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最新の乳癌治療薬が心臓を保護すると研究で示唆される/デューク大学

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最新の乳癌治療薬が心臓を保護すると研究で示唆される/デューク大学

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最新の乳癌治療薬が心臓を保護すると研究で示唆される
デューク大学医療センター* 2007年6月8日

ある乳癌治療薬がどのように心臓を保護し、そして別の乳癌治療薬が保護しないかを解明することによって、起こりうる心臓の副作用を発症するかかどうかのスクリーニング方法、および新しい治療薬開発の可能性を見つけたかもしれない、とデューク大学医療センターの研究者らは考えている。

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デューク大の研究者らはヒト細胞とラットを使用した実験で、2種類の乳癌治療薬の作用を比較した。比較されている治療薬は、従来の治療薬トラスツズマブ、商標名ハーセプチンと、最新の治療薬ラパチニブ、商標名タイカーブ〔Tykerb〕である。

試験の結果は全米科学アカデミー会報オンライン速報に掲載されている。

主なトラスツズマブの副作用は心筋細胞の損傷である。心臓の異常がトラツズマブを使用する女性の2%から7%で検出された。また、10人に1人は先在心臓疾患により、心臓障害の危険度が増大するため、トラツズマブを使用することが不可能である。これまでのところラパチニブ治療による心臓への影響は少ないようである。

両治療薬は癌性乳腺細胞にHER2が過剰発現する女性に処方されている。4人に1人の女性乳癌患者がこの過剰発現遺伝子を保有しており、癌再発の増加や、転帰不良に関係している。トラツズマブ治療に奏効しない女性への使用に、ラパチニブは3月上旬に承認された。

トラツズマブは、侵襲性の最も強い型の乳癌の女性患者にとって有効的な治療方法となり、HER2陽性乳癌患者の治療を激変させた、と第一著者であるデューク大腫瘍医Neil Specter医師は述べた。現在、標的を同じとする2種類の薬剤があり、双方とも癌に対して効果的である。しかし、一方はこの予備研究によると、心血管障害の原因となる可能性が高い。

「前臨床実験における知見の報告であることを明確にすることが重要である。2つの薬剤の相違が示唆されているが、トラツズマブを服用している女性が治療の変更を検討しなくてはいけないと結論づけるのは試験の過大解釈である。」、とSpector医師は述べる。
「この論題の解明には適切にコントロールされた臨床試験の実施が重要である。」

乳癌との関連に加えて、HER2は心筋細胞の初期発達とその後の維持に必須である。トラツズマブのHER2阻害メカニズムは異なっている。

「ストレスによる『細胞の自殺作用』から心臓細胞を保護する重要な経路を、ラパチニブが活性化させることがわかった」とSpector医師は続けた。心筋細胞は適切に機能するために、多大なエネルギー量を必要とするため、酸素や栄養供給量の減少によるエネルギー欠乏には、非常に過敏である。加えて、心筋細胞は炎症の壊死促進作用にも過敏である。

摘出した人間の心筋細胞での実験により、癌患者、特に心臓組織を破壊する化学療法を受けた患者で活発化する、炎症の壊死促進作用から心筋細胞を保護する経路をラパチニブが活性化することが示唆される。対照的に、トラツズマブはこの保護経路を活性化しない。

現在トラツズマブとラパチニブの併用を研究している臨床試験で、心筋細胞に対するラパチニブの効果が、トラツズマブに起因して起こりうる心毒性から心臓を守る可能性があると、Spector医師は付け加えた。

ラパチニブが、化学療法や、心臓発作時の酸欠による心筋細胞のストレスにさらされた時に、ラパチニブがどのように心血管の保護しているかの知見は、他の状況でも応用可能かもしれないとSpector医師は述べた。

この仕組みを利用することで、開発段階の薬剤を心筋細胞に影響があるか理論的に選別することができる、とSpector医師は述べた。「心血管系副作用が少ない、患者に安全な薬剤候補を選択することも理論的に可能だ。この方法で、薬品が市販されるよりずっと早くに、潜在的問題を発見することが可能となった。」

加えて、心臓発作、冠動脈バイパス手術、血管形成手術の最中のように心臓がストレスにさらされている状況で、保護剤として使用できる類似薬品の開発の可能性がある、とSpector医師は述べた。このような薬剤は、移植のために摘出された心臓の心臓機能を保存するためにも使用できるかもしれない、と彼は述べた。

試験はデューク大学総合がんセンターによって一部支援された。

試験チームのメンバーは以下のとおりである。
Wenle Xia, Duke; Yosef Yarden and Rony Seger, Weizman Institute, Rehovot, Israel; Bradley Smith, Cell Signaling Technologies, Beverly, Mass.; and Ljuba Lyass, Patricia Trusk, Karen Pry, Jason Hill and Sarah Bacus, Targeted Molecular Diagnostics, Westmont, Ill.

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下和田篤子 訳
林 正樹(血液・腫瘍医)監修

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