DNA探索により、肺癌の再発予測の遺伝子マーカーを発見/ジョンズホプキンス大学キンメルがんセンター | 海外がん医療情報リファレンス

DNA探索により、肺癌の再発予測の遺伝子マーカーを発見/ジョンズホプキンス大学キンメルがんセンター

更新日

Facebookでシェアする Twitterにツィートする LINEに送る print

DNA探索により、肺癌の再発予測の遺伝子マーカーを発見/ジョンズホプキンス大学キンメルがんセンター

原文
DNA探索により、肺癌の再発予測のための遺伝子マーカーを発見
ジョンズホプキンス大学キンメルがんセンター
2008年3月12日

初期肺癌患者から切除した腫瘍および組織中には、明確に判別可能な遺伝子変化が存在し、これによって、どの肺癌がより再発しやすいかの有用な予測指標になるかもしれないことがジョンズホプキンス大学キンメルがんセンターの研究者らによって明らかにされた。

[pagebreak]


彼らによると、この発見は肺癌患者の30~40%に術後5年以内に再発するとされている最小(豆粒大)の肺癌に対しても治療アプローチを変える可能性のある発見であるという。

ジョンズホプキンス大学外科准教授Malcolm Brock, M.D.氏は次のように述べている。「これは癌に対するDNAによる科学捜査である。手術後、顕微鏡で観察できるような癌の痕跡はなくなるが、これらの腫瘍からのDNAの痕跡は現場、特にリンパ節に残されているかもしれないのである。」

研究チームが突き止めた特定の目印となる分子はメチル基として知られる化学物質であり、遺伝子のDNAはしご状構造部分に接合する。メチル化とは、細胞に対し遺伝子のスイッチをオンあるいはオフにするためのシグナルとしての役割を果たしており、癌の形成および発生においてよく知られている現象である。これらのシグナルが乱れると異常タンパク質の連鎖が引き起こされ、癌の発生あるいは再発につながる。

3月13日付のNew England Journal of Medicine誌に掲載された研究では、Brock氏ら研究チームが、初期非小細胞肺癌患者167人から採取した700を超える手術検体について、肺癌に関連する特異的なメチル化パターンを解明するための徹底した調査を行ったことが報告された。

術後40カ月以内に癌が再発した患者51人と再発しなかった116人から採取した腫瘍およびリンパ節が比較された。

研究者らはすべての検体について、肺癌発生に関連する7つの遺伝子のメチル化状態を調査した。このうち、サイクリン依存性キナーゼ阻害因子2A遺伝子(p16)、H-カドヘリン遺伝子(CDH13)、大腸腺腫様ポリポーシス遺伝子(APC)、およびRas関連ドメインファミリー1遺伝子(RASSF1A)の4つの遺伝子については、再発患者でメチル化が最も顕著に認められた。

この研究により再発した癌と再発しなかった癌との間にはメチル化マーカーの差は多くの遺伝子で二倍であることが示された。

「われわれの研究が裏付けられれば、再発症例の多くで認められたDNAの痕跡により、このような癌を初期癌ではなく進行期癌として再分類したほうが賢明かもしれない」とBrock氏は述べている。

またBrock氏ら研究チームは、標準よりも再発が早かった患者11人について、腫瘍組織および原発腫瘍部位から遠位にあるリンパ節の両方で、p16とCDH13という2つの遺伝子の致命的な組み合わせのメチル化が通常より顕著であることも突き止めた。このメチル化パターンを有する11人のうち、8人は1年以内に癌が再発し、その他の3人も30カ月経過時までに再発した。

研究者らはこれらの結果を分析して、特定の患者の癌が再発する可能性を数値化し、その特定のメチル化パターンにより再発リスクが5倍から25倍増加することを示した。症例数が少ないため一部の遺伝子マーカーは統計的有意性に欠けているが、最も有望なp16とCDH13の2つの遺伝子による可能性予測は正当な根拠があると彼らは主張している。

キンメルがんセンターの腫瘍内科医James Herman氏は、これらの結果が裏付けられれば、医師は高リスク患者に対してより強力な術後化学療法を施行することを考慮することになるかもしれないと述べている。また彼はこれらの遺伝子パターンを標的としてメチル基を除去する治療法に期待を持っている。「侵攻性疾患のマーカーとなるものは、それら自体が治療の標的ともなるのである。」

現在、ジョンズホプキンス病院において治療中の肺癌患者を対象として、メチル化マーカーに関する付随の研究が行われている。

肺癌は乳癌や前立腺癌のような他の癌に比べて治癒率がはるかに低い。また、癌のなかで最も致命的であり、米国では2番目に多い。

この研究は、以下から助成を受けた: National Cancer Institute’s Specialized Program of Research Excellence(SPORE), the Commonwealth Foundation for Cancer Research, the Hodson Trust, and OncoMethylome Sciences.

その他の研究者は以下である:Craig M. Hooker, Emi Ota-Machida, Yu Han, Mingzhou Guo, Stephen Ames, Sabine Glöckner, Steven Piantadosi, Edward Gabrielson, Genevieve Pridham, Kristin Pelosky, Stephen C. Yang and Stephen B. Baylin from Johns Hopkins; and Steven A. Belinsky from the Lovelace Respiratory Research Institute.

Herman氏とBaylin氏はOncoMethylome Sciences社の顧問を務めており、研究支援も受けている。ジョンズホプキンス大学とOncoMethylome社との間で交わされたライセンス契約のもと、メチル化特異PCR法についてはOncoMethylome社が認可を受け、この技術の販売から大学が受け取る特許権使用料の一部を得る権利を有している。Brock氏はOncoMethylome Sciencesから研究支援を受けている。

###

ご注意ください

本研究に関しての問い合わせが非常に多いため、われわれ研究者はそれぞれの問い合わせに個別に対応することができません。NEJMに報告された、肺癌の手術を受ける患者の隠れた癌を確認するためのマーカーを用いた研究はまだ完結していません。付随的な臨床試験が現在進行中でありますが、現段階でこれらの研究に用いる検体は匿名化されています。そのため、われわれは個々の患者に対する値を提供する手段がないのです。また、ジョンズホプキンス大学では学外からの組織検体を受け付ける設備もありません。マーカーはまだ商用化されていないため、一般では入手できません。このようなマーカーが早急に必要とされていることはわれわれも理解するところであり、研究を可能な限り迅速に完結させるべく取り組んでいます。研究についての情報は進展があればウェブサイトにアップデートする予定です。

新たに肺癌と診断された方、また手術に関して呼吸器外科医に相談を希望する方は410-502-3275に伝言を残してください。

ご自身の肺癌リスクについて不安がある場合、これらの研究は肺癌と診断されて手術を受ける患者のみに当てはまるものであることを留意してください。肺癌リスクに関する診断を希望する場合は、お近くの肺癌専門医に受診してください。肺癌専門医を探す際の相談は、National Cancer Institute、1-800-4-CANCERに電話するか、CardioThoracic Surgery Networkのサイトを閲覧してください。

******
河原恭子 訳
平 栄(放射線腫瘍科)

printこの記事を印刷する Facebookシェアする Twitterツィートする LINE送る

免責事項当サイトの記事は情報提供を目的としてボランティアで翻訳・監修されています。翻訳の記事内容や治療を推奨または保証するものではありません。

注目キーワード

新着ドキュメント

一覧

週間ランキング

  1. 1乳がん化学療法後に起こりうる長期神経障害
  2. 2非浸潤性乳管がん(DCIS)診断後の乳がんによる死亡...
  3. 3がんに対する標的光免疫療法の進展
  4. 4「ケモブレイン」およびがん治療後の認知機能障害の理解
  5. 5若年甲状腺がんでもリンパ節転移あれば悪性度が高い
  6. 6BRCA1、BRCA2遺伝子:がんリスクと遺伝子検査
  7. 7治療が終了した後に-認知機能の変化
  8. 8コーヒーが、乳がん治療薬タモキシフェンの効果を高める...
  9. 9ASCO、がん臨床試験に対する適格基準の緩和を推奨
  10. 10ルミナールA乳がんでは術後化学療法の効果は認められず

お勧め出版物

一覧

arrow_upward