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2009/10/20号◆特集記事「難治性白血病患児に新たな選択肢」

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2009/10/20号◆特集記事「難治性白血病患児に新たな選択肢」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2009年10月20日号(Volume 6 / Number 20)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~

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特集記事

難治性白血病患児に新たな選択肢

10月5日付けのJournal of Clinical Oncology誌電子版に発表された2つの臨床試験によると、現在の治療に反応しない形態の急性リンパ芽球性白血病(ALL)若年患者の一部に、新たな治療選択肢がもたらされる可能性がある。両試験は米国国立癌研究所(NCI)の支援でChildren’s Oncology Group(COG:小児腫瘍グループ)が実施したものであり、それぞれの試験で難治性がん患者にとって目覚ましい成果がもたらされた。

最初の研究では、フィラデルフィア染色体(Ph染色体)として知られる遺伝子変異に関連する稀な型のALLを患う小児および若年成人に対して、従来型の強力な化学療法にイマチニブ (グリベック)を追加すると、疾患の再発なく生存期間の延長がみられた。Ph染色体は、白血病細胞にBcr-Ablと呼ばれる融合タンパク質を生成させ、その作用はチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)と呼ばれる種類の薬剤イマチニブによって抑制される。小児期ALL症例の5%未満がPh染色体に関連しているが、従来型の治療で治癒を得るのはこの病型を有する患者のわずか40%程度に過ぎない。

カナダのバンクーバーにあるブリティッシュ・コロンビア小児病院のDr. Kirk Schultz氏が率いるCOG研究チームは、5つの患者集団(集団毎にイマチニブの治療期間が延長されていく)において、1~21歳のPh染色体陽性ALL患者92人の治療を行った。患者の転帰を、以前のCOG試験で標準化学療法を受けた同様の患者群の転帰と比較した。イマチニブ治療期間が最長(連続280日)の患者では、3年後の無再発生存率は80.5%であった。以前の試験で標準治療を受けた患者でこの転帰に至ったのはわずか35%程度であった。

「イマチニブ併用化学療法を受けた患児の早期転帰においてSchultz氏とその研究チームが目にした著しい改善は、Ph染色体陽性ALL患児はイマチニブなどのTKI剤を含む治療を受けるべきである、という強力なエビデンスです」とNCI癌治療評価プログラムの小児がん専門医であるDr. Malcolm Smith氏はコメントした。

この転帰が持続することを確認するためにはより長期的な経過観察が必要であり、その結果をより大きい患者集団で確認するべきである、とSmith氏は述べた。イマチニブもしくはダサチニブなどの「第二世代」TKIが、Ph染色体陽性ALL患児の化学療法に追加されることで、より効果を発揮するかどうかを判断するためにさらに研究が求められる、と同氏は付け加えた。

NCIの小児腫瘍学支部主任Dr. Crystal Mackall氏は、「今回の研究における5つの投与群のうち、イマチニブを最も多く投与された患者群のみに治療効果の増強が認められました。それにもかかわらず、注目すべきことは、この群において毒性の増加が全く見られなかったことです。毒性が増加することなく効果が現れることは癌治療において珍しいことですが、これがまさに効果的な標的療法を治療レジメンに組み込む際に期待される効果なのです」と言及した。

もう一つの研究では、小児を対象とする強力な多剤併用化学療法レジメンで治療された16~21歳の思春期および若年成人のALL患者は、成人を対象とする治療を施された患者よりも、生存期間が長くかつ無病期間も長かった。この年齢層の患者は、より若年のALL患児よりも転帰が不良となる傾向がある。

シカゴ大学小児病院のDr. James B. Nachman氏とCOGの医師らは、寛解導入療法に速やかに反応した若者および若年成人のALL患者164人を対象として、ビンクリスチンペグアスパラギナーゼ、およびメトトレキサート(静注)を含む多剤併用の標準的なもしくは強化された化学療法のいずれかの追加コースを受けるよう無作為に割り付けた。

強化された小児化学療法に割り付けられた患者のうち、89%が5年後も生存しており81%に再発が認められなかった。標準的な小児化学療法に割り付けられた患者のうち、83%が5年後も生存しており72%に再発が認められなかった。反応が速かった患者および反応が遅かった患者の両方(合計262人)では、78%が5年後も生存、72%に再発が認められなかった。

これらの研究結果は、これまでの研究から得たデータに加えて、小児用レジメンで治療される若年成人ALL患者の無再発生存率は成人用レジメンよりも20~30%良好であることを示している、と著者らは記した。この違いの理由は分かっていない。考えられる説明としては、小児型レジメンでは、特定のタイプの抗白血病薬を組み合わせた、独特なやり方を行っていることが挙げられる、とSmith氏は述べた。現在進行中の試験において、腫瘍内科医はこのCOG小児型レジメンで若年成人のALL患者を治療しているところであり、この点についてさらに明らかにされる可能性がある。

Nachman氏らは、さらに、小児型レジメンをこの患者集団に用いる場合、第一寛解期に幹細胞移植を日常的に行うことは是認されないとみられると言及した。

今回の研究は、16~21歳のALL患者は小児型ALLレジメンで治療されるべきであるという説得力のあるエビデンスとなる、とSmith氏は述べた。「成人用レジメンで治療を受けるこの年齢層の患者の転帰を小児用レジメンにおける転帰と比較した世界中のいくつかの研究は、いずれも、小児ALLレジメンがより効果的であることを示しています」と同氏は付け加えた。

―Eleanor Mayfield

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豊 訳

吉原 哲(血液内科・造血幹細胞移植/兵庫医科大学病院)監修

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