2010/06/29号◆スポットライト「癌サバイバーに対する運動推奨ガイドライン」 | 海外がん医療情報リファレンス

2010/06/29号◆スポットライト「癌サバイバーに対する運動推奨ガイドライン」

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2010/06/29号◆スポットライト「癌サバイバーに対する運動推奨ガイドライン」

同号原文
NCI Cancer Bulletin2010年6月29日号(Volume 7 / Number 13)


日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中〜

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◇◆◇ スポットライト ◇◆◇

癌サバイバーに対する運動推奨ガイドライン

癌、フィットネス、肥満および運動の専門家13 人からなる委員会は、癌患者や癌経験者に対する最も重要なメッセージの1 つとして「運動不足の回避」であると発表している。

同委員会は、積極的な癌治療を受けている患者および治療を終了した後の患者を対象とした運動や身体活動に関するガイドラインを作成するため、米国スポーツ医学会(ACSM)により昨年招集された。

ペンシルベニア大学アブラムソンがんセンターのDr.Kathryn Schmitz 氏によると、同委員会は、このような患者集団に対して運動や身体活動を推奨することに加え、ガイドライン作成というもう1 つの目標があった。Schmitz 氏は、「治療中や治療直後の患者を対象とした運動プログラム(心臓リハビリテーションと同レベルの癌リハビリテーションプログラム)を作成することの必要性について、より多くの議論がなされることを期待します」と述べた。

Schmitz 氏によると、運動の有益性は多くの癌症例で証明されており、例えば生活の質に直接影響する倦怠感や身体機能の分野で認められている。生存が最終的な評価項目である一方、米国では推定1200 万人の癌サバイバーがいてその数も増加しているなか、生活の質の改善の重要性が急速に増している。

NCI 癌制御・人口科学部門のDr. Rachel Ballard-Barbash 氏は、積極的治療を受けている患者や治療を完了した患者における身体活動とQOL 改善を結びつけるエビデンスは「非常に強い」と述べた。

最も頑強なエビデンスは、積極的な癌治療を終了した患者にて認められている。こう述べるのは、癌患者を対象とした身体活動に関する多くの臨床試験を主導しているアルバータ大学のDr. Kerry Courneya 氏である。しかし、同氏によると、試験デザインの相違やその他の要因のため、積極的治療を受けている患者に関する所見と治療を完了した患者に関する所見を比較することは困難である。

最近のASCO 年次総会における運動と癌に関する教育セッション中、Courneya 氏は「患者は化学療法や放射線療法を受けているときでさえ、われわれの元来の想定を超えた多くのことを行うことができると判明しました」と述べた。

Ballard-Barbash氏は、「これは重要なことで、短いウォーキングなど、適度な運動でさえ有益です。何もしなければ利益は得られません」と強調した。

ガイドラインの作成

Medicine & Science in Sports & Exercise誌2010年7月号に公表された本ガイドラインは、2008年に発行されたHHSのPhysical Activity Guidelines for Americans(米国人の身体活動ガイドライン)に続くものである。ただし、頻度の高い副作用などの因子をもつ種々の癌を有する患者に運動を適応すると骨折や心臓に関する副作用などが増加すると、同委員会は示唆した(補足記事を参照のこと)。

しかし、運動に関する特別な推奨事項(運動訓練を実施する対象と目標など)や禁忌事項は、乳癌、前立腺癌、大腸癌、婦人科癌および血液腫瘍を有する患者のみしか対象としていない。というのは、それらの癌については推奨事項の十分なエビデンスが認められていると、委員会が判断しているからである。

運動に関する主要目標のうちガイドラインで強調されている2 項目は、身体イメージの改善と身体組成の改善である。前者については、癌患者の多くは広範囲の手術や治療を受けるため、外見が変化し、性的魅力などに関する印象が根本的に変化する可能性がある。Schmitz 氏は、「身体活動によって身体イメージが改善され、またそれは運動によってQOL が改善されるメカニズムの1 つかもしれないという良いエビデンスがが文献のなかにあります」と述べた。

身体組成の変化は多くの癌患者でよくみられるが、その理由は癌の発症部位によって異なる。消化管癌や頭頸部癌などでは、一般的に身体衰弱(体重や筋肉の減少)を伴うことから、椅子から立ち上がることが困難になる患者もいる。このような患者集団では、細くなった筋肉を強化する運動が重要である。

しかし、乳癌については身体活動に関する多くの試験が実施されているが、患者が受けることの多い全身的治療によって過剰に体重が増加する場合がある。Schmitz 氏によると、このような患者では、「体重を管理して脂肪を落とし、正常なBMI 値に戻すうえで有用な」運動が重要である。

また本ガイドラインでは、乳癌や大腸癌を対象として治療後の定期的な運動で無増悪生存期間や全生存期間が延長することを示す補足的エビデンス(確かなエビデンスではない)を記載している。Schmitz 氏は、この分野でデータが示され続ければ、運動の実施は「治療に補助的なもの」となるであろうと述べた。

しかし、Courneya 氏によると、現時点で結論は出ておらず、データは「興味深い」が「まだ試験的段階」である。

運動の実践

身体運動を治療やサバイバーシップ計画に積極的に取り入れる前に対処すべき多くの問題がある。例えば、運動に関する保険適応、運動の有益性に関する癌専門医、他の医師および患者への教育、癌患者や癌経験者の直面する問題や必要性を理解するフィットネス専門家の派遣などがあげられる。

アイダホ州ボイシ在住のトレーナーMarilyn McAllister 氏は、自身のスタジオや現地の医療機関で乳癌患者に指導しているが、同氏の見解によると、運動や癌を取り巻く環境は改善しているが、さらに進歩が必要である。同氏のこれまでの経験では、医師は日常の患者対応で「非常に忙しく」、運動について研究したり患者と話し合ったりすることができない場合が多い。同氏は「患者は治療開始当初、情報に困惑してしまうため、ヨガやストレッチ運動の情報を用紙で手渡してもほとんど無意味なのです」と述べた。

癌専門のトレーニングを受けたフィットネス専門家の派遣を拡大しているいくつかの先駆的活動もある。ACSM や米国癌協会(ACS)では、癌患者や癌経験者の指導を望むトレーナーを対象とした承認プログラムを設けており、Schmitz氏は、ACSMによる新規の6セッション癌運動トレーナー認証「Webinar」の開設を援助している。さらに、ランス・アームストロング財団はYMCAと提携し、癌サバイバーのニーズを満たした指導を行うため、国内のYMCAにてフィットネススタッフの訓練を援助している。

ACSM/ACS認証癌トレーナーであるMcAllister氏によると、誰に対してもフィットネスの手助けすることは喜ばしいことであるが、癌患者や癌経験者への指導にはさらに他にはないメリットがあるという。「すべての人は運動から利益を得ますが、癌患者の場合それは非常に劇的です。患者の生活に大きな変化をもたらすうえで多くのトレーニングは必要ないのです」と同氏は述べた。

状況に合わせた適応癌の種類によって、受ける治療も様々である。そこで、ACSM ガイドラインでは、癌患者/経験者および患者らを指導するフィットネス専門家が考慮すべき事項を指摘している。例えば、前立腺癌に対するアンドロゲン除去療法を受けている男性では、トレーナーは骨折のリスクを認識し、運動を適宜調整する必要がある。またMcAllister氏によると、乳癌女性では手術を受けている場合が多く、肩関節が弱くなりうることから、ガイドラインでは、肩関節周囲筋を安定化および強化するための運動を推奨している。Schmitz 氏は、運動の有益性は明らかであるが、特に積極的治療の最中は「状態が悪すぎて運動が不可能な場合がある」と述べる。Ballard-Barbash 氏も同意見。「患者にとって運動に耐えるのが困難な場合、しばらくの間は運動量を減らすかまたは数日間休んでから運動を再開する必要がある」と述べた。

—Carmen Phillips

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齊藤 芳子 訳
九鬼 貴美 (腎臓内科)監修

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