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血管新生のシグナル伝達を細胞の内側から遮断することは深刻な問題をもたらす恐れがある/UCLA

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血管新生のシグナル伝達を細胞の内側から遮断することは深刻な問題をもたらす恐れがある/UCLA

原文
血管新生のシグナル伝達を細胞の内側から遮断することは深刻な問題をもたらす恐れがある
カリフォルニア大学ロサンゼルス校ジョンソンがんセンター
2007年8月9日

血管新生阻害剤は、腫瘍が独自の血液供給を発達させるのを阻止するもので、従来の化学療法よりも副作用が少ない有効な抗癌剤としてもてはやされてきた。しかしながら、UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)ジョンソンがんセンターの研究者らによる新たな試験から、血液供給の発達を阻害する方法の一つにおいては、重篤なそして致命的になりかねない副作用がもたらされる恐れがあることが明らかになった。

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新たに開発された血管新生阻害剤のいくつかは、新しい血管の形成を促進する重要なシグナル伝達タンパク質である、血管内皮増殖因子(VEGF)を遮断することによって作用する。結腸癌および肺癌に対して認可された血管新生阻害剤のアバスチン(Avastin)は、VEGFシグナル伝達を細胞の外側から遮断することによって血管新生を阻害するものである。UCLAの研究者らは、後期臨床試験で現在試験中の小分子薬で用いられているようなVEGFシグナル伝達を内皮細胞の内部から遮断する場合、メカニズムでは何がおこるかを知るために試験を実施した。

結果は予想外であり驚くべきものであった。試験対象マウスの半数以上が心臓発作および致死的脳卒中を起こし、生き残ったマウスも重篤な全身の血管障害を発症した、と分子・細胞・発生生物学教授でありUCLAジョンソンがんセンターの癌細胞生物学プログラムの責任者であるLuisa Iruela-Arispe氏は述べた。

今回の試験は、論文審査のある一流ジャーナルCellの2007年8月24日号に掲載されている。

「これは極めて驚くべき結果です」と、North American Vascular Biology Organization(北米血管生物学会)の元会長であり血管新生の国家的専門家であるIruela-Arispe氏は述べる。「今回の試験は、患者への非常に長期間にわたる血管新生阻害剤の使用に対して、特にVEGFシグナル伝達を細胞の内側から遮断する血管新生阻害剤の使用に対して、何らかの警告を発する正当な理由になるものであると思います。」

アバスチンを服用している患者の約5%に血液凝固関連の副作用が発現する、とIruela-Arispe氏は述べる。しかし、アバスチンは3年前に承認されたばかりであることから、患者が長期間使用し続ける場合に起こり得る副作用については明らかでない、と同氏は言う。

3年におよぶ試験で、Iruela-Arispe氏は、血管の内側を覆い循環血液と血管壁との接触面を形成する細胞である内皮細胞内にVEGFが欠損しているマウスを作り出した。内皮細胞とは、心臓から最小の毛細血管に至るまで循環系の内側を覆うもので血流の摩擦を減らしている。Iruela-Arispe氏とそのチームは、内皮細胞の内側で作られるVEGFの量は細胞の外側で作られるVEGFの量と比較してごく少量であることから、あまり多くの影響を期待していなかった。

しかしながら、試験対象マウスの55%は、人間の30歳に相当する生後25週で死亡した。老年まで追跡調査を実施した残りのマウスについても、病状は非常に深刻であった。

「いくつかの副作用は、血管新生阻害剤を服用している人々ですでに確認されています」とIruela-Arispe氏は述べる。「それらの副作用は私たちが実験室で見てきたような症状でした。」

Iruela-Arispe氏とそのチームは、内皮細胞の外側にあるより多くの量のVEGFが細胞の内側の非常にわずかな量のVEGFの欠損を補っていない、ということに驚いた。欠損した極めて少量のVEGFには「途方もなく大きな生物学的意義」がある、とIruela-Arispe氏は言う。

「明らかに、細胞の外側から起こるシグナル伝達とは異なる、細胞の内側からのシグナル伝達があります」とIruela-Arispe氏は述べる。「細胞の内側にVEGFシグナル伝達がない場合、内皮細胞は死んでしまいます。VEGFシグナル伝達ループの細胞内の部分が細胞の生存に必要となっているのです。これは、細胞内のシグナル伝達が重要な事象であることを明示する初めてのケースです。」

なぜ血管新生阻害剤を服用中の患者の何人かに血液凝固の問題が発生するのかという点については、これまで明らかにされていなかった。Iruela-Arispe氏は、今回の試験は考えられる一つの原因を浮き彫りにしている、と述べる。

「私にそう思わせるだけの状況証拠があります」と同氏は言う。「私は、VEGFシグナル伝達の生存に関わる作用については、細胞の外側からと内側からの両方が関与していると信じています。内側から遮断する場合、外側のシグナル伝達がそれを補うことはできません。しかし、外側から遮断する場合は、おそらく内側のシグナル伝達はそれを補うことができると思います。細胞外のシグナル伝達を遮断するアバスチンのような薬剤を使用する際の副作用がより少ないのは、このことから説明されるでしょう。」

Iruela-Arispe氏は、血管新生阻害剤は癌治療法において有効な薬剤であり続けるだろうと考えている。しかしながら、薬剤送達に対して、より標的化された取り組みが探索されるべきである。ほとんどの血管新生阻害剤と同様に、アバスチンは現在全身的に点滴投与されている。腫瘍が形成する新しい血管に対してより直接的に的を絞って薬剤を注入することができれば、現在認められるような副作用は起こらないかもしれない。

UCLAのジョンソン総合がんセンターは、疾病の研究、予防、診断、制御、治療および教育に従事する約235名の研究者並びに臨床医から構成されている。国内最大級の総合癌センターの一つであるジョンソンセンターは、研究を促進することおよび基礎科学を最先端の臨床試験に反映することに力を注いでいる。2006年7月、ジョンソンがんセンターは8年連続して行われているU.S. News & World Report誌によるランキングにおいて、カリフォルニア州最高のがんセンターに選ばれた。

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豊 訳
榎本 裕(泌尿器科)監修

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