前立腺癌の標準治療が癌の転移を促進する可能性/ジョンズホプキンス大学 | 海外がん医療情報リファレンス

前立腺癌の標準治療が癌の転移を促進する可能性/ジョンズホプキンス大学

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前立腺癌の標準治療が癌の転移を促進する可能性/ジョンズホプキンス大学

 

前立腺癌の標準治療は癌の転移を促進する可能性
ジョンズホプキンス大学キンメルがんセンター*
2007年10月1日

–この研究結果によりアンドロゲン枯渇療法が変更されることもあるかもしれない

アンドロゲン枯渇療法と呼ばれる前立腺癌の一般的な治療法によって、あるタンパク質の産生が前立腺の癌細胞内で亢進し、そのタンパク質の作用によって癌細胞が体中に広がりやすくなる可能性があると、ジョンズホプキンス大学の研究者らが行った新しい研究で示唆された。

ジョンズホプキンス大学の研究者らは、今回の知見によって、この致死的でもある癌に対する標準治療が将来的に変わる可能性はあるものの、自分たちの発見はいまだ非常に予備的なものに過ぎず、前立腺癌患者や医師はこの療法を中止するべきでないと注意を促している。アンドロゲン枯渇療法は腫瘍の成長を遅らせるのに有効な治療法であることを研究者らは強調する。

ジョンズホプキンス大学医学部病理学、泌尿器科学、腫瘍学の各科に所属するDavid Berman准教授らのグループは、ヒト前立腺癌培養細胞でネスチンと呼ばれるタンパク質をコードする遺伝子が活性化されているのを発見し、テストステロン抑制療法により想定外の問題が起きる可能性があることを突きとめた。

研究者らは、実際の人の前立腺癌細胞でもネスチンが産生されているかどうかを知るために、限局性前立腺癌の摘出手術を受けた男性患者から採取した細胞でネスチンの発現を評価したが、ネスチンは検出されなかった。ところが、癌細胞が前立腺の腫瘍の外に広がった転移性前立腺癌で死亡した患者から前立腺癌細胞を単離してネスチンを評価したところ、ネスチン遺伝子が活性化されていたことの確固たる証拠を発見した。

この違いは、体内のテストステロンを減らす治療法であるアンドロゲン枯渇療法が、一般的に前立腺癌が進展し転移しやすくなった場合に限り用いられることから生じたのではないかとBerman氏は推測した。

前立腺癌は一般的にテストステロンに刺激されて成長するため、アンドロゲン枯渇療法は腫瘍の成長を遅らせ、癌の勢いを弱めると考えられている。Berman氏は、癌が転移して死に至る患者はほとんど例外なくこのタイプの治療を受けたことがあると言う。

しかし、細胞からアンドロゲンを遮断することはネスチンの発現にも影響するのではないかと考えて、同氏らはアンドロゲン依存性前立腺癌細胞株で実験した。癌細胞を入れた培養液からアンドロゲンを除去したところ、細胞のネスチン産生が亢進した。

ネスチン遺伝子は細胞の成長および発達に何らかの役割を果たしているのではないかとこれまでにも示唆されてきた。そこでBerman氏らがRNA干渉と呼ばれる実験上のちょっとした妨害行為を用いてネスチン遺伝子の発現を抑制したところ、この細胞は、移動したり、細胞間を通り抜けたりする能力が、ネスチンの発現が通常である細胞より低くなることがわかった。

ネスチンの発現を抑制した前立腺癌細胞をマウスに移植した場合も、通常の前立腺癌細胞よりも体の他の部位に広がる可能性が低いことがわかった。しかし、以上の実験でネスチンの発現が腫瘍の転移にきわめて重要であるらしいことがわかった一方で、ネスチンの発現は腫瘍の増殖には影響を及ぼさなかったようである。

Berman氏は、「こうしたことから示唆されるのは、前立腺癌細胞からアンドロゲンを遮断するとネスチン濃度が上昇し、癌細胞の転移を促進する可能性があるということです」と言う。

この研究に参加したその他のジョンズホプキンス大学研究者は以下である。
M.D., G. Steven Bova, M.D., Matthew E. Nielsen, M.D., Mehsati Herawi, M.D., Ph.D., Ai-Ying Chuang, M.D., and Jonathan I. Epstein, M.D.

10月1日号のCancer Research誌に掲載されたこの研究は、米国国立衛生研究所、米国国立癌研究所、Evensen Family Foundation、German Cancer Aid Foundationから研究助成金を受けた。

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中村 訳
平 栄(放射線腫瘍医)監修

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原文

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