放射線治療と化学療法で死滅しない固形腫瘍細胞は、治療前より強くなる/デューク大学 | 海外がん医療情報リファレンス

放射線治療と化学療法で死滅しない固形腫瘍細胞は、治療前より強くなる/デューク大学

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放射線治療と化学療法で死滅しない固形腫瘍細胞は、治療前より強くなる/デューク大学

放射線治療と化学療法で死滅しない固形腫瘍細胞は、治療前より強くなる
デューク大学医療センター
2008年6月9日

ノースカロライナ州ダラム -固形腫瘍は、多くの酸素を取り込むように身体の仕組みを適合させてしまうことから、化学療法や放射線療法を受けた腫瘍は治療前よりも強くなるとみられる。


「ある意味では、化学療法と放射線治療で、腫瘍は治療前よりも頑丈になる」と、デューク大学医療センター放射線腫瘍学教授Mark W. Dewhirst獣医学博士は述べた。「こうした治療が、ほとんどでなくとも多数の腫瘍細胞を極めて効果的に死滅させなければ、逆効果となるかもしれない」

Dewhirst博士と同じくデューク大学病理学部のYiting Cao医学博士とBenjamin Moeller医学博士は、先ごろの会議とNature Reviews Cancer誌6月号で特集されたレビュー記事でこの反直感的な考えを発表した。

放射線治療と化学療法を行うと、大部分の固形腫瘍細胞が死滅するが、残存した細胞においては、HIF1(低酸素誘導因子1)と呼ばれる制御因子の増加が促進され、これにより、腫瘍細胞が腫瘍内部の血管が増加して、必要な酸素を獲得するようになる。固形腫瘍は通常酸素不足であり、HIF1は固形腫瘍が必要とする酸素の供給を促進する、とDewhirst博士は説明する。

レビュー記事では、(HIF1を)阻害することが、固形腫瘍細胞、特に放射線治療あるいは化学療法に抵抗性の細胞を死滅させる明確な手法であると結論付けている。

本研究の一環として、Dewhirst博士のチームは、周期的低酸素と呼ばれる腫瘍の酸素濃度が増減する現象を研究してきた。酸素濃度は、広範な腫瘍領域だけでなく個々の血管でも自然に周期的に増減することがわかっている。この腫瘍の酸素濃度の不安定性によりHIF-1生成が増加し、放射線治療の失敗がもたらされると、Dewhirst博士は述べている。

「こうした低濃度下での酸素の脈動により、腫瘍全体がより激しく増殖する、というのが私の意見である」と、Dewhirst博士は述べた。「周期的低酸素状態は、腫瘍の単一血管の一時的な血流停止に起因すると多くの人が考えていた。しかしながら実際は、酸素濃度は事実上腫瘍のいたるところで周期的に上昇・下降し、これは血流速度の変動に起因する。これを人々に納得させるのは非常に難しかった」

Dewhirst博士らは、生きた動物の腫瘍での酸素輸送の動画(下記参照)を製作した。その動画では、酸素輸送を示す波の脈動が変色することで、酸素濃度がはっきりと周期的に増減するのがわかる。

デューク大学チームは、HIF1の阻害が腫瘍増殖に対する一致した答えであると主張する。HIF1活性の阻害は、低酸素状態での腫瘍の解糖(エネルギー産生)能力を阻害して腫瘍の増殖を妨げると著者らは記しており、HIF1阻害療法を併用で、化学療法あるいは放射線治療を成功させる、最も安全で有効、確実な方法はまだ研究中であると、Dewhirst博士は述べた。

例えば、腫瘍増殖の初期、特に極めて初期の転移でHIF1を標的とするのは有用だろう、とDewhirst博士は言う。「原発性乳癌の腫瘍を摘出した女性で、転移のリスクが高い場合は、HIF1を標的とする状況であると考えられる」と彼は説明した。「HIF1阻害は、血管新生の初期段階で効果がある。この時期に血管形成が加速するためである。この方法で、初期の転移部位を不活性にし、増殖を阻止することができる」

Duke大学チームは、HIF1阻害薬の第1相試験を完了している。「われわれは、この研究を積極的に臨床で追究し、第2相試験に入る予定だ」と、Dewhirst博士は述べた。「われわれは、HIF-1阻害と放射線治療および化学療法とを併用した、その他の疾患への適用にも関心がある。」

Dewhirst博士のチームの動画

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入江瑞穂 訳
中村光宏(医学放射線)監修

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原文

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