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2010/06/15号◆クローズアップ「生物学的見知から従来の化学療法剤をみる」

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2010/06/15号◆クローズアップ「生物学的見知から従来の化学療法剤をみる」

同号原文
NCI Cancer Bulletin2010年6月15日号(Volume 7 / Number 12)


日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中〜

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◇◆◇ クローズアップ ◇◆◇
生物学的見知から従来の化学療法剤をみる

予測バイオマーカー(薬剤の有効性を予測する腫瘍の生物学的特徴)の特定は、今や少なからず先進的抗癌剤開発の一部となっている。これは、大部分の新薬が、たとえば乳癌におけるHR2の過剰発現メラノーマにおけるBRAFの変異のような特有の分子的性質—事実上のバイオマーカーを持つ腫瘍を標的に開発されるからである。

しかし癌の遺伝的な基礎知識が蓄積されるにつれ、いくつかの従来の化学療法剤の有効性も腫瘍の遺伝子構造に依存していることが明らかになってきた。従来の薬剤から実際に利益を得られる患者の予測に有用なバイオマーカーを特定することは、治療効果の得られない患者を薬剤の毒性から守り治療計画を向上させるであろう。

予測バイオマーカーの理想的な試験法はランダム化試験であり、この種の試験では対象の薬剤を投与される患者とされない患者がおり、また事前に候補の予測バイオマーカーが評価され確定している。このような試験により研究者は、そのバイオマーカーの有無により治療の有効性に差があるかどうか知ることができる。しかし、「薬剤がすでに広範囲に使用されている場合、その薬の使用を保留して、最初からランダム化試験を行うことは大変困難です」、とNCI癌治療・診断部門(DCTD)生物測定学研究支部長のDr. Richard Simon氏は述べた。

過去の臨床試験を前向きに見る

承認薬を保留してランダム化試験を実施するという無理難題を回避し、特定のバイオマーカーが抗癌剤の有効性を予測できるかどうか探究するために、研究者は「前向き・後ろ向き」解析と呼ばれる種類の研究手法に活路を見出した。この研究では、前向き・後ろ向き解析を行う前に別の実験に基づき選択された特定のバイオマーカーについて、過去のランダム化試験の参加者から採取された保存生体標本を分析する。

「重要なことは、前向き・後ろ向き研究は、事前に仮説を立てずに、標本間のバイオマーカーの違いを比較するような『情報漁り』になってはいけないこと」とSimon氏は説明する。氏は最近共同研究者のDr.Soonmyung Paik氏とDr. Daniel Hayes氏と共に、この問題について提言を発表した。このような研究は時として再現できない疑陽性に陥る。「的を絞った解析をしなければいけません」とSimon氏は述べた。

最近、巧みに設計された前向き・後ろ向き研究によって、KRASと呼ばれる遺伝子に変異がある大腸癌患者には、EGFR遺伝子から産生されるタンパク質を標的にするセツキシマブ(エルビタックス)やパニツムマブ(ベクチビックス)が有用でないことが示された

この類の研究手法は従来の化学療法剤を詳細に調べるためにも使われている。先月、メイヨークリニックの生物統計学・腫瘍学教授Dr. Daniel Sargent氏らはフルオロウラシル(5-FU)に反応する潜在的予測バイオマーカーに関する研究結果を発表した。フルオロウラシルは、何十年もの間、大腸癌の化学療法の中心的役割を果たしてきた薬剤である。

彼らの研究グループは過去に前向き・後ろ向き解析を使用して、DNA ミスマッチ修復機構欠損(dMMR)をもつステージIIとステージIIIの大腸癌の患者では5-FUによる治療が無効である証拠を見出した。研究者らはすでに、dMMRをもつ患者はミスマッチ修復機構が正常な同ステージの患者よりも予後がよいことに気づいていた。

「われわれは、手術後それ以上の治療が無効な大腸癌患者集団を特定する上で大変重要と思われる非臨床データに裏づけられた知見を持っていました」とSargent氏は述べた。「5-FUベースの化学療法は、再発リスクの高い患者への手術後の標準オプションですので、しっかりとした提案を行うために、できるだけ多くの最高品質の証拠を得る必要性を感じていました」。

リスクの分子的定義に向けて

研究者らは、ステージIIまたはステージIII大腸癌の患者を対象として手術後の5-FU+レバミソールロイコボリンの化学療法を手術のみと比較した5件の第3 相臨床試験で保管されていた生体標本を、国際的な協力を得て入手した。ミスマッチ修復の状態を457人で判別でき、うち70人がdMMRをもっていた。

以前の研究と同様、全体として5-FUベースの治療は、dMMRを持つ患者の再発予防に有用ではなかったが、正常なDNA修復機構を持つ患者では確かに利益があることが明らかになった。

この知見は、今回と以前の解析データを統合してステージIIとステージIIIの患者を別々に検討した場合でも成立する。

「FOLFOX療法など現在のステージIII大腸癌の治療法にオキサリプラチンが含まれているという事実から、この結果をステージIIIの患者に臨床応用することはやや複雑です」とSargent氏は説明し、「5-FUにオキサリプラチンを追加することにより、ミスマッチ修復機構欠損をもつ患者が5-FUに対する抵抗性を克服するのかもしれません」と述べた。

しかしオキサリプラチンの有益性が示されていないステージIIの患者の場合、ミスマッチ修復機構欠損をもつ患者の予後が通常良好であることを考慮すると、「dMMR腫瘍の患者で5-FUベースの化学療法が有用でないということは、これらの患者が5-FUベースの補助化学療法を受けるべきではないことを示している」と著者らは結論づけた。

「予後に対するdMMR の重要性は、別の2 つの大規模な研究において十分示されている。ステージIのdMMRをもつ患者に明白に治療効果がないという今回の観察結果と合わせると、Sargent氏らの意見に賛同するのは妥当で、この予後良好群では化学療法の絶対的利益がほとんどないことから、補助化学療法を考慮対象外にすべきであることを示唆する」とオックスフォード大学のDr. David Kerr 氏とDr. Rachel Midgley氏は付随の論説で述べた。

「当面dMMRは、患者と医師がステージII大腸癌の補助化学療法を始めるかどうか決定するときに考慮する多くの因子の1つになるでしょう」とDCTDの消化器・神経内分泌治療学主任のDr. Jack Welch氏は述べた。「生物学的なリスク因子の評価と、インフォームド・コンセントに基づく患者による意思決定が、ともに今日のステージII大腸癌治療において重要な位置を占めます」と続け、「ゆくゆくはステージII大腸癌のリスクが完全に分子的に定義され、5-FU以外にも許容範囲内の毒性の医薬品ができ、明確に定義された集団に対して比較的低リスクで相応の治療効果をもたらすのではないかと思います」と結んだ。

—Sharon Reynolds

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杉田 順吉 訳
金田 澄子 (薬学)監修

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