehower, Manuel Hidalgo, Luis Diaz, Charles Yeo, John Cameron, Richard Schulick and Ross Abrams, also from Johns Hopkins, assisted with this study.

原文はこちら

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片岡 訳
平 栄 (放射線腫瘍科)監修

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