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タルク末が肺癌の増殖を止める/フロリダ大学

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タルク末が肺癌の増殖を止める/フロリダ大学

原文
タルク末が肺癌の増殖を止める
フロリダ大学 2007年6月6日

フロリダ州ゲインズビル― タルク末は何代にもわたって、赤ん坊のオムツかぶれを治し、女性の顔をリフレッシュするのに使われてきた。しかし、フロリダ大学の研究者らは、この家庭用品がさらなる治療力、すなわち転移した肺癌への血流を遮断することにより、癌の増殖を抑える能力があることを報告した。

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4月のEuropean Respiratory Journal誌に発表された本研究では、タルクが正常な細胞のエンドスタチン(転移性肺癌を治療する魔法の弾丸と考えられているホルモン)生産を促進していることがわかった。フロリダ大の研究者らは、タルクは広く治癒不可能と思われている癌に対し、非常に興味を引く、新しい治療薬であると述べている。

「驚くことに、われわれはタルクが腫瘍の増殖を遅らせること、そしてその際に、腫瘍の大きさを減少させることを発見した」と、呼吸器科の教授でありフロリダ大学医学部の呼吸器内科学の主任であるVeena Antony医師は述べた。

「タルクは新しい血管の形成を妨げることができ、その結果、腫瘍を殺し、その増殖を停止させる。腫瘍は明らかに増殖が遅くなり、いくつかの症例では完全に消えてしまった。」

この鉱物は、転移性肺癌に付随する呼吸器症状を治療するために、約70年も使われていたにもかかわらず、研究者らはごく最近になってタルク末が腫瘍の増殖を妨げることを発見した。癌患者の約半数は悪性胸水として知られる肺表面の周囲に水が溜まる状態となる。

「この水は肺を押し下げて患者の呼吸を阻害し、患者にひどい息切れを感じさせる原因となる。」と、Antony医師は述べた。

胸水の存在は、乳房・肺・消化管などから発症している癌が、体全体に広がっていることを示す。およそ200,000人の患者がこの状態にあり、その予後は不良であり、多くは6カ月以内に死亡する。

これらの患者が苦痛を耐えられるようにするために、医師らは肺と胸郭の隙間(問題をおこす液が貯留する場所)を埋める。このコツとしては、肺側・胸郭側の両方の表面を癒着させることだ。組織を刺激し、細かい擦り傷を作るために、タルクを患者の胸郭に吹きつける。すると、肺組織が治癒する際、患者の呼吸を阻害することなしに胸壁に永久に癒着する。この方法による効果はタルクによる胸膜癒着術を目的とする局麻下胸腔鏡検査と呼ばれ、即効性があると同時に永久性でもある。

「呼吸困難での死亡は悲惨です。」と、Antony医師は言った。「この方法は患者と、愛する者が苦しむさまを見る家族の辛さを和らげます。ヨーロッパでは非常に多く使われてきましたが、(米国では)わずかしか浸透していません。おそらく新しい技術を学ばなくてはならないからでしょう。」

米国食品医薬品局(FDA)では、2003年にタルクの局麻下胸腔鏡検査での使用を認めてきた。しかしながら、それを外来で日常的に行なう米国の医療施設は数えるほどであり、フロリダ大学はそのうちのひとつである。

医師らはタルク末を使用した局麻下胸腔鏡検査を受けた患者らは、予想よりも最長で18カ月長く生存したことを見出した。その理由を探るため、Antony医師は悪性胸水のある16人の患者で、彼らの肺にタルクを入れる前後での胸水を比較した。その結果は驚くべきものだった。

「タルクが肺周囲に傷を作り、周りを覆っている水を取り除くという効果だけではなく、肺の上皮を覆っている細胞がタルクの存在により刺激を受け、血管新生を防ぐ因子を産生し、癌細胞そのものを殺すのです。」とAntony医師は述べた。

タルクによる治療から1日経たずして、患者らは健康な肺細胞によって分泌されるエンドスタチンを、通常の10倍以上産生しはじめた。エンドスタチンは血管新生を妨げ、細胞の増殖と運動を遅らせ、そして近くにある腫瘍細胞の自殺を促しさえする。これらすべては、肺癌の増殖と健康な肺組織への広がりを困難にしている。

1997年に初めてエンドスタチン(*下記参考記事参照)が発見されたとき、医師らはこの腫瘍攻撃性が癌の治癒につながることを期待した。しかしおそらく多くの臨床家らが直接このホルモンを患者へ注入したため、臨床試験の結果は失望するものであった。このホルモンは癌の進行を遅くする以前に体内で分解してしまう、とAnrony医師は言った。

「それは存在したが、半減期は非常に短く、消滅してしまった。」とAntony医師は言った。「われわれが行ったのは、通常の胸膜中皮細胞にエンドスタチンを産生させ続けることでした。タルクはなくなりません。タルクは胸腔内にとどまり、正常細胞に腫瘍増殖を阻害する因子を絶えず分泌させるのです。」

タルクの抗腫瘍効果は長期的だ、とタルクによる胸膜癒着術を受けた患者の長期における治療成績を調査し続けているAntony医師は言った。

「これほど安価で、安易に利用可能な、昔からの製品が、患者に利益をもたらし、おそらく患者を延命させることに驚いています。」と、Antony医師は述べた。

ロサンゼルスメディカルセンター内ハーバー大学で呼吸器内科および救命救急臨床教授のYossef Aelony医師は、フロリダ大の研究結果は重要で画期的な出来事になると語った。

「この研究は、肺癌・中皮腫・胸膜表面に起こる転移性腺癌などの胸部の悪性疾患の治療に関わる将来の臨床試験に間違いなく大きな影響を与えるだろう」と、Aelony医師は述べた。

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サイト内参考資料:[siteurl=modules/words_nci/entry.php?entryID=119&categoryID=0]NCI薬剤情報 タルク[/siteurl]
[siteurl=modules/cancer_reference/index.php?page=article&storyid=255]エンドスタチン[/siteurl]

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根本明日香 訳
島村 義樹(薬学)監修

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