2009/09/08号◆スポットライト「緩和ケアにおける苦悩と前進」 | 海外がん医療情報リファレンス

2009/09/08号◆スポットライト「緩和ケアにおける苦悩と前進」

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2009/09/08号◆スポットライト「緩和ケアにおける苦悩と前進」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2009年09月08日号(Volume 6 / Number 17)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~

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スポットライト

緩和ケアにおける苦悩と前進

バージニア州立大学(VCU)の医療センターでは3年目の研修医と看護師の有志が『心配り訓練(Mindfulness training)』という新たな試みに取り組んでいる。瞑想を取り入れた3カ月間の試験的なトレーニングは、命の終わりを迎えようとしている患者との接し方に役立つようにと作られている。

「終末期医療における感情面の問題にもっと意識を向けるように臨床医らを訓練しています。われわれの目的は、患者やその家族が感情的に不安定である時期に心理社会面での必要に臨床医が応える能力を高めることです」と、このプログラムのリーダーで、VCUのSocial and Behavior Health部門のDr. Amy Sullivan氏は述べた。

VCUのマッセーがんセンターの癌専門医で、緩和ケアプログラムのリーダーでもあるDr. Thomas Smith氏は、医師と患者のコミュニケーションを改善することも目的の一部であると加えた。Smith氏は「医師は、患者の訴えを約17秒でさえぎってしまう」と述べる。

コミュニケーションを改善することは重要である。医師と患者のコミュニケーション不足は、治療成績を悪くするとともに、終末期でのより積極的な治療の実施に結びついていることが試験で明らかになっている。

このような訓練プログラムは緩和ケアの発展においては小さな1歩にすぎない。緩和ケアの成長と変化は、特に腫瘍学においては顕著であって、この分野では、高齢化による発癌率の増加で緩和ケアの必要性が高まると予想される。今日では、緩和ケアはInstitute of Medicine(米国医学研究所)およびWHO(世界保健機関)により医学的専門分野として価値と重要性が認められている。緩和ケアにより、患者とその家族の治療に対する満足感だけでなく患者の症状やQOLも改善されることが示されている。去年発表された緩和ケアに関する最も大規模試験では、緩和ケアによる著明な費用削減効果が示されたが、その一端は、集中治療室における治療頻度が減ることにあった。

「このようなデータや認識があっても、緩和ケアが可能かどうかやその役割は病院によってさまざまであり、また病院の規模によっても緩和ケアプログラムに対する資金はまだ限られています」とニューヨーク州のマウント・サイナイ医療センターで最先端緩和ケアセンター(CAPC)の所長であるDr. Diane Meier氏は述べた。それでもこの10年で緩和ケアの分野は大きく成長し、この成長が希望となっている。

「われわれの目標は、深刻な癌との新規診断を受けたすべての患者が、治療を行う癌専門医と緩和ケアの専門家合同チームによる治療を同時に受けることです。患者が診断、病気によって起こる症状、治療の副作用のすべてについて、可能な限り良好なQOLを保って対処できるように助けること、これこそが、「同時ケア」コンセプトであり、緩和ケアの最良で最も適切な形です。しかしながら、ここまでたどり着くには時間がかかるでしょう」と彼女は述べた。

誤解の一掃

緩和ケアが医療行為として浸透するにはたくさんの障壁があるが、おそらく最も大きなものは未だに緩和ケアがホスピスや終末期医療としばしば全く同一視されていることであろう、とNCIの癌予防部門の緩和ケア研究のリーダーであるDr. Ann O’Mara氏は述べた。例えば、最近5年間の間に、メイヨークリニックに緩和ケアの相談窓口へ受診に来た患者について調査を行うと、緩和ケアに対する全紹介患者数は増えているが、癌患者が緩和ケアを紹介受診してから死亡するまでの時間は、33日から11.5日と半分に短縮していた。包括的な緩和ケアプランを作成するのに2日ほどしかなかったと、この研究の著者は述べている。

フィールドレポートにあるように、この誤解を一掃するにはたくさんの厄介な問題がある。医学部でのトレーニングがないことがひとつであるが、これについては、改善傾向にあることが研究により示されている。他の問題として、癌専門医が診察に割ける時間が短いことや、保険診療支払いの問題などがある。

コミュニケーション不足というのもある。「緩和ケアチームが癌専門医、研修医、フェローにその有用性をいかにわからせるかにかかっています。「われわれはあなた方が対応に苦慮している症状や問題を抱えている患者のケアをお手伝いするために存在する」ということをわからせるのです。予後が良好な患者であったとしても、多くの症状、心理学的問題、精神的問題があるかもしれません。そのときに緩和ケアサービスはこういった問題をうまく取り扱うことができるのです」とO’Mara氏は述べた。

形勢の変化

「そうは言っても、状況は緩和ケアに好意的に変化してきています。癌専門医およびその他の臨床医の間での緩和ケアに対する評価は、以前と比べて現在が最も高くなっています。メイヨークリニックのデータにもかかわらず、全国的な傾向としては、病気の経過中のより早期に緩和ケアへの紹介が行われるようになってきています」とMeier氏は述べた。

VCUやMt.Sinaiのような10年以上にわたって緩和ケアの最前線にいる施設においては、緩和ケアというものが医療スタッフに浸透し、懸命に取り組み、成功している。

Smith 氏を含むVCUの癌専門医4名はホスピスまたは緩和ケアの認定医である。緩和ケアのコンサルトは、われわれの癌治療に深く入り込んでいる。緩和ケアを始めたころは、しばしばホスピスに紹介される直前になってコンサルトを受けていた。現在では、病気や治療でひどく苦しんでいる患者や院内でまさに死に向かっている人のケアを行っている」とSmith氏は語った。

それにもかかわらず、どの程度、緩和ケアを患者に提供できるかについては、癌専門医の習熟度曲線がある。緩和ケアプログラムがコンサルトとして運用されているという事実が一部関係しているようだ。

コンサルタントとしてのわれわれの目標は、われわれを紹介した癌専門医が、われわれにどのように関わるように求めるか、によって決められる。コンサルトを求められたら、緩和ケアチーム、すなわち専門看護師、心理カウンセラー、ソーシャルワーカー、マッサージ療法士、他のメンバーを含む専門家合同チームが患者と面会し、癌専門医に提言を行う。

緩和ケアスタッフがコンサルタントとしての役割を逸脱しないようにすることが重要である、とテネシー州ノックスビルから20マイルほど離れたところにある地域病院であるブラウント記念病院で緩和ケアプログラムを統括する癌専門医であるDr. John Cowan氏は主張する。

「治療している医者が、緩和ケアの必要性や他の選択肢についてのディスカッションに加わってほしい。もし彼らが関心を持たなければ、われわれの提言に従うこともないでしょう。」とCowan氏は述べた。

より大規模な大学附属病院のように、ブラウント記念病院での緩和ケアプログラムも、2000年に導入されてからかなり成長している。現在、緩和ケアチームは、よりケアに深くかかわっているが、もっと早い時点でのケアに根付くようにと奮闘を続けている、とCowan氏は述べた。

その葛藤の一部は、(エビデンスが示唆するところでは普遍的な問題であるが)患者に由来していると言っていいかもしれない。患者は自分の病気を治癒させることから外れる話に抵抗を示すことが多い。「患者は病気を治療することに重きをおいており、症状や他の問題を過小評価しがちである」とCowan氏は認めている。

また、患者は痛みや他の症状について話し合うことを避けるかもしれない、とO’Mara氏は付け加えた。何らかの変化は、病気の悪化を示している、あるいは治療の変更につながるのではないか、という恐怖のためである。

現在行われている緩和ケアの価値をさらに詳細に示し、緩和ケア実施の改善を目的とした研究に加えて、CAPCおよびその他のグループは、この分野の成長を妨げる主要な要因、医大でのより多くの訓練時間枠と教員の確保を主張している。

緩和ケアによるケアの質とビジネスとしての質の問題がある。変化によってこの分野の発展を促されるとMeier氏は信じている。「より多くのがんセンター、病院に理解してもらい、癌治療グループに緩和ケアの専門家がスタッフとして迎え入れられることを望んでいます。これにより、コンサルトのために電話する必要がなくなるのです。緩和ケアはがん治療グループが提供する中心的サービスの一部となるでしょう」と彼女は述べた。

―Carmen Phillips

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舛田 理恵 訳

吉原 哲(血液内科・造血幹細胞移植/兵庫医科大学病院)監修

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