2009/10/20号◆癌研究ハイライト | 海外がん医療情報リファレンス

2009/10/20号◆癌研究ハイライト

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2009/10/20号◆癌研究ハイライト

同号原文

NCI Cancer Bulletin2009年10月20日号(Volume 6 / Number 20)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~

PDFはこちらからpicture_as_pdf ____________________

癌研究ハイライト

・前立腺癌に対する低侵襲手術は利点と欠点を有する
・肝臓癌の治療法選択につながるマーカーが発見される
・遺伝子変異が悪性度の高い小児癌と関連
・同一患者の原発腫瘍と転移腫瘍を分析
・前立腺の腫瘍微小環境は免疫細胞の機能を変化させる

前立腺癌に対する低侵襲手術は利点と欠点を有する

前立腺癌男性において前立腺摘除を行うための、手術ロボットを用いた手技を含む低侵襲手術は、標準的な「開腹」前立腺摘除術よりも、いくつかの基準においては優れているが、失禁や勃起障害のリスクなど、他のいくつかの重要な結果においては劣っている。この研究はJournal of the American Medical Association誌10月14日号で発表された。

2003年から2007年の間に、すべての前立腺摘除術に対する低侵襲の前立腺全摘除術(MIRP)の割合は1%から40%以上にまで増加した。この増加は主にロボット手術の急速な普及によると研究者らは確信している。現在、ロボット前立腺摘除術は全MIRPの70%を占めると筆頭著者でボストンにあるブリガム&ウィメンズ病院のDr.Jim C. Hu氏は述べた。

この研究はランダム化臨床試験ではない。研究者らはNCIのSEERメディケアデータベースの医事請求データと診断データを用いて、MIRPを受けた男性1,938人と開腹手術を受けた男性6,899人を特定した。MIRPと開腹手術が医師と患者においてどのような特性の違いがあるかを説明したうえで、研究者らはMIRPを受けた患者は入院日数が短く(2日対3日)、輸血量が大幅に少なく、呼吸器や他の外科的合併症のリスクが低いことを明らかにした。しかし、泌尿生殖器合併症のリスクは術後18カ月において2倍以上であり、失禁のリスクは30%増加し、勃起障害のリスクは40%増加した。

追加の癌治療の必要性は両群間においておおむね同程度であり、どちらの手術も癌のコントロールという点では優劣はないことを示唆しているとHu氏は説明した。またこの研究により、アフリカ系アメリカ人やヒスパニック男性ではMIRPを受ける頻度は低いなどのMIRPに関係するいくつかの格差が明らかになった。

MIRPと比較した標準的な開腹手術に関する利用可能なデータを考慮すると、限局性前立腺癌の治療に手術を選択する男性にとって、開腹手術はこれまでどおり「標準的治療」であるべきだとHu氏は述べた。

肝臓癌の治療法選択につながるマーカーが発見される

肝臓の腫瘍にある小さなRNA分子が、患者の予後判定の生物学的マーカーとなり、また、生物製剤インターフェロンの投与に適する患者の選別に利用できる可能性を示す研究結果が、New England Journal of Medicine誌10月8日号に掲載された。この分子は、ヒトの遺伝子に約1000種類あるマイクロRNAの1つである。マイクロRNAは、数百ある遺伝子の活性を調節すると考えられている。

腫瘍におけるMiR-26と呼ばれるマイクロRNAの量が少ない患者は予後不良ではあるが、他の患者よりインターフェロンによる恩恵を得られるとみられることが明らかとなった。マイクロRNAは、何百もの遺伝子の活性を制御していると考えられており、一部は癌と関連がある。

「このマイクロRNAは、腫瘍の悪性度がどのくらい高いか、また、インターフェロンが再発防止に効果のある患者を識別するなど、医師にとって極めて有用であると考えている」と、NCIの肝臓癌発癌研究課(Liver Carcinogenesis Section)の主任で、この研究のリーダーであるDr. Xin Wei Wang氏は述べた。この研究は、復旦大学(上海)、香港大学(中国)、オハイオ州立大学の研究者らと共に行われた。

本研究の本来の目的は、マイクロRNA量または発現の差が肝癌の1つである肝細胞癌の男女に見られる転帰の違いを説明できるかどうかを明らかにすることであった。この解析により、男女間に加え、悪性度の異なる患者間でもmiR-26の発現に差があることが判明した。

全体的として、miR-26量の少ない患者群(男女とも)は、量の多い患者群より生存期間が短かった。両群の生存期間の差は、約4年であった。miR-26量が少ない患者は予後不良ではあるが、これらの患者はインターフェロンによる術後補助療法の効果をより得られるようであった。腫瘍のmiR-26量が少ない群において、インターフェロン投与群は、投与を受けなかった群より7.7年以上長く生存した。腫瘍でのmiR-26量が正常の患者は、インターフェロンの効果がなかった。

miR-26と予後あるいは治療反応との関係は、因果関係を意味するものではないが、最近のマウス実験ではmiR-26が腫瘍抑制因子として働く可能性を示すエビデンスを得られたとWang氏は指摘した。今後の研究は、別な患者群でマイクロRNAを評価し、肝細胞癌の治療ターゲットとしての利用の可能性を調査することであるとも述べられている。

遺伝子変異が悪性度の高い小児癌と関連

骨格筋組織の発達をコントロールする遺伝子の変異により起こる悪性度の高い小児癌である横紋筋肉腫(RMS)は、小児では診断時点で転移していることが多く、生存率が低い。研究者らは、RMS患者の転移と予後不良に関連する線維芽細胞増殖因子受容体4(FGFR4)遺伝子の変異を同定した。FGFR4タンパクは、細胞増殖、成熟、生存の制御を助ける細胞内シグナル伝達に関与する受容体型チロシンキナーゼとして知られるタンパク質のファミリーに属している。この遺伝子は治療ターゲットになると、研究者らは考えている。この結果は、Journal of Clinical Investigation誌10月5日付けで電子版に掲載された。

NCI、米国国立心臓肺血液研究所、ウエストミード小児病院(オーストラリア)、全米小児病院(オハイオ州コロンバス)の研究者らが本試験に参加した。これまでの研究は、RMSではFGFR4遺伝子の発現量が高いことを示していた。この遺伝子は筋肉の発達中には活性があり、成人の筋肉では活性がないので、この研究チームは、FGFR4遺伝子の発現がRMSに関与しているかどうかを調査した。マウスモデルを使い研究者らは、FGFR4遺伝子発現を抑制することでヒトのRMS細胞の増殖と肺への転移を阻止したことを示した。ヒトRMS腫瘍検体のFGFR4遺伝子の塩基配列を決定したところ、タンパク質のチロシンキナーゼ部分に変異が起きている腫瘍が7%以上あることが判明した。これらの変異のいくつかは、タンパク質が過度に活性化する原因であった。受容体型チロシンキナーゼの活性を増加させる変異は既に別の癌で発見されているが、研究者らは、RMSで受容体型チロシンキナーゼが変異しているのはこれが初めてであると指摘する。

一連の試験や動物試験で、2つのFGFR4遺伝子の変異が腫瘍増殖、RMS細胞死の減少、RMS細胞の転移能力の増強の原因であることを確認した。

肺胞および胎児のRMSで見られた変異は、STAT3経路を介して作用すると思われた。これらの変異があるマウスRMS細胞も、FGFR4阻害剤の処理に対して感受性がより高かった。これは、「長期生存が難しい転移性RMSの患者とオーダーメード治療に直接に関連します」と、筆頭著者であるNCIの小児腫瘍学支部のDr. Javed Khan氏は述べた。

同一患者の原発腫瘍と転移腫瘍を分析

次世代のDNA解読技術を使い、カナダの研究者らは、同一患者から9年間隔で採取した2つの乳腺腫瘍の遺伝子変化を比較した。二次性腫瘍(転移)には、乳癌診断時に採取した腫瘍には見られなかった遺伝子変化があった。つまり、「著しい変化が病状の進行に伴って起る可能性がある」ことを示唆していると、研究者らはNature誌10月8日号で報告した

「ゲノム量の点では、癌には著しい変化がありますが、さらに原発癌はその始まりの時から不均一であった」と、BCがん研究所(バンクーバー)の主任研究員であるDr. Samuel Aparicio氏は述べた。「何十年もの間、癌細胞は不均一であるに違いないとわかっていたが、ここにきて、それが解明されようとしている。」

研究者らは、二次性腫瘍から32個の遺伝子変異を見つけた。このうち19個は原発癌にはなかったものであった。(この19の変異体は放射線治療の結果か、あるいは腫瘍本来の進行の結果なのかは不明であった。)治療前および転移前の原発腫瘍にどの変異があるのかを知ることにより、原発癌の原因となる遺伝子要因の発見を容易にする可能性があると、研究者らは述べた。

この知見について尋ねられた時、スローンケタリング記念がんセンターのDr. Joan Massagué 氏は、「癌は本来偶然によって起こり、そしてどのようにでも体内で変化できるため、癌がさまざまな過程を経て変化していくことが明らかになると予想される」と述べた。今回のような試験は、腫瘍の変化が「どのような状況でも起りうる」ことを示しているが、Massagué 氏は、特定の報告からより幅広い結論を出すことに対して警告している。

Massagué 氏は、米国癌学会(AACR)が主催した転移に関する最近の記者会見で意見を述べた。

前立腺の腫瘍微小環境は免疫細胞の機能を変化させる

腫瘍が免疫系から逃れるためにとる過程については依然として多くのことが解明されていない。このたびNCI癌研究センターやフレッドハッチンソン癌研究センターの研究者らも参加するチームが、腫瘍特異的な免疫細胞がマウスの前立腺腫瘍微小環境に遊走してくると、通常の抗腫瘍活性から免疫抑制機能に切り替わることがあることを示した。この報告はJournal of Immunology誌10月15日号に掲載された。

腫瘍特異的CD8+T細胞は、ひとたびマウスの前立腺腫瘍微小環境に入ると、非特異的T細胞を分裂増加させ腫瘍を攻撃させるという通常の免疫反応を阻止し始めることを研究者らは明らかにした。

この免疫抑制活性は、一つには腫瘍微小環境内のCD8+T細胞が分泌する物質によって引き起こされるようであった。これらの物質のひとつであるTGF-βは細胞の増殖や分化を制御し、癌や他の病気において役割を果たすタンパク質である。TGF-βに対する抗体を使うと、CD8+T細胞の抑制作用への切り替えが阻害された。

TGF-βがこの過程に必要かどうかは明らかではないが、CD8+T細胞は腫瘍微小環境に浸潤した後は免疫細胞を抑制するだけであったと研究者らは指摘した。それにひきかえ他の部位(この研究では同じマウスのリンパ節)から分離したCD8+T細胞は非特異的T細胞の増殖を抑制できなかった。研究チームは、腫瘍微小環境における免疫抑制シグナルを、その領域にCD4+T細胞を導入することによって止められることも明らかにした。CD4+T細胞が追加されると、前立腺腫瘍から分離されたCD8+T細胞は他のT細胞の増殖を抑制することはなくなり、分泌するTGF-βも少なくなった。

これらの発見から、著者らは「これらの経路を遮断する新しいアプローチによって、より持続的で効果的な抗腫瘍T細胞反応を引き起こすことが今以上に強化できるであろう」と結論した。

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野長瀬 祥兼、Nogawa  訳

榎本 裕(泌尿器科医)、金田 澄子(薬学)監修

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