2010/06/15号◆癌研究ハイライト | 海外がん医療情報リファレンス

2010/06/15号◆癌研究ハイライト

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2010/06/15号◆癌研究ハイライト

同号原文
NCI Cancer Bulletin2010年6月15日号(Volume 7 / Number 12)


日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中〜

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癌研究ハイライト

・慢性骨髄性白血病のさらなる治療選択肢が臨床試験により示される
・一部の浸潤性乳がん女性において乳房部分照射は安全
・高齢の肺癌患者に対する多剤併用化学療法により生存期間が改善
・局所進行前立腺癌に対するホルモン療法に放射線療法を追加することにより生存期間が延長する
慢性骨髄性白血病のさらなる治療選択肢が臨床試験により示される

2つの第3相臨床試験の短期間における中間結果によると、慢性骨髄性白血病(CML)患者が新たな初回治療を選択できるようになる可能性がある。ただ、標準的一次治療であるイマチニブ(グリベック)と比較して、これらの薬剤が長期生存を改善するかどうかはまだ明らかではない。この情報は、新たにCMLと診断される患者が最適な治療を決定する際に重要になるだろうと述べる研究者もいる。この2つの試験データは、シカゴで開催されたASCO年次総会で先週発表され、6月5日にNew England Journal of Medicine(NEJM)誌電子版に掲載された。

これらの試験はダサチニブ[dasatinib](スプリセル[Sprycel])とニロチニブ[nirotinib](タシグナ[Tasigna])をそれぞれイマチニブと比較した。これらの薬剤はイマチニブと同様、CMLを増悪させる分子であるBCR遺伝子とABL遺伝子の融合遺伝子を標的とする第二世代の薬剤である。この融合遺伝子は、CMLの特徴である白血球の過剰産生を促進する。両試験において、新しい治療薬のどちらかを投与された患者は、細胞遺伝学的完全寛解、つまり、BCR-ABL融合遺伝子を持つ染色体(フィラデルフィア染色体と呼ばれる)を含む細胞が完全に消失した割合が、イマチニブを投与された患者よりも高かった。また、ほとんど全ての癌細胞の消失を意味する分子遺伝学的大寛解(major molecular response)の割合も高かった。

519人の患者を登録したダサチニブとイマチニブを比較するDASISION試験では、12カ月経過観察した時点での細胞遺伝学的完全寛解率は、ダサチニブ投与患者で77%、イマチニブ投与患者で66%であった。分子遺伝学的大寛解率はそれぞれ46%、28%であった。

846人が登録したニロチニブを投与するENESTnd試験では、2種類の投与量のニロチニブとイマチニブを比較した。どちらかのニロチニブもしくはイマチニブを投与された患者の細胞遺伝学的完全寛解と分子遺伝学的大寛解の割合は、DASISION試験で確認された割合と同程度であった。両試験において、有害事象は非常に軽度であり、対処可能であった。

両方の薬剤とも、イマチニブに耐性化した、もしくは抵抗性のCMLへの治療投与がFDAによってすでに承認されているが、イマチニブよりも強力である。さらに、これらの薬剤に対しては、薬剤に抵抗性を持たせるBCR-ABL遺伝子の変異がイマチニブよりも少ないようであると、Dr.Charles Sawyers氏は説明した。同氏の研究は、史上初めて、最も成功した癌分子標的治療の1つであるイマチニブの開発につながった。

「この2つの試験における効果と有害事象に関するデータは、ダサチニブもしくはニロチニブがイマチニブよりも一次治療として優れていることを強く裏づけるものである」とSawyers氏はNEJM誌の付随論説で記している。しかし、イマチニブはあと数年でジェネリック薬として利用可能となり、「費用対効果に対する高まる要求」もあるので、CMLに対する一次治療の選択肢として残るかもしれないと同氏は指摘した。

2月にFDAは、ノバルティス社によって製造されるニロチニブをCMLに対する一次治療とするかどうかの優先審査を認定した。ダサチニブを製造するブリストルマイヤーズスクイブ社は、この薬剤をCMLに対する一次治療薬とする承認を得るため「DASISION試験のデータを世界中の健康機関に今年提出する準備中」であるとニュースリリースで発表している。

一部の浸潤性乳がん女性において乳房部分照射は安全

9カ国、28の治療施設で行われたランダム化臨床試験において、乳房温存術中に1回の放射線照射を受けた乳癌女性の局所再発率は、術後に標準的な数週間の乳房全体への外照射治療(EBRT)を受けた女性と同程度であった。このTARGIT-Aと呼ばれる試験の結果は、6月5日にLancet誌に掲載された。

ロンドンのユニバーシティ—カレッジのDr.Jayant Vaidya氏らは、Intrabeamという装置を用いて、術中におよそ20Gy の放射線を1 回で乳房部分照射する群に1,113人の女性を、40〜56Gyの放射線を15-25分割で照射する(治療の最後に追加照射する場合あり)EBRTを受ける群に1,119人を無作為に割り付けた。すべての女性は45歳以上であり、単発浸潤癌に対して乳房温存術の適応患者であった。最初から小葉癌とわかっている患者は登録から除外されたが、術中照射群で小葉癌、あるいはその他のハイリスク癌であると判明した患者(術中照射群の約15%)は後にEBRTを追加で受けた。ホルモン療法、化学療法は両群で必要に応じて施行された。

治療後4年で、術中放射線療法群では6人、EBRT群では5人の女性が治療を受けた乳房に癌が再発した。研究者らは今後も、両群の患者の局所再発や治療部位以外での新たな原発癌に対する監視を続ける予定である。

癌の再発、放射線療法の必要性、回復の速さといった事柄はどれも、患者が治療法を選ぶ際に考慮する事であると著者らは説明した。「放射線を用いた根治療法は、手術と同時か直後に、標的を定めた1回の術中照射で完了するので、患者の主な懸念のうち2つはすぐに満たされ、放射線治療施設から遠いことや治療の長期化を避けることを理由に乳房温存術ではなく乳房切除術を余儀なく選ぶ患者はより少なくなるだろう」と著者らは述べた。

高齢の肺癌患者に対する多剤併用化学療法により生存期間が改善

進行した非小細胞肺癌(NSCLC)の高齢患者は、単剤よりも2剤併用化学療法によって生存期間が改善する可能性があると、フランスの研究者らはASCO年次総会で報告した。この知見は、初めて厳密に高齢者だけを登録した肺癌臨床試験であり、70〜89歳の451人の患者が登録した第3相臨床試験から得られた。この試験は、全生存期間が単剤療法(ゲムシタビン(ジェムザール)もしくはビノレルビン(ナベルビン))群よりも2剤併用化学療法(カルボプラチン(パラプラチン)とパクリタキセル(タキソール))群の方が4カ月以上改善することが中間分析で明らかになった時点で早期終了した。

無作為に2剤併用化学療法に割りつけられた患者は、単剤療法群の患者に比べて、全生存期間の改善に加えて無増悪生存期間が長く、奏効率も高かったと、この試験を主導したフランス、ストラスブルグ大学病院のDr.Elisabeth Quoix氏は報告した。この有効な結果は、喫煙者やより高齢者といった予後不良患者の大半の小集団においても認められたと、同氏は報道発表で説明した。

2005年にこの試験が始まった当時、ASCO臨床ガイドラインは、進行した高齢肺癌患者に対しての治療は単剤療法を推奨していたと、Quoix氏は指摘した。これらの新しい知見によって、「NSCLCの高齢患者に対して新しい治療の考え方」が確立されたと同氏は述べた。

全生存期間の中央値は、併用化学療法では10.4カ月、単剤療法では6.2カ月であった。1年生存率はそれぞれ45%、27%であった。しかし、併用化学療法では、白血球の危険な減少である好中球減少症がほぼ4 倍に増えるなど、有害事象が増加した。

最近の研究によれば、進行した高齢肺癌患者の大半は化学療法を受けず、受けたとしても単剤療法だけの場合が多いと、メリーランド大学グリーンバウムがんセンターのDr.Martin Edelman 氏は試験結果発表の全体会議で説明した。同氏は、選択された併用療法薬や投与スケジュールなど、試験計画にいくらかの懸念を示したが、この試験や他の臨床試験によって、高齢患者に対するプラチナ製剤を基本とした併用化学療法の有効性は支持されており、「日々の実践で変更改善すべきである」と述べた。

スローンケタリング記念がんセンター胸部腫瘍科部長のDr.Mark Kris氏は併用化学療法を支持し、「70歳以上の患者は、並存疾患や本人の希望などを考慮して、他の患者と同じように治療されるべきである」と述べた。

局所進行前立腺癌に対するホルモン療法に放射線療法を追加することにより生存期間が延長する

国際共同第3相試験の結果によると、アンドロゲン除去療法(ADT)に放射線療法を追加すると、局所進行前立腺癌男性の死亡リスクを43%減少させることが判明した。このデータは先週シカゴで行われたASCO年次総会で発表された。

1995〜2005年の間に、1,205人の男性がADT+放射線療法もしくはADT単独療法に無作為に割りつけられた。多くの男性の癌はステージT3〜T4 であった。追跡期間中央値6年の後、併用療法を受けた603人中51人、ADT単独療法を受けた602人中89人が死亡した。重篤な消化管有害事象の発生はどちらの群でも2%未満であった。しかし、放射線療法を受けた患者の方が、軽度の下痢と直腸出血が多かった。

「これらの結果から示唆されることは、このような患者の治療計画に放射線治療を加えることは、標準治療の一部になりうるとみられ、考慮されるべきである」と、筆頭研究者であり、プリンセスマーガレット病院とトロント大学所属のDr.Padraig R. Warde氏は述べた。

ADT+放射線療法を受けた男性は、ADT 単独療法を受けた男性よりも10年間の前立腺癌死亡率は少ない(15%対23%)だろうと、研究者らは予測している。最終結果はあと数年で明らかになると期待される。

この試験はIntergroup T-94-0110 試験として知られるが、カナダ国立がん研究所によって調整され、英国医学研究会議(Medical Research Council of the United Kingdom)と米国のSOG臨床試験協力団体が参加した。この試験はもともと1993年に計画されたが、「この結果は2010年でも意味があると確信している。未だに、高リスク患者の約50%がADT単独で治療されているのである」とWarde氏は述べた。実際のところ、ここ10年の技術的な変化のために「この試験で使用されているよりもはるかに大量の放射線」を前立腺に照射することが可能になったので、本試験の放射線治療追加の効果は、過少評価されているかもしれないと、同氏は述べた。

その他の記事から:セレンは二次発癌(非小細胞肺癌)を予防しない米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で発表された試験結果によると、早期の非小細胞肺癌(NSCLC)で外科治療を受けた患者の二次原発肺癌の予防にセレンは有効でないことが明らかになった。NSCLC 患者の1〜2%で術後最初の1年間に二次原発腫瘍が発現する。

ECOGグループが主導する二重盲検多施設共同試験において、患者はプラセボもしくは200mgのセレン含有酵母を48カ月間毎日服用するよう無作為に割りつけられた。この試験は2000年に始まり約10年間継続したが、独立したデータ・安全性監視委員会によって試験データが分析され、セレン補充は期待された効果を生まないとみられると判断され、2009年の11月に早期終了した。

「この試験によって、サプリメントは薬であり、厳密に試験されて初めて有効かどうか判明することに改めて気づかされる」とスローンケタリング記念がんセンターのDr.Mark Kris氏はASCO報道発表で述べた。

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野長瀬 祥兼 訳
林 正樹(血液・腫瘍内科医/敬愛会中頭病院)、原 文堅(乳腺腫瘍医/四国がんセンター)、
小宮 武文(呼吸器内科医/NCI Medical Oncology Branch)、榎本 裕(泌尿器科医/東京大学医学部附属病院)監修

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