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2009/09/22号◆癌研究ハイライト

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2009/09/22号◆癌研究ハイライト

同号原文

NCI Cancer Bulletin2009年09月22日号(Volume 6 / Number 18)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~

PDFはこちらからpicture_as_pdf ____________________

癌研究ハイライト

・糖尿病薬メトホルミンは乳癌治療に有望
・ホルモン補助療法が肺癌の死亡リスクと関連
・高悪性度の前立腺癌に関連する最新ウイルス
・脂肪細胞は白血病に対する化学療法を阻害
・B型肝炎ワクチンは肝臓癌のリスクを低下させる

糖尿病薬メトホルミンは乳癌治療に有望

一般的な糖尿病治療薬であるメトホルミンの少量投与は、乳癌治療に有効である可能性があり、それはこの薬が乳癌幹細胞を標的とするからかもしれないという報告が、ハーバード大学医学部の研究者らによってCancer Research誌の電子版9月14日号に掲載された。癌幹細胞は癌源細胞とも呼ばれており、新たな腫瘍発現を引き起こすほか、標準的な癌治療に抵抗性を示す比較的稀な細胞であると考えられている。

今回の研究では、ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)陽性およびトリプルネガティブ乳癌をはじめとする遺伝学的に異なる4種類の乳癌培養細胞株の癌細胞および癌幹細胞を死滅させるという点で、メトホルミンと化学療法剤ドキソルビシンを併用したほうが、いずれかを単独投与するよりも高い有効性が得られる結果となった。乳癌マウスモデルでは、同2剤を併用投与することで腫瘍を死滅させ、再増殖が防止された。これに対し、ドキソルビシンの単剤投与では腫瘍の縮小はみられたものの、再増殖を妨げることはなかった。また、メトホルミンの単剤投与では、ほとんど効果がなかった。

今回の研究について筆頭著者のDr. Kevin Struhl氏は「2剤を併用することで、腫瘍縮小がより速くなり、さらに重要なことに再発することがなかった」と記者会見で述べている。

3サイクルの治療後にマウスから腫瘍を摘出して細胞集団を分析したところ、併用療法を受けたマウスから癌幹細胞が検出されることはほとんどなかったが、ドキソルビシン単剤療法を受けたマウスの腫瘍では癌幹細胞が容易に検出された。Struhl氏は、併用療法では高い薬効が得られることと、いずれかの単剤療法では治療効果が少ないことから、癌幹細胞の仮説が裏づけられるとしている。

今回の研究には関与しなかったハーバード大学の乳癌研究者Dr. Jennifer Ligibel氏は、今回の結果は既報の疫学研究や基礎研究で示唆されてきたメトホルミンの抗癌効果を裏づけるものである、と記者会見で述べた。この結果をうけて、早期乳癌患者に標準治療を行ったあとにメトホルミンを投与することで、転帰が改善するのかどうかを、今後大規模な第3相臨床試験で検証することになる。この臨床試験は、NCI(米国国立癌研究所)の助成を受け、カナダの国立癌研究所の調整によって実施される。Ligibel氏によれば、試験研究者らは来年にも患者の登録開始を希望しているという。

ホルモン補助療法が肺癌の死亡リスクと関連

更年期障害を治療するためにホルモン併用療法を受ける女性は、肺癌により死亡するリスクが高まる可能性がある。女性健康イニシアティブ(WHI)のデータ解析研究では、エストロゲン+プロゲスチンの併用療法によって、肺癌の発症率は上昇しないものの、肺癌に起因する死亡数は増え、主に非小細胞肺癌でその傾向が強かった。成果は、Lancet誌電子版の9月18日号に掲載された。

試験責任医師でハーバーUCLAメディカルセンターロサンゼルス生物医学研究所のDr. Rowan Chlebowski氏は、「エストロゲン+プロゲスチン併用療法により、比較的短期間で新規の致死的副作用が起こり得ることを見出した」と述べている。この治療を考慮に入れている閉経後女性で、特に現在喫煙中または過去に長期喫煙経験がある女性は、そのリスクを認識する必要があると同氏は補足した。

ホルモン併用療法を受けていた女性のほうが、受けていなかった女性よりも乳癌リスクが高まることがわかったことから、2002年にWHIの研究は予定より早く終了した。これ以降の研究で、ホルモン補助療法の中止後も、乳癌リスクの上昇は持続し、ホルモン投与で乳癌の検出が妨げられることが示されており、1年間以上にわたり乳房X線像が異常を示す女性もいる。ホルモン補助療法は、卵巣癌のリスク上昇とも関連している

同研究者らは、新たな知見を説明し得る機序として、エストロゲンが血管の成長(血管新生)を刺激する能力を有することの可能性が考えられるとして、肺癌と乳癌治療において腫瘍血管の成長を妨げる治療戦略が用いられることに言及した。肺癌による死亡のもう1つの要因は、乳癌と同様、ホルモンが肺腫瘍の検出を遅延させたかもしれないと考えられる。

付随論評では、肺癌に罹るリスクのある女性はホルモン補助療法を回避すべきであるとする意見で一致しており、この治療が「今日の医学で何らかの役割を担っている」のかどうか疑問視している。さらに、ネブラスカ大学医療センターのDr. Apar Kishor Ganti氏は、WHIの研究は医学のゴールドスタンダードであるランダム化比較試験であったことから、複数の後ろ向き研究で示唆されてきたように、ホルモンには肺癌に対する防御効果があるという概念は、今回の結果を踏まえて払拭されるべきであるとしている。

高悪性度の前立腺癌に関連する最新ウイルス

未知のウイルスが、2006年に前立腺癌患者の腫瘍から発見されたが、当時そのウイルスが前立腺癌に関与しているのかどうかは明確でなかった。その疑問に依然として答えは出ないままだが、新しい報告によると、XMRV(xenotropic murine leukemia virus-related virus)と呼ばれる遺伝子が、前立腺の悪性細胞内に存在し、高悪性度の腫瘍を有する男性患者により多く認められることが示されている。

前立腺の組織検体300以上を調べたところ、そのウイルスは腫瘍検体の27%に存在し、良性の対照検体の6%に存在していたことがわかった。今回の結果は、先週の全米科学アカデミー会報誌に掲載され、このウィルスがガンマレレトロウィルス属に分類されることが分かった。この病原体は動物に癌を引き起こすことができるが、人に癌をもたらすかはまだ明らかでない。

試験責任医師でユタ大学のDr. Ila Singh氏は、「今、最も重大な疑問点は、このウイルスが癌を引き起こすのか否かであり、いくつかの異なる観点から回答が得られる」と述べている。同氏の研究グループは、ウイルスDNAが、増殖に関与するヒト遺伝子の近傍に組み込まれているかどうかを確かめるために、前立腺癌を調べている。それが確かめられれば、ウイルスDNAによって増殖を促進する腫瘍遺伝子が不適切に活性化され、腫瘍の要因になっている可能性があるといえる。

ウイルスDNAが、それぞれの腫瘍細胞において、同一の増殖促進遺伝子の近傍に位置しているとすれば、クローンの生成を示していることになるため、1個の感染細胞から腫瘍が発生したことになり、因果関係の強力なエビデンスとなるであろう、とSingh氏は述べている。

ウイルスが人から人に感染するとすればどのような方法によるか調べるために、精液と頸管粘液を分析し、ウイルスを調べる血液検査を開発している。Singh氏は、ウイルスが癌の一因である場合、この問題を解決する最も有効な戦略は感染を防ぐことにあるとしている。

XMRVは適切な治療を要する高悪性度の前立腺癌患者を同定するマーカーになり得ることを、同氏は指摘している。現時点では、害を及ぼすことのない低悪性度の癌と高悪性度の癌を診断時に見分けられるような信頼性の高い診断方法はない。

脂肪細胞は白血病に対する化学療法を阻害

肥満児は、急性リンパ球性白血病(ALL)に対する化学療法後の再発の可能性がより高いことが研究によって示された。この観察の背後にある潜在的な生物的メカニズムを研究するため、ロサンゼルス小児病院(Childrens Hospital Los Angeles)の研究者らは、脂肪組織、ALL細胞、化学療法の間の相互作用を試験した。試験結果は、9月22日号のCancer Research誌の電子版に掲載され、脂肪細胞は通常の化学療法によって誘導されるアポトーシスを阻害することを示した。

ALLのマウスモデルを使用する実験で、化学療法薬ビンクリスチンでの治療中または治療後に、12匹の標準体重マウスのうち3匹で進行性白血病が発現したのと比較して、肥満マウスでは12匹のうち7匹で発現した。全てのマウスの脂肪体で多数の白血病細胞が見つかり、「脂肪組織はビンクリスチン療法中の白血病にとって避難区域である可能性」を示していると、著者らは述べている。

脂肪細胞を含むALL細胞を培養したところ、ビンクリスチンを含む4つの異なる化学療法剤の影響から癌細胞を保護した。この結果は、脂肪細胞が癌細胞との物理的に接しているかどうかとは無関係であった。

研究者らは、また、脂肪細胞が有る状態、または無い状態で増殖させたALL細胞において、アポトーシスに関与するいくつかのタンパク質の発現を測定し、ビンクリスチンでの治療中であってもALL細胞におけるアポトーシスを阻止する2つの「生存遺伝子」の発現を脂肪細胞が亢進させることを発見した。

「われわれの研究結果は、初回化学療法で用いられるビンクリスチンの抗白血病効果を、肥満が直接的に妨げる可能性を示すものです。この作用は、一つには脂肪細胞が白血病細胞と相互作用することによると思われます」と著者らは結論づけた。

B型肝炎ワクチンは肝臓癌のリスクを低下させる

2009年9月16日号のJournal of the National Cancer Institute誌電子版に掲載された台湾での試験によると、B型肝炎ウイルス(HBV)に対する一般的な小児期ワクチンプログラムは、6歳から19歳までの小児および若年成人の間で肝臓癌の症例数を大幅に低下させることがわかった。

慢性的なHBV感染は、肝臓癌発症の最も重要なリスクファクターであると考えられている。国立台湾大学病学院附設病院(國立台灣大學醫學院附設醫院)の研究者らは、ほとんどが1984年に台湾が全国的なHBV小児期ワクチンプログラムを発足した後に誕生し、6歳から29歳の間に診断された1,958人の肝臓癌患者の追跡データをレビューした。研究者らは、それらの肝臓癌患者のうちHBVワクチンの接種を受けていたのはわずか64人であり、444人はワクチンの接種を受けていなかったことを発見した。

「これらのデータは、肝細胞癌を予防する一般的なHBV予防接種プログラムの有効性は小児期を越えて若年成人期にわたり20年に及ぶことを示唆します」と著者らは述べた。

ワクチンを接種しても肝臓癌を発症した少数例において、考えられる2つの主な原因は、十分な回数のHBVワクチン(完全な効果を得るには3回が必要)の接種をしなかったこと、あるいはHBV感染の母親から生まれたが生後十分早い時期に、ウイルスの母子感染を防ぐワクチンの初回接種が行われなかったことであると研究者らは結論づけている。

「HBV関連の肝細胞癌をなくすためには、母子感染を完全に防止するさらなる努力が極めて重要です」と研究者らは述べた。彼らは、高リスクの母親から生まれた乳児においては、生後24時間以内の初回HBVワクチン接種率を改善することを推奨した。

米国では、教育およびワクチン接種を通じてHBV感染を撲滅する国家戦略が1991年に実施された。結果として、新たなHBV感染率は約82%減少し、1991年以降に生まれた小児の間で最も大きく減少した。米国の戦略の一つとして、疾病対策予防センター(CDC)の予防接種実施に関する諮問委員会は、乳児と小児のワクチン接種に関する予防接種ガイドラインを発行している。

 

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遠藤 香利、湖月 みき  訳

後藤 悌(呼吸器内科医/東京大学大学院)、吉原 哲(血液内科・造血幹細胞移植/兵庫医科大学病院) 監修

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