2009/07/14号◆癌研究ハイライト | 海外がん医療情報リファレンス

2009/07/14号◆癌研究ハイライト

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2009/07/14号◆癌研究ハイライト

同号原文

NCI Cancer Bulletin2009年07月14日号(Volume 6 / Number 14)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~

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癌研究ハイライト

・ホルモン補充療法による卵巣癌リスクが確認される
・第二の子宮頸癌ワクチンは別型のヒトパピローマウィルス(HPV)を予防
・脳腫瘍リスクへ手がかりを提供するゲノムスキャン
・タンパク質発見法を改善する研究
・特定の癌における死亡率はアフリカ系アメリカ人で依然として高い
・メイヨークリニックによる癌臨床試験プロトコル開発過程の合理化

ホルモン補充療法による卵巣癌リスクが確認される

デンマークで実施された約91万人の女性に関する全国調査によると、ホルモン補充療法を受けている女性患者は、ホルモン補充療法を受けていない女性に比べて卵巣癌を発症するリスクが高い。これまでの研究結果を追認し、さらなる知見が得られた今回の試験は、閉経後の諸症状の治療にホルモン補充療法の適用を考える際、卵巣癌のリスクを考慮すべきであると示唆している。

コペンハーゲン大学のLina Steinrud Mørch氏らは全国登録の詳細情報を用いて、ホルモン補充療法の実施歴のある、または実施中の女性は未実施の女性と比べて、卵巣癌のリスクが増加したことを認めた。患者のリスクはホルモンの種類、使用期間、投与法に関係なかった。今回の知見によるとホルモン補充療法を実施した女性では毎年約8,300人に1人が未実施の女性より多く卵巣癌を新たに発症することになると米国医学会誌7月15日号で報告されている。

女性の健康イニシアチブ(WHI)が2002年に、併用ホルモン療法(エストロゲン+プロゲスチン)は乳癌のリスク増加と関連していると報告して以来、エストロゲン単独療法を卵巣癌リスクと関連付けた研究が数件あり、併用療法によるリスク増加も示唆されていたが、これらも今回の試験で確認されたといえる。

「併用療法では、実質的にエストロゲン単独療法と同程度のリスク増加であった」とフレッド・ハッチンソン癌研究センター、卵巣癌研究者のDr. Garnet Anderson氏は述べ、今回の結果によって患者に対して最短期間に最少量の服用を推奨する現行のホルモン補充療法ガイドラインが変わることはないであろうと付け加えた。

研究期間中にデンマークでは、約140症例、卵巣癌全体の5%がホルモン療法により発症した可能性がある。「この割合はわずかに思えるかもしれないが、卵巣癌は致死率が高いので、このリスクはホルモン補充療法を実施するかどうかの判断理由の1つとなる」と著者らは結論している。

第二の子宮頸癌ワクチンは別型のヒトパピローマウィルス(HPV)を予防

グラクソ・スミスクラインバイオロジカル社が資金提供した大規模国際臨床試験において、サーバリックス〔Cervarix〕ワクチンはヒトパピローマウイルス(HPV)の16型および18型の感染にきわめて有効であることが判明した。若年成人の癌を対象としたパピローマ臨床試験(PATRICIA)の最終結果はLancet誌7月8日号で発表された。

ヘルシンキ大学 (フィンランド)のDr. Jorma Paavonen氏らは、PATRICIA試験において15~25歳までの女性でワクチンを接種した18,644人(17,106人が全3回の接種を受けた)を、中央値34.9カ月の間追跡調査を行った。患者の約半数は盲検化された対照群に割り付けられ、HPV感染に対し予防効果を高めないA型肝炎ワクチンを投与された。

サーバリックスワクチンは、全3回の接種を完了した試験参加者の約93%でグレード2の頸部上皮内腫瘍(CIN2+)として知られる前癌病変のリスクを減少させた。またこのワクチンはHPVの31型、33型、45型に対する交差予防で上記ほどではないがかなりの効果を挙げた。この付加的予防効果により、HPVワクチン接種の潜在的効果を約70%から81~86%まで上げることができた。

当試験で、約62%の女性は、子宮頸癌に関与する14種類あるHPVのいずれの型にも感染しなかった。この群は「一般的なHPVワクチンの集団接種の対象となる集団に最も近い存在である」と性的活動前の若年女性を指して著者は述べている。CIN2+がこれらの感染しなかった5,449人の参加者のうち1人のみで認められた。

HPVワクチン接種者および未接種者に対して、HPV試験を継続することが大切であるが、「HPVワクチン接種は子宮頸癌および前癌病変の発生率をかなり減少させる可能性がある」と著者らは結論づけている。

サーバリックスは90カ国で認可され、先週、世界保健機構(WHO)によって承認された。WHOは国連機関と共同出資者に開発途上国でのワクチンの使用を許可している。当ワクチンは、現在FDAによって審査中であり、承認が待たれている。

脳腫瘍リスクへ手がかりを提供するゲノムスキャン

一般的な遺伝子変異は人の脳腫瘍発症リスクを増大する可能性があるが、これらの潜在的リスク因子を特定することが現在は可能となった。2件の全ゲノム関連研究において、研究者らはその疾患に関連した少数の遺伝性遺伝子変異を発見し証明した。脳腫瘍の原因はよく理解されておらず、電子版Nature Genetics誌7月5日号で発表されたその知見は脳腫瘍リスクの遺伝的要因を調査する手がかりを与えた。

一つの研究において、テキサス大学M.D.アンダーソンがんセンターおよび英国癌研究所の研究者らは最も一般的な脳腫瘍である神経膠腫患者1,900人と正常な数千人のDNAを詳しく調べ5つの遺伝子を候補にあげた。そのうち一つは、腫瘍抑制遺伝子p53を活性化する役割を果たすCDKN2Aであった。その他の一つであるTERTは腫瘍内での活性が知られている。

カリフォルニア大学サンフランシスコ校Dr. Margaret Wrensch氏らの研究によっても、この5遺伝子中4遺伝子が認められた。さらに、CDKN2AとCDKN2Bの2つの遺伝子は黒色腫、基底細胞癌、および非黒色腫皮膚癌の1種においてリスクに関与していた。このエビデンスもNature Genetics誌で発表された別の研究に掲載された。

共著者であるM.D.アンダーソンのDr. Melissa Bondy氏は「脳腫瘍の発症に疑われるいくつかの遺伝子はその他の癌とも交錯しており、癌にはいくつか共通のリスク遺伝子があるのかもしれない」とし、新たな始まりを表す結果であるとしたうえで次のように述べている。「脳腫瘍は難しい腫瘍である。しかしようやく、われわれは長年取り組んできた難問を解くための技術を得たのである。」

タンパク質発見法を改善する研究

腫瘍マーカーとなりうるタンパク質を発見するために質量分析を行う際、正確性と再現性を妨げるいくつかの共通する問題が新しい研究によって特定された。これらの分析を行う研究施所に対してフィードバックと訓練を行えばこれらの問題は克服できると、本研究の著者は確信している。この研究は2009年6月号のNature Methods誌で発表された。

本研究は国際ヒトプロテオーム機構(HUPO)によって行われた。研究に参加した27の研究所はそれぞれ単独で、テストサンプルから特定のほぼ等質量のペプチド(アミノ酸の配列であり、これらが結合してタンパク質となる)を少なくとも1つ含む20個のヒトタンパク質を同定するように求められた。各研究所は通常行っている方法で質量分析に基づいてサンプルの分析を行い、結果と生データをHUPOでの中央分析のために報告した。

7つの研究所だけが20個のタンパク質すべてを正確に同定し、すべてのペプチドを同定できたのは1つの研究所のみであった。しかし、各研究所から提出された生データをこの研究の統括者が再分析したところ、「わずかな例外を除いて各研究所のメンバーは、すべてのタンパク質とほとんどのペプチドを同定するのに十分な質の高い質量分析データを実際には得ていた」と、本研究の著者は述べている。ペプチドとそれぞれのタンパク質を対応させるために、タンパク質データベースを探索する際の不一致やテストサンプルの汚染など、参加したほとんどの研究所で共通するいくつかの問題がタンパク質の誤同定に結びついたと、研究者たちは述べている。

データベースの問題は別として、各研究所が直面した多くの問題は「早期に発見され、原因解明し得た」と、この主任研究者であるDr. John Bergeron氏は説明している。実際、中央分析によって見つかった問題点を参加研究所にフィードバックすることで、すべての研究所が20個のタンパク質を正しく同定することができた。

HUPOのこの研究は、「実験に対する十分な配慮と技術訓練がなされれば、現在利用できる質量分析に基づいた方法」は正確な結果を導き得ることを示していること、また、比較やメタアナリシスのためにアクセス可能なデータをタンパク質研究から構築したり、ソフトウェアツールの最適化やテストを行うことの強力な論拠となると、スイスのチューリッヒ大学の分子システム生物学研究所の所長であるDr. Ruedi Aebersold氏は同号掲載の論説で述べている。

特定の癌における死亡率はアフリカ系アメリカ人で依然として高い

7月7日号のJournal of the National Cancer Institute誌の記事において、過去15年間におけるアメリカでの乳癌の死亡率は大きく低下しているが、アフリカ系アメリカ人女性においてはそれほど低下していない、と述べられている。

米国国立癌研究所(NCI)癌疫学・遺伝学部門(DCEG)のDr. Idan Menashe氏らはSEERのデータを用いて、1990年1月から2003年12月の期間中に乳癌と診断された約25万人における死亡率、罹患率、死亡危険率、罹患率に対する死亡率を計算した。乳癌と診断されたアフリカ系アメリカ人の死亡危険率は白人と比較して、とくに診断されてから最初の数年間で、有意に高いことが明らかになった。アメリカにおける黒人―白人間の乳癌死亡率差の拡大は、診断時の乳癌のエストロゲン受容体(ER)の発現に関わらず黒人の乳癌死亡危険率が一貫して高いことによるところが大きいと、それらの結果は示唆している。

新しい乳癌治療に対する反応性や治療の受けやすさ(治療へのアクセス)などを含む様々な生物学的・非生物学的要因が、各ER区分での黒人―白人間の異なる危険率の原因となり得たと、著者らは指摘している。「したがって、黒人女性のとくに診断後数年における高い死亡危険率をもたらす原因を特定し、この差に対処する新しい治療アプローチの開発がより重視されるべきである」と著者らは述べている。

JNCIのもうひとつの研究で、ロヨラ大学医療センターのDr. Kathy Albain氏らは、Southwest Oncology Group臨床試験団体によって行われた第3相臨床試験に参加した19,000人以上の患者の記録を分析した。この分析によると、アフリカ系アメリカ人患者は、乳癌、前立腺癌、卵巣癌では他の患者と同じ治療を受けても全生存率はより低かったが、頻度の高い他のすべての癌では治療後の全生存率に差はなかった。

これら2つの記事により、「癌の罹患率と死亡率の人種間差」が注目され、取り組むべき問題点がより明確にされたと、アメリカ癌協会(ACS)の主任医官であるDr. Otis Brawley氏は同号論説で述べている。「問題点を明確に定義することによってはじめて、われわれはこの人種間差に対処し、解決に向けて介入することができる。」

メイヨークリニックによる癌臨床試験プロトコル開発過程の合理化

メイヨークリニックがんセンターは、臨床試験プロトコルの開発過程を合理化することにより、プロトコルの素案が出来てから組織の審査委員会(IRB)による認証のための資料提出までの期間を約40%短縮した。この取り組みの結果は6月29日号のJournal of Clinical Oncology誌で報告されている。

有効化するまでに時間がかかった癌の臨床試験は、登録者募集がうまくいかないことが示されている。そのような失敗が、有益な新しい癌治療を患者が利用できるまでの期間を長引かせているかもしれない。

メイヨークリニックの研究者やプロトコル開発スタッフは、産業界で開発されて広く使われている改善方法であるSix Sigmaという方法を用いて、プロトコル開発のどの段階で時間を要し、どのようなプロセス変更が遅れを改善し得るかを分析した。臨床試験プロトコル完成までにかかった合計199日のうち、174日は「価値がない」、つまり次のプロセスへ進むまでの待機日(例えば見直し、質問への回答待ち、書類のサイン)であることが明らかになった。

標準的な手順をすべての臨床試験プロセスに導入し、同時にできる工程はひとつずつ順番に行わないようにするなどの過程変更を行うことで、このがんセンターは「転換までの時間」(つまり、開始からIRB提出までの時間)を、同施設内で作られるプロトコルの場合は25週から10週に、外部から持ち込まれるプロトコルの場合は20.6週から7.8週に短縮した。

この実験は、「プロトコル開発期間(転換までの時間)は、集中的なプロセス設計によって大幅に短縮されうる」ことを示していると、メイヨークリニックがんセンター研究部のTerre A. McJoynt氏を筆頭とする著者らは述べている。「そのような改善は、すぐにでも可能で、また管理体制への増資はほとんど必要としない。」

このグループは現在、研究構想から被験者登録までの全プロトコル開発期間に焦点をあてて、改善努力の第二段階に取り組んでいる。

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福田 素子、野長瀬 祥兼 訳

後藤 悌(呼吸器内科医/東京大学大学院)
林 正樹(血液・腫瘍医/敬愛会中頭病院) 監修

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