2009/06/30号◆癌研究ハイライト | 海外がん医療情報リファレンス

2009/06/30号◆癌研究ハイライト

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2009/06/30号◆癌研究ハイライト

同号原文

NCI Cancer Bulletin2009年06月30日号(Volume 6 / Number 13)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~

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癌研究ハイライト

・小児白血病に対する放射線治療不要論
・ホジキンリンパ腫サバイバーにおける脳卒中リスクの増加
・神経芽細胞腫に関与するもうひとつの遺伝子変化:DNAの減少
・幹細胞様の特性を有する免疫細胞がマウスの腫瘍を破壊する

小児白血病に対する放射線治療不要論

最も多いタイプの白血病の小児において、患者個人のニーズに合わせて処方された化学療法レジメンを受けた場合、再発予防のための放射線療法を見送ることができる。これは、急性リンパ性白血病(ALL)患者498人を対象とした臨床試験のエビデンスによるものであり、患者の約94%が治療5年後も生存したという同試験の結果は、その他のALL治療関連試験に比べて良好なものである。

今回、この試験で採用された治療戦略および治療は、その他の医療センターでも適用可能であることが、メンフィスにある聖ジュード小児研究病院の研究者らによって示され、その結果はNew England Journal of Medicine誌6月25日号に発表された。

1960年代以降、脳への癌再発の予防として全脳照射が用いられてきた。聖ジュード病院の研究者が初めて導入したもので、それが突破口となって、癌における生存率が約50%まで改善した。化学療法が改善され続けているおかげで、今日では、ALLの小児の90%が治癒している。

しかし、癌サバイバーが増え、放射線照射による二次癌および認知障害のエビデンスが明らかになるに伴い、多くの治療センターでは再発リスクのある患者への実施を制限している。本試験では、Dr. Ching-Hon Pui氏らが各患者にあわせた化学療法レジメンを処方し、薬物送達には最新技術を用いてその有効性を観察した。数週間後、残存腫瘍細胞が判明した場合は投薬調整が行われた。

ALL患者に関する歴史的データとの比較およびその他に基づいて、研究者らは、個別の化学療法レジメンは、全脳照射を含む治療法よりも好ましいと結論づけ、再発リスクの程度によっては患者に放射線療法を施行しないことも推奨している。「この試験でこれらの患者が放射線療法を受けていたとしたら、患者の90%が不要な放射線療法を受けることになっていた」と、研究者らは説明した。

「1960年代のALLに対する放射線療法導入により、ALLに関する議論に「治癒」という言葉が出るようになった」と、共著者である聖ジュード病院院長Dr. William Evans氏は述べた。「本試験の重要性は、われわれが今、治療から放射線療法を除こうとしている点である。それが可能になったのは、われわれが化学療法の使用法をより洗練させ、向上させたことによる」

ホジキンリンパ腫サバイバーにおける脳卒中リスクの増加

Journal of the National Cancer Institute誌7月1日号の報告によると、ホジキンリンパ腫に対して放射線療法を受けた患者は、脳卒中またはのちに「ミニ脳卒中」とも呼ばれる一過性虚血性発作(TIA)のリスクが増加する可能性がある。このリスクは主に頚部および胸部への照射と関連があり、治療後数年間は、高リスクにとどまる。

オランダ癌研究所のDr. Flora E. van Leeuwen氏が主導する研究者らは、1965~1995年までの間に50歳以下でホジキンリンパ腫の治療を受けた癌サバイバー2,201人の追跡調査を行った。追跡期間の中央値は約18年間で、96人のサバイバーが脳卒中またはTIAを発症した。癌サバイバーにおける脳卒中の発症率は一般集団の2.2倍、TIAの発症率は3.1倍であった。

全般的に、これらの事象は比較的若年で発症していた(年齢の中央値は52歳、範囲は24~80歳)。特に脳卒中およびTIAのリスクが高いホジキンリンパ腫の若年癌サバイバーについて、医師はリスクを低減する戦略(高血圧の治療およびライフスタイルの変更など)について検討すべきであると、研究者らは述べる。

米国国立加齢研究所のDr. Dan Longo氏による付随論説によると、この知見は、ホジキンリンパ腫に対して放射線療法を用いることが「近視眼的」であるというこれまでの多くのエビデンスをさらに支持するものである。1995年以降、本症に対する治療において放射線投与線量を低減しても、癌サバイバーの晩期障害が少なくなるという証拠は依然として認められない。

「残念ながら、放射線療法の使用により、生涯にわたって晩期障害リスクが高くなるとすれば、安全性を示すデータが得られるまでは、明確な利益が認められないのに患者をリスクにさらし続けることはできない」と、Longo氏は付け加えた。

神経芽細胞腫に関与するもうひとつの遺伝子変化:DNAの減少

小児においてもっとも多く発症する癌である神経芽細胞腫に関わる共通の遺伝子変化が一連のゲノム試験により、初めて明らかになった。本研究に基づいて、これらの調査対象はさらにDNAの増加や減少などの構造変化にまで発展してきている。Nature誌6月18日号で発表されたこの研究により、神経芽細胞腫の一部の小児には第1染色体の領域が欠けており、それが本疾患の一因である可能性が明らかとなった。

コピー数の変化(CNV)として知られるDNAの増加や減少は、自閉症や統合失調症などの疾患と関連づけられていたが、今回の試験では、癌の発生要因として果たす役割が初めて示された。フィラデルフィア小児病院のDr. John Maris氏らは、神経芽細胞腫の小児および非神経芽細胞腫の小児1,600人のDNAをスクリーニングすることでこれを発見した。異なる2群で、第1染色体上のDNAが欠けていることが確認され、細胞を用いた実験を行ったところ、それが神経芽細胞腫に対して果たす役割についてさらに証拠が得られた。

神経芽細胞腫は、小児において交感神経系から発生する細胞に発症する。第1染色体の不安定領域は、中枢神経系の発達に関わる遺伝子ファミリーの近傍に存在する。細胞を用いた実験では、この領域内にあって、以前はわからなかったこの遺伝子ファミリーの活性をCNVが変化させることを確認した。CNVだけでは神経細胞腫を引き起こすには不十分である、と研究者らは指摘している。

事実、現在では確認済みのCNVを含め、多様な遺伝子変化が本疾患に寄与している。これまでの研究(NCIブレティン2008年5月13日号参照9月9日号参照)で、小児腫瘍グループのMaris氏らは、2種類の遺伝子変化―突然変異および一塩基多型(SNP)(DNAが1文字だけ人によって異なるゲノムの状態)が関係しているとした。

「CNVが癌に対し何らかの役割を果たす可能性があると広く考えられているが、エビデンスに欠けている。われわれの研究の成果が、癌におけるCNVおよびSNPを対象とするゲノムワイド関連研究を拡張する重要性を示すエビデンスとなることを希望している」と、この新たな研究の筆頭著者であるフィラデルフィア小児病院のDr. Sharon Diskin氏は述べている。

幹細胞様の特性を有する免疫細胞がマウスの腫瘍を破壊する

NCI癌研究センターの研究者らにより、Wnt-β-カテニン経路と呼ばれる細胞シグナル伝達ネットワークが、癌に対する免疫療法を強化させる種類の免疫細胞の発生を促すことを実証した。免疫療法とは、身体の免疫系を利用して癌細胞を攻撃するものである。

電子版Nature Medicine誌6月14日号で発表された論文のなかで、研究者らは、白血球の一種であるT細胞をWnt経路の成分に似た薬剤と一緒に培養したとき、T細胞が幹細胞様の特性を獲得したことを確認した。T細胞は自己再生が可能であるとともに、癌細胞を認識し、攻撃する成熟T細胞に分化する娘細胞を産生することも可能であった。

マウスを用いて、CD8+の記憶幹細胞と呼ばれるこれらの細胞について、大きな黒色腫の腫瘍(約10億個の悪性細胞を含む)に対する治療法として実験を行った。比較的少数(約4万個)のT細胞と腫瘍ワクチンおよび免疫系刺激剤であるインターロイキン2を併用投与することにより、大きな腫瘍は破壊され、生存率を改善することができた。移植された記憶幹細胞は、マウスにおいて調べられたその他の種類のT細胞より10~30倍多かった。

「この新しいリンパ球のカテゴリーは、早期の実験で使用されたT細胞より優れている。なぜなら、自己再生、増殖、分化、および最終目的である腫瘍細胞を死滅させる能力が高いからである」と、筆頭著者であるDr. Nicholas Restifo氏は談話で述べた。

養子免疫療法(体外で増殖させた抗腫瘍T細胞の再注入)は、転移性疾患を有する患者を完全寛解させる数少ない新しい治療法として有望であることがすでに示されている。この方法は、これまで、実験室で作製し、増殖させた腫瘍特異性のT細胞を大量に移植することが必要な、時間とコストのかかるプロセスであった。しかし、癌患者に対し、より少数の「幹細胞様」T細胞を使用することで、この治療法の利用を拡大することができる。ヒトにおいてCD8+記憶幹細胞から有望な結果が得られることを確認するには、さらに試験が必要である」と、Restifo氏は結論している。

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北本 明子 訳

中村 光宏(医学放射線)、関屋 昇(薬学) 監修

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