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免疫機構のモニタリングを可能にする新しいPETスキャン用プローブの開発/ジョンソンがんセンター

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免疫機構のモニタリングを可能にする新しいPETスキャン用プローブの開発/ジョンソンがんセンター

免疫機構のモニタリングを可能にする新しいPETスキャン用プローブの開発
ジョンソンがんセンター
2008年6月8日

UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)のジョンソンがんセンターの研究者らは、一般的な化学療法薬を改良して陽電子放射断層撮影法(PET)用の新しいプローブ[color=0000CC](*監修者注:生体機能の解明・探索を可能とする、あるいは特定の分子を認識することができる分子の総称)[/color]を開発した。これにより、活性化した免疫機構のモデル化および測定、また新治療法への反応をモニタリングできるようになる。[pagebreak]


この知見は2008年6月8日付けのNature Medicine誌オンライン早版で発表されたもので、これにより、免疫機構が癌と戦ったり自己免疫疾患などの異常な状態に陥ったりしている状況を、3Dで体全体をモニタリングすることが可能となる。

今回作成したのはFACという小分子で、標準的な化学療法薬のひとつであるゲムシタビンの分子構造を少し変化させたものである。FACに放射性ラベル物質を付加し、プローブを取り込んだ細胞をPETスキャン下で描出できるようにした。

このプローブは、DNAサルベージ経路と呼ばれる細胞の基礎的な生化学的経路であり、DNAの複製および修復にかかわる一種のリサイクル機序に依存している。程度は異なるが、すべての細胞がこの生化学的経路を利用している。免疫応答の開始に関わる免疫細胞であるリンパ球とマクロファージでは、この経路が非常に高いレベルで活性化される。このため、これらの細胞にはFACが高レベルに集積します、とUCLAのジョンソンがんセンタージョンソンがんセンターおよびハワード・ヒューズ医療研究所所属の研究者で本研究の主著者であるDr. Owen Witte氏は話している。

UCLAのEli and Edythe Broad Center of Regenerative Medicine and Stem Cell Researchの主任でもあるWitte氏は、「特効薬や新治療法というわけではありませんが、より効果的に免疫システムをモデル化し、測定する助けとなります」と話している。「分子イメージングによって免疫機能をモニタリングすることにより、特定の治療法による効果の有無を評価することのほか、免疫疾患の診断および治療評価にも大きな影響をもたらすでしょう」

プローブは陽電子放射粒子により分子を識別可能にするため、この粒子を取り込んだ細胞はPETスキャン下で蛍光する。PETスキャンは分子カメラのような機能を果たす装置で、生体内の生物学的プロセスを視覚化することができる。本研究は動物モデルによりなされたものであり、今後の研究でさらなる評価が行われる。最終的には、FACおよびその他のプローブにより免疫機構のモニタリングが可能になることが期待されている、とWitte氏は話している。

「この方法は侵襲性の低い検査法です―プローブの注入だけで済みます」とWitte氏は言う。「免疫応答のモニタリングのため1週間で繰り返しスキャンを実施することも可能です」

従来の方法では、治療効果を判定するために何週間あるいは何カ月と待たねばならなかった。治療前および治療中にCTやMRIスキャンを撮り、腫瘍が縮小していれば治療効果があるなど、腫瘍の大きさを測定することで治療への反応を確認するためだ。この方法では治療に反応しない患者にとって、有害な可能性のある治療法を必要以上に受けさせられたということになる。新しいPETのプローブにより免疫応答および治療への反応をもっと早く1~2週間という単位でモニタリングできれば、患者が効果のない治療を受けずに済むだろう。

癌研究者の多くにとってもどかしい問題の1つに、腫瘍を攻撃する、場合によっては腫瘍の増殖を刺激する際の免疫応答の役割を解明することがあります、とカリフォルニア大学サンフランシスコ校の分子腫瘍学教授Dr. Kevin Shannon氏は言う。

「UCLAの研究者が開発したような強力なプローブによって、癌における免疫応答の役割、現在の治療法が免疫細胞に与える影響などがさらに解明され、腫瘍ワクチンなどの新治療法に対する反応を定量的に測定することも可能となるでしょう」とShannon氏は話す。「この種のプローブにより臨床腫瘍医は腫瘍が各種薬剤に反応するか迅速に識別できるようになると考えられ、より患者特有の治療が可能となるでしょう」

Witte氏によれば、今回のプローブ開発に結びついた多分野にわたる研究は、UCLA内の協力の強みを活かした結果であるという。ジョンソンがんセンター、Broad stem cell centerおよびCrump Institute for Molecular Imagingが本研究に参加した。PETスキャナーはUCLAのMichael Phelps氏により開発されたもので、同氏も本研究の共著者である。

Witte氏らの研究は現在PETスキャニングで使用されているプローブの一覧表に新しい項目を加えたい、現在使われているプローブとは異なる分子機能をモニタリングする新しいプローブを開発したいという願いで実現したものだ。

分子薬理学・薬理学准教授でジョンソン総合がんセンターの研究者、かつ本研究の主著者であるCaius Radu氏は、「生体内部を観察し、免疫機構に関する情報をできるだけ集めるための新しい方法を開発したいと思っていました」と話す。「体内のある部位から別の部位まで細胞がどのように動いていくのかを解明し、腫瘍の行方をたどる方法を発見したいと思っています」

これまでの研究でもWitte氏をはじめUCLAの研究者らは、癌を認識し反応している免疫機構を追跡することはできた。しかしこれらの研究では、特定のデザインを施したPET用プローブを内包させて「レポーター」遺伝子により免疫細胞を改造し、モニタリングが可能となるようにしなければならなかった。新しいプローブでは細胞改造の必要はなく、より簡便かつ安価に使用でき、従来のプローブより広く応用することが可能である。免疫機構のモデル化および測定に加え、異なる種の癌および治療に対する反応の層別化、正常または病的な状態における免疫応答のレベルの解明、新薬が癌などの病気に対する免疫応答を刺激するかどうかの判断などの応用がある。

「免疫機構について、従来のプローブではわからなかったことがこのプローブにより明らかとなるでしょう」とCrump Institute for Molecular ImagingのメンバーでもあるRadu氏は話している。

UCLAのジョンソン総合がんセンターは、研究者および疾病研究、予防、発見、コントロール、治療、教育に関わる医師ら計235人で構成されている。米国内で最大級の総合がんセンターのひとつであるジョンソン総合がんセンターは、研究を推進し、基礎科学を最先端臨床研究に活かすことが使命である。2007年7月には、U.S. News & World Report誌においてジョンソンがんセンターはカリフォルニア州で最高のがんセンターとランキングされ、8年連続の1位となった。ジョンソンがんセンターについて詳細は[url=http://www.cancer.ucla.edu]ウェブサイト[/url]へ。

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橋本 仁 訳
中村 光宏(医学放射線)監修

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