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患者における治療効果を予測するバイオマーカーを発見/UCLAジョンソンがんセンター

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患者における治療効果を予測するバイオマーカーを発見/UCLAジョンソンがんセンター

原文
研究者らは患者における治療効果を予測するバイオマーカーを発見
カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)ジョンソンがんセンター
2008年2月

カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)ジョンソンがんセンターの研究者らは、どの進行非小細胞肺癌の患者が抗炎症薬セレブレックスと増殖因子受容体阻害薬タルセバの併用療法に対して効果を示すかを予測するバイオマーカーを発見した。

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2008年2月1日発行のJournal of Thoracic Oncology誌に掲載された知見は、腫瘍医が、患者に対して効果を示す薬剤を処方し、効果を示さない治療を省くことによって治療を個別化するための一助となる可能性がある。両薬剤とも1日1回錠剤として服用され、化学療法のような従来の治療法よりも副作用が少なかった。

もしこの知見が追加的な試験によって確認されれば、個別化された薬剤の併用は、新しくてより効果的な治療を必要としている患者にとって新たな選択肢となるであろう、と肺・救命医療科教授で本試験の筆頭著者であるSteven Dubinett医師は述べている。今年だけで213,000以上の米国人が肺癌と診断され、そのうち160,000人以上が亡くなる。

「私たちは、個々の患者がそれぞれの腫瘍の特定の分子の異常を標的とした個別化した治療を受けられるように、肺癌の標的療法に関する効果の良い予測因子を必要としている」とがんセンターの肺癌におけるSPOREプログラム(specialized Program of Research Excellence)〔注:優れた研究のための特別プログラム〕のディレクターも務めるDubinett氏は述べた。

この知見は、他のすべての治療の選択肢が効果を示さなかった小グループの患者における薬剤を併用した用量漸増第1相臨床試験から得られた。この初期段階(すなわち末期の患者が対象となる)試験において、進行肺癌患者において予想以上の効果が見られた。本試験では、約50%の患者において30%以上の腫瘍の縮小、または増大がない安定と呼ばれる状態がみられ、良好な結果と考えられた。

UCLAの研究者らは、なぜある患者では良い効果がみられのに、他の患者では効果がみられないのかを見出すために、患者から採取した腫瘍、血液そして尿のサンプルを研究した。彼らの知見によって、タルセバとセレブレックスの併用療法に効果を示す可能性がある患者と可能性がない患者を特定できる可能性がある数種のバイオマーカーが特定された。

研究者らは、治療効果がみられなかった患者では、血中のある種の複数のタンパク質の濃度がより高いことを見出した。一方、治療に対して効果を示した患者では、その他のタンパク質は減少していた。これらのタンパク質量の変化が、腫瘍細胞をタルセバに対してより攻撃され易くするとみられるセレブレックスの効果を説明する一助になるだろうとDubinett氏は語った。

肺腫瘍の約80~85%は炎症を引き起こす酵素であるシクロオキシゲナーゼ‐2(COX-2)を過剰に発現している。この酵素は、癌細胞の死滅に抵抗性を与え、より浸潤性を高め、腫瘍が栄養を得るために独立した血液供給を得るための血管生成を起こす。またCOX-2 は上皮増殖因子受容体(癌細胞の表面に存在し、複製のシグナルを受容し癌が増殖する引き金となる)を阻害するタルセバのような薬剤に対する抵抗性を惹起するようである。

肺癌患者のうち、約15%にしかタルセバは奏効せず、いずれはこれらの患者もタルセバに対して抵抗性となる。Dubinett氏と彼のチームは、実験室レベルでCOX-2 の関与する経路を阻害すれば肺癌腫瘍細胞のタルセバに対する感受性を回復できることを究明した。この知見が、彼らをCOX-2を阻害するセレブレックスとタルセバを併用した第1相臨床試験へと導いた。本試験は、米国国立癌研究所によって資金援助されている肺癌SPOREプログラムの一部として実施され、また肺癌の新しい治療法研究のためのNickoll Family Giftからの追加支援も受けている。

研究チームによる第1相臨床試験の患者サンプルの解析から、治療前のMMP9濃度が低い患者が併用療法に最も効果を示すことが明らかになった。将来、このタンパク質バイオマーカーが患者をグループ化するために使える可能性がある。もしこれらの結果が、より大規模な試験で確認されればMMP9の血中濃度が低い患者はセレブレックスとタルセバによる治療を受けることになり、効果が期待される。

この試験は100名の患者でより大規模な多施設第2相臨床試験として進行中である。すべての試験施設で、治療前後に患者から採取したサンプルがジョンソンがんセンターの研究室で分析される。研究者らは第1相臨床試験で特定されたタンパク質を発現する腫瘍と本併用療法に対する効果との間に関係があるかどうかを確認しようとしている。

このより大規模な試験によって、肺癌に対する効果的な併用標的治療が近い将来開発され、それが血液検査で恩恵を受ける可能性が大きいと判断された患者に適用されるエビデンスがもたらされる可能性がある。それはまたなぜすべての肺癌患者に同じ治療が奏効しないのかを究明し、癌のタイプではなく、腫瘍と血流中に見出される分子署名によって患者をグループ化し、個別化医療的アプローチを促進することになるだろう。

「この試験は、これらのバイオマーカーが治療前に効果を示す可能性が高い患者を選択するために、将来使われることになるかどうかを決定付ける可能性がある」とDubinett氏は述べた。

UCLAジョンソンがんセンターは病気の研究、予防、発見、制御、治療および教育に従事する235人の研究者および臨床医で構成されている。米国で最大級の総合がんセンターのひとつであり、研究を推進し基礎科学を最先端の臨床試験に外挿するよう尽力している。2007年7月ジョンソンがんセンターはU.S. News & World Reportによってカリフォルニアで最良のがんセンターと指定され、8年間連続でそのランクを維持している。

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内村美里人 訳
島村義樹(薬学)監訳

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