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初期大腸癌患者の一部は化学療法を受けるべきでない/メイヨークリニック

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初期大腸癌患者の一部は化学療法を受けるべきでない/メイヨークリニック


初期大腸癌患者の一部は化学療法を受けるべきでない、とメイヨーの研究者ら
米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で発表予定
2008年5月15日

ミネソタ州ロチェスター ― メイヨークリニックの研究者および共同研究者らは、大腸癌患者のうち、かなりの割合については化学療法による利益はなく、実際には生存期間を短縮している可能性があるため受けるべきではないと、強く結論づけた。

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本研究の知見から、特定の患者に対し、癌専門医は治療法を提示する前に既存の検査により腫瘍のサブタイプを確認すべきということが示された。この検査によりもっとも恩恵を受けるのは、局所進行癌のうちリンパ節には転移していない患者、すなわちステージIIの患者である。

本研究の結果は5月15日に第44回米国臨床腫瘍学会(ASCO)で発表され、「DNAミスマッチ修復欠損」(dMMR)と定義される腫瘍をもつ患者(全体の15%)では、結腸癌の治療に広く用いられる5-フルオロウラシル(5-FU)による化学療法が奏効しないと報告された。

研究者らは2003年にも、dMMRを有する患者に化学療法を実施すべきでないと示唆する記事をNew England Journal of Medicine(NEJM)誌に投稿している。この知見はかなり斬新なものであったため、臨床に組み入れる前に結果の追試が必要だった。今回の新しい研究結果がその追試となる。

メイヨークリニックの生物統計学者で本試験の発表者であるDaniel Sargent医学博士は、「ステージIIの大腸癌の患者に対する治療法を検討するにあたり、これらの情報を持っておくことは患者および医師にとって非常に重要なものだと考えます」と話している。「それにより、恩恵のない治療による毒性や不便さ、経済的負担から患者を解放することができます」

dMMRを検査する簡易な臨床検査法は存在する。現在これらの検査法は遺伝性の大腸癌をチェックするために用いられており、ミスマッチ修復タンパク質の欠損を特徴とする癌である、と共著者のStephen Thibodeau医学博士は述べる。

「国内の多くの臨床検査機関ですでにこれらのテストが実施されています」とThibodeau氏は話す。「今回の研究でdMMRの検査を大腸癌治療の標準的な診断検査に入れるべきだとする仮説が証明されました。この検査を臨床精密検査に組み入れることは容易でしょう」

結腸癌は少なくとも2つの主要なグループに分けられることが知られている。腫瘍の約15%では、DNAミスマッチ修復というエラーチェック機構によりDNAに対する損傷を修復する能力が欠損している(dMMR腫瘍)。残り85%の腫瘍には異なる遺伝子変異があり、染色体不安定性と呼ばれる別タイプの細胞異常を呈する。

細胞異常のタイプの差異に加え、これら2群の患者の腫瘍はかなり異なる特徴を示す。「ここしばらくの間、dMMRの腫瘍を持つ患者のほうが状態はよいということが知られていました。腫瘍の侵襲性は低めで、高齢になってから発症する傾向があります」と、Dr. Sargent氏は話す。「つまり、こちらの患者のほうが予後がよいのです」

「本研究で重要なのは、これらの患者に化学療法がどれほど奏効するかさらに注意深く観察している点です」とDr. Sargent氏は言う。「研究により、dMMR腫瘍を持つ患者群では治療による恩恵がないと信ずるに足るデータが得られました。治療なしという条件でも、dMMR腫瘍を持つ患者は染色体不安定性のある患者に比べ予後が良好です」

NEJMに掲載された臨床診療を変えるべきとする当初の知見が信頼できることを確認するため、研究者らは5-FUによる治療を受けていない患者を何年にもわたって探し集め、腫瘍のサブタイプによってどれほど治療が奏効するかを分析した。「多数の臨床試験からデータと生物試料を双方提供する米国および欧州の複数グループとの国際協力を取りつける必要がありました」とDr. Sargent氏は述べる。「当初の知見が患者にとって臨床上重要であると感じていたので、この検証研究は必須でした」

研究チームは患者1,027人から得られた組織試料の試験を実施した。16%がdMMRと分類された。試験の結果、染色体不安定性を有する腫瘍患者には化学療法に有意な効果のあることが示された。化学療法を受けた患者の5年後生存率は74%で、それに対し治療を受けない患者では66%であった。

だがdMMRのある患者では化学療法は:寄与しなかった。dMMRと診断されたステージ2の患者では、標準的な5-FUを基本とした化学療法を受けた場合の5年後生存率(75%)は、治療を受けない患者(93%)に比べ有意に低下していた。

dMMR腫瘍を有する患者において化学療法後の予後が悪くなる理由については現在研究が進められている。Dr. Sargent氏およびDr. Thibodeau氏によると、1つの仮説として、dMMR腫瘍は化学療法による損傷を修復できないため、変異が誘導され癌の侵襲性が高まったことが考えられるという。他の仮説としては、元来dMMR腫瘍には強い免疫反応を起こす性質があり、化学療法によってその有益な反応が弱められ、結果として癌の増殖につながっている可能性があるという。

共同研究者は次のとおり。
Axel Grothey, M.D., Mayo Clinic; Silvia Marsoni, M.D., SENDO Foundation, Milano, Italy; Roberto Labianca, M.D., Opsedali Riuniti, Bergamo, Italy; Stanley Hamilton, M.D., M.D. Anderson Cancer Center, Houston; Valter Torri, M.D., Mario Negri Institute, Milano, Italy; Genevieve Monges, M.D., Institut Paoli Calmettes, Marseille, France; Christine Ribic, University of Toronto, and Steven Gallinger, M.D., Mount Sinai Hospital, Toronto, Ontario, Canada.

米国臨床腫瘍学会(ASCO)抄録番号 : 4008

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橋本 仁 訳
鵜川邦夫(消化器内科)監修

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原文

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