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2009/07/28号◆癌研究ハイライト

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2009/07/28号◆癌研究ハイライト

同号原文

NCI Cancer Bulletin2009年07月28日号(Volume 6 / Number 15)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~

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癌研究ハイライト

・小児癌生存者における乳癌リスクを定量化
・サリドマイドは小細胞肺癌には役立たない
・腫瘍抑制タンパクの新しい役割の発見
・臨床試験に関する注意:学会抄録は最終発表と結論が異なる場合がある

小児癌生存者における乳癌リスクを定量化

NCI癌疫学・遺伝学部門のDr. Peter Inskip氏が主導する研究者らは、小児癌生存者研究(CCSS)の女性6,647人について、小児癌治療中に受けた放射線量と成人後の乳癌リスクの関係を推定する、この類の中では最大の研究を行った。結果はJournal of Clinical Oncology誌7月20日号に発表された。

一次癌に対して放射線治療を受けた女性は、全体として乳癌を発症する割合が2.7倍高かった。乳房内で腫瘍が発生した部位への放射線量が増加するにつれて、リスクは直線的に増加し、最大照射量(40グレイ)群におけるリスクは、非照射群に比べて11倍であった。

女性らは1970年から1986年にかけて、子供の頃に初発の癌の診断を受けた。2001年末までに120人が乳癌を発症し、自身の医療記録の再調査に同意した。研究者らは、120人の女性を1人ずつ、乳癌を発症していないCCSSのコントロール群の女性4人とマッチさせた。医学物理士は乳房と卵巣への放射線量を推定した。

興味深いことに、乳房に放射線照射を受けるとともに卵巣への放射線滅菌照射を受けた女性(卵巣ホルモンの産生が停止する)は放射線性乳癌リスクが著しく低かった。「乳房への放射線照射は、将来的に癌に発達しうる損傷を引き起こすが、癌になるかどうかは卵巣からのホルモン刺激の影響を受ける」と、Inskip氏は説明している。

ほとんどのタイプの小児癌において、1970年から1986年にかけて用いられたプロトコルに比較して、最近の放射線治療における放射線量はかなり低くなっていることに著者らは言及している。さらに、Inskip氏は「われわれはここでは治療の合併症を強調しているが、小児癌の治療に著しい進歩がみられたことを念頭に置くべきです。癌で死亡したかもしれない多くの子供たちが、治療の進歩のおかげで生存している」と続けた。

サリドマイドは小細胞肺癌には役立たない

化学療法にサリドマイドを加えても、小細胞肺癌(SCLC)患者の延命には寄与せず、体内深部の静脈に血栓の発生リスクは増大する、と英国の研究者らはJournal of the National Cancer Institute誌7月16日号で報告した。サリドマイドは腫瘍の血管新生、すなわち血管の成長を阻害する効果があるので、この疾患での評価が行われていた。肺癌の約20%を占めるSCLCにおいて、血管新生は重要な役割を担うと考えられている。

この薬剤は他の癌において患者の生存率を改善したが、SCLCにおいて血管新生阻害剤としての最初の第3相ランダム化臨床試験では全く効果は得られなかった。ロンドンのユニバーシティー・カレッジ病院のDr. Siow Ming Lee氏らは、724人を対象とした研究で、サリドマイド群と化学療法単独群のいずれにおいても生存期間は実質的に同等(約10カ月)であることを見出した。ただし、サリドマイド群では深部静脈血栓症や肺塞栓症などの血栓発症リスクが高かった。

さらに、進行性SCLCの場合には、サリドマイド群は化学療法単独群よりもよくない結果となった。多発性骨髄腫や大腸癌と同じように、SCLCでも血管新生を標的にできないのは、おそらく関与している血管新生の経路の違いによるものであろう、と研究者らは結論づけている。

サリドマイドが患者において抗血管新生作用をもつという概念は再考の余地があろう、と付随の論説で指摘している。しかしSCLCの生物学は依然として十分に解明されておらず、今は基礎研究に集中して新たな知見を導き、有望な治療標的を特定することが重要と考えられる、と著者らは示唆している。

腫瘍抑制タンパクの新しい役割の発見

体内で腫瘍を抑制する働きがあるp53タンパクのこれまで知られていなかった機能を、日本人研究者らが特定した。東京大学のチームは、p53が、遺伝子を調節する遺伝物質であるmicroRNAsを制御する働きがあることを明らかにした。P53タンパクの欠損は、抗癌作用をもついくつかのmicroRNAsの制御に影響を与える可能性があると、このチームは7月23日号のNature誌に報告した。

P53タンパクの遺伝子はすべての癌のうち半数で変異しており、p53経路はほとんどの腫瘍において不活化している。このタンパクは、DNA損傷を受けた細胞を腫瘍化させることなく、細胞自殺(アポトーシス)を起こさせたり成長を止める遺伝子を活性化することによって、癌を防いでいると考えられている。P53遺伝子に変異があると、細胞自殺の誘発や異常細胞増殖を抑制するmicorRNAsの制御などのいくつかの腫瘍抑制機能を同時に破綻させ得ることが、これまでの研究と合わせて、今回の新しい結果により示唆された。

同号掲載の論説によると、これらの結果は、単にDNA損傷や癌に対する細胞の反応だけでなくそれ以上の意味を持っているかもしれない。なぜならp53遺伝子の変異はmicroRNAの制御以外のRNA代謝の他の面にも変化を起こさせ得るからである。P53タンパクがどのmicroRNAを調節しているのかを正確に決定し、背後にある関係するメカニズムを説明することが、将来的に必要な研究である。

P53タンパクが機能しなくなった細胞において、p53遺伝子を再活性化する方法を探求している研究者らもいるが、これまでのところまだ成功していない。P53遺伝子を再活性化することにより、これまで認識されていなかった抗癌機能が修復されるということを、本研究は示唆している。

臨床試験に関する注意:学会抄録は最終発表と結論が異なる場合がある

癌治療に対するランダム化臨床試験の結果は、主要な学術学会において抄録という形でたびたび中間結果が報告される。しかし、最新の研究によれば、これらの抄録の結論は、査読がある雑誌で臨床試験研究者らによって発表される最終分析とは一致しないことがある。抄録と最終報告を比較すると、分析した臨床試験のうち約10%において、治療効果についての研究者らの結論は変更されていた。

最終ではない結果は、誤った方向に導き得るし、時には臨床試験の続きをどうするかにさえ影響する可能性を考えると、臨床医、研究者そして会議の主催者は、ランダム化臨床試験の結果を解釈するときには注意すべきであると、カナダ国立癌研究所臨床試験グループのカナダ人研究者らは先週のJournal of Clinical Oncology誌電子版で報告した。

研究者らは2000年~2004年までに発表された、4つの主要な癌(リンパ腫、乳癌、大腸癌、非小細胞肺癌)における138のランダム化臨床試験を評価した。各臨床試験について、1990年~2004年の間に開催された7つの主要な癌学会で発表されたそれぞれの抄録を特定して分析した。すべての抄録に治療効果が報告されていた。

「臨床試験の多くは、抄録の提示から最終発表までの間に、結論に大きな変化がみられるものだ。このことは、臨床医はランダム化臨床試験の中間結果にもとづいて診療を変更する際には慎重になる必要があることを意味している」と、クイーンズ大学癌研究所の主任研究者であるDr. Christopher Booth氏は述べている。

同様に重要なことは、抄録の著者は、結果が最終ではないということを明確にする責任があることだと、南フロリダ大学とH.リー・モーフィット・がんセンターおよび研究所に所属し、臨床試験について研究しているDr. Benjamin Djulbegovic氏はコメントしている。「要するに、これらの抄録内容を利用する人が、その結果はまだ予備的なものであることがわかるようにする必要がある。」

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杉田 順吉、野長瀬 祥兼 訳

中村 光宏(医学放射線/京都大学大学院)
後藤 悌(呼吸器内科医/東京大学大学院) 監修

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