2009/09/22号◆クローズアップ「天然物の生物活性を利用する」 | 海外がん医療情報リファレンス

2009/09/22号◆クローズアップ「天然物の生物活性を利用する」

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2009/09/22号◆クローズアップ「天然物の生物活性を利用する」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2009年09月22日号(Volume 6 / Number 18)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~

PDFはこちらからpicture_as_pdf ____________________

クローズアップ

天然物の生物活性を利用する

数多くの薬草類や、栄養補助食品、さらにビタミンさえもが、化学療法や放射線療法に干渉する可能性を疑われており、現在は医師が癌治療を受けている患者にこれらの製品をできるだけ摂取しないようアドバイスするのが普通である。

その一方で、癌研究者は一部の天然物が示す強力で有用な生物活性に注目しており、標準治療や実験的治療のレジメンにそれらの天然物を組み込み、抗癌効果を高め、なおかつ副作用を減らすような方法について試験を行っている。

1,700年の時を越えた治療法が開発中

エール大学医学部の薬理学教授、Dr. Yung-Chi Cheng氏は中医(伝統的な中国の漢方医学)で使用される薬草の配合に関心を持っている。同氏の研究室では他のプロジェクトも進めながら、下痢、吐き気、嘔吐などの胃腸系症状を治療するために中医で1,700年以上も用いられてきた薬草の配合(黄ごん湯)を理論的に再構成した。

再構成した配合薬はPHY906と呼ばれ、当初は化学療法における胃腸の副作用を軽減できないかと試験を実施しており、初期の小規模な臨床研究では、イリノテカンおよび5-フルオロウラシルの投与を受けた結腸癌患者の副作用を軽減することに成功している。

Cheng氏らはまた、動物試験でこの配合薬とイリノテカンを併用し、抗癌作用が相乗的に高まることを観察した。これは驚くべき結果であるとCheng氏は述べている。

PHY906単独では結腸癌に対する効果は全くなかったが、イリノテカン+PHY906はイリノテカン単独に比べ高い抗癌活性を示した。現在、PHY906は伝統的な化学療法薬との併用による抗癌活性の可能性があるとして3件の臨床試験が進行中である(大腸癌を対象とする試験では現在も患者を登録中)。

これと前後して、PHY906と化学療法薬の併用効果について分子学的メカニズムを解明するため、Cheng氏らは米国国立衛生研究所(NIH)臨床センターの感染症・免疫遺伝学部門長であるDr. Francesco Marincola氏と共同研究を実施している。Marincola氏はマウスモデルを用いてPHY906および化学療法剤を投与した後の遺伝子発現量の変化を調べている。

共同研究の暫定的な結果では、「PHY906と化学療法薬を併用すると、免疫療法で癌細胞が拒絶されるときに観察されるのと同様の強い炎症反応を起こすことが示されました」とMarincola氏は話した。「PHY906は癌に対する免疫応答を起こすことで化学療法の効果を増大させるのかもしれません」

スーパーから医療現場へ

長く使ってきた歴史のある薬草類は、現代医学で利用の可能性があるとして研究が進められている天然物の一つである。一方、日頃の食事で摂取される食品の中にも分子レベルで体内の働きに影響を及ぼす可能性を持つものがある。癌治療への新しい適用法が研究されている食品のひとつがグレープフルーツジュースである。

グレープフルーツジュースはビタミンCおよびカリウムが豊富ということで広く消費されているが、医師の目にはとても無害とはいえない飲み物であると映っている。グレープフルーツジュースにはフラノクマリンという化合物の一群が含まれており、これは消化器系や肝臓にあるCYP3A4という酵素の働きを阻害する。

そのため、通常CYP3A4酵素により代謝される薬剤をグレープフルーツジュースとともに摂取した場合、体内に高い濃度で長く残ることになる。血圧の薬や、抗うつ薬、HIV用の抗レトロウイルス薬などの一部では過剰摂取となってしまう可能性がある。

一方、シカゴ大学では免疫抑制剤であるラパマイシンの抗癌剤としての研究に興味を持つ研究者らがグレープフルーツジュースが持つ特定の薬剤の代謝を遅らせる効果に着目している。

ラパマイシンは生体利用性が極めて低く、経口摂取で体内に吸収されるのは15%以下である。そのため「必要な血中濃度を達成するために高用量のラパマイシンを投与する必要がありました」とシカゴ大学医療センターのDr. Erza Cohen氏は説明した。高用量で投与すると、過剰なラパマイシンが小腸を通過することにより重篤な下痢などの望まれぬ毒性が発揮されてしまう。

ラパマイシンが血流に達するまでの時間をかせぐ方法を探していたCohen氏らは、グレープフルーツジュースと同時に投与することを思いついた。

今年の米国癌学会(AACR)の年次集会において、成果が有望視される第1相臨床試験が発表されている。この試験では進行性かつ難治性の固形腫瘍患者28人に対しラパマイシン+グレープフルーツジュースが投与され、患者のうち7人が病勢安定に達し、1人は1年を超える治療で部分奏効に達した。

グレープフルーツジュースを同時投与することで得られた追加の効用として、これまでラパマイシンは毎日投与であったものが週1回の投与で済むようになり、治療費が大きく削減されたということがある。

「経口摂取による生体利用性が低い、吸収率の低さと関連して副作用が発生する、高価であるなどの理由で、このアプローチが有効となる抗癌剤は多数あると思います」とCohen氏は述べた。安全性については今なお調査中であるため、臨床試験以外の場ではグレープフルーツジュースと化学療法剤を混ぜないようにとCohen氏は強く警告している。

– Sharon Reynolds

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橋本 仁 訳

鵜川 邦夫(消化器内科医/鵜川病院)監修

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