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高齢の肺癌女性の生存を予測するメカニズムを発見/UCLA

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高齢の肺癌女性の生存を予測するメカニズムを発見/UCLA

原文
高齢の肺癌女性の生存を予測するメカニズムを発見
2007年11月1日

早期肺癌の高齢女性の生存を予測する新しいメカニズムがUCLAジョンソン総合がんセンターの研究者らによって明らかになった。今後の治療戦略にも多大な影響を及ぼす可能性のある発見である。

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UCLAの研究者らが、65歳以上のステージ1、2の肺癌女性で、アロマターゼ活性の高さと進行の速さおよび生存率の低さに関連があることを初めて発見した。アロマターゼは、本来アンドロゲンと呼ばれるホルモンから別のホルモンであるエストロゲンを産生する酵素である。この発見により、生存を予測する新しい方法が期待できるだけでなく、乳癌に対してすでに承認されているアロマターゼ阻害剤を用いた治療対象が明らかになる可能性もある。

UCLAの肺癌SPORE(Specialized Program of Research Excellence)プログラムの一環として実施されたこの試験の成果はCancer Research 誌2007年11月1日号に掲載されている。

「あらゆる証拠が、これがきわめて強力な予後マーカーである可能性を示唆しており、どの患者に長期生存の可能性があり、どの患者が肺癌で死亡するかの予測が可能になると期待されます」と、病理学・臨床検査医学科准教授およびジョンソンがんセンター研究員でこの試験の執筆責任者であるLee Goodglick氏は言う。「患者が長期生存を果たす可能性が高いことがわかっていれば、医師は戦略的に効果の高い治療法を選択でき、その一方で進行の速い肺癌であれば積極的に癌を攻撃する治療法を選択することもできます。この試験の特筆すべきもうひとつの知見は、癌が比較的早期で治療の選択肢の多い段階に生存の予測ができるということです」。

ジョンソンがんセンター研究所で実施された試験の結果から、エストロゲンが乳癌の場合と全く同じように肺癌の増殖にも関与していることがわかっていた。研究者らは、動物モデルを用いてエストロゲンまたはアロマターゼがヒト肺癌の増殖の引き金となることを明らかにした。次に、以前にUCLAまたはM.D.アンダーソンがんセンターで治療を受けた男女750人以上の肺癌組織検体を組織マイクロアレイと呼ばれる新しいハイスループット技術を用いて解析した。アロマターゼ活性を測定し、癌の進行度や生存率との相関関係を検討した。

研究者らは、65歳以上の女性でアロマターゼの活性の高さと、進行が早く死亡リスクが高い癌に相関関係があることを発見した。

「この発見には驚かされました」とUCLAの早期発見研究ネットワーク(Early Detection Research Network)の責任者であり、肺癌SPOREプログラムの治験担当医師でもあるGoodglick氏は言う。

「本学UCLAのRichard Pietrasらのチームによる先駆的な研究から、エストロゲンが乳腺や卵巣組織と同じように肺癌にも重大な影響を及ぼしていることがわかっていました。しかし、このアロマターゼがこれほど重要であるとは思わず、ましてやこの酵素が男性よりも女性に大きな影響を及ぼしているらしいことは予想していませんでした。いわば先入観のないブラックボックスにデータを入力して試験を開始したところ、このような新たな相関関係が見つかったというわけです」

Goodglick氏は、なぜアロマターゼ活性が予測因子として女性だけに有効であるのかが大きな疑問であり、またなぜ65歳以上の女性に最も有効であるのかも同じく関心のあるところだと言う。閉経開始の平均年齢が約51歳であるため、閉経とは関係がないようである。むしろ、女性が65歳を超えると次第に減少していく別の種類のホルモンであるアンドロゲンの活性との関係の方が高い可能性がある。アロマターゼはある種のアンドロゲンを出発基質としてエストロゲンを生合成する。肺癌は、さまざまな手段を講じながら自らの癌細胞に栄養を補給し、増殖・進展の速度を速めようとしているのであろう。

今年一年間で約9万8千人の女性が肺癌と診断され7万人以上が死亡する。女性の肺癌罹患率がここ数十年上昇し続けており、女性の癌死亡では肺癌によるものが最も多い。従来の治療法は有効でないため、新たな治療法が切実に求められているのだとGoodglick氏は言う。

「本研究は真の集学的チームワークの結果でした。一人一人がきわめて重要な存在でした」とGoodglick氏は言う。

試験には病理学および内科学、UCLA肺癌SPOREプログラム、ジョンソン総合がんセンターの研究者および生物統計学の専門家が参加した。研究者らの次の課題は、この研究をさらに大きな患者集団を対象に全米の多数の癌診療施設で進めることである。そうすることでこの検査の基本が定まり、医師が臨床の現場で検査を効果的に用いることができるようになる。エストロゲンおよびエストロゲンの作用経路が肺癌で果たす役割を明らかにすることおよび個々の患者に合わせた治療介入方法をそれぞれの段階で考案することも重要であるとGoodglick氏は言う。

「肺癌細胞がエストロゲン経路を活性化し増幅するために用いるあらゆる戦略を見つけ出さなくてはなりません。肺癌細胞が65歳以上の女性において用いている策略のひとつは、アロマターゼを増やすことのようです。肺癌細胞が男性や65歳以下の女性にどのような策をとっているのかは、いまだに興味深い謎のままです」と同氏は言う。「エストロゲン経路中の分岐のどの部分が癌細胞にハイジャックされているかを突き止めることができれば、患者ごとにその分岐部分だけを標的とした攻撃が可能になります。この試験はその方向に向けた重要な一歩だと思います」

UCLAジョンソン総合がんセンターでは、約235人の研究者や臨床医が癌研究、予防、発見、コントロール、治療および教育に携わっている。全米最大規模の総合がんセンターのひとつであるジョンソンがんセンターは癌研究を促進し、基礎科学を最先端の臨床研究に応用するために力を注いでいる。ジョンソンがんセンターは2007年7月にU.S. News & World Reportによってカリフォルニア州最高のがんセンターに選ばれた。このランクは8年連続して保たれている。

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中村 訳
島村義樹(薬学) 監修

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