2009/11/03号◆特別リポート「前立腺癌における遺伝子の融合はどのように起きるか」 | 海外がん医療情報リファレンス

2009/11/03号◆特別リポート「前立腺癌における遺伝子の融合はどのように起きるか」

更新日

Facebookでシェアする Twitterにツィートする LINEに送る print

2009/11/03号◆特別リポート「前立腺癌における遺伝子の融合はどのように起きるか」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2009年11月3日号(Volume 6 / Number 21)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~

PDFはこちらからpicture_as_pdf ____________________

特別リポート

前立腺癌における遺伝子の融合はどのように起きるか

4年前、ミシガン大学医学部の研究者らは前立腺癌でしばしば認められる遺伝子変化(融合遺伝子)を発見した。他の一般的な癌でも発見されているが、このような変異遺伝子はゲノム上の異なる領域のDNAが融合する際に形成される。この変異の基本的メカニズムは、十分に解明されていない。[pagebreak>Dr. Arul Chinnaiyan氏が率いるNCIの早期発見研究ネットワーク(Early Detection Research Network)が一部支援しているミシガン大学チームは、今回、研究室において遺伝子融合を再現した。アンドロゲンという男性ホルモンに曝露することによって、細胞内にある染色体の3次元的な位置が変わり、通常では離れた位置にある遺伝子同士が接近するようになる可能性を彼らは示した。DNAが損傷している細胞でこれが起きると、異なる染色体領域の遺伝子が融合することになるかもしれない。

したがって、遺伝子融合は二段階プロセスの産物であるかもしれないという研究結果がScience誌10月30日付電子版に掲載された。本研究は、遺伝子融合は認められないが、一部の前立腺癌において重要な役割を果たしているアンドロゲンに依存性がある前立腺癌細胞を用いた。その細胞はテストステロンの修飾産物であるジヒドロテストステロンに曝露され、次いで放射線に曝露された。より放射線量を多くすることによって、より多くの融合現象が生じていた。

「前立腺癌の遺伝子融合は、アンドロゲンのシグナル伝達とDNA損傷物質の組み合わせによって生じる」とChinnaiyan氏は述べた。研究者らがこれらのイベントは偶然によって生ずることがあるかもしれないと考えていたが、本試験はアンドロゲンが少なくともある種の融合の準備段階となっているかも知れないことを示唆している。

昨年発表された研究によると、エストロゲンホルモンは染色体の位置の変化を誘導し、本来は離れている遺伝子を近づけるかもしれないという。細胞におけるアンドロゲンとエストロゲンのシグナル伝達が似ているため、研究者らは、アンドロゲンが前立腺癌における染色体の動きを誘導するかもしれないという仮説を立てた。

「アンドロゲンが遺伝子を調節する能力があることはわかっており、現在はホルモンが染色体内の動きを誘導するのではないかと考えられている」と、本試験の筆頭著者であるDr. Ram-Shankar Mani氏は述べた。染色体の変化と融合イベントの分子メカニズムを理解するためにはさらに研究が必要である。

研究者らは、21番染色体上の本来は離れたところにある2つの遺伝子、TMPRSS2とERGの融合に注目した。この融合は前立腺癌のほぼ半数に認められ、前立腺癌を促進するかもしれない。

ミシガン大学グループは、他の融合に関しても同様に調査をする予定である。「前立腺癌に関連して一番多い遺伝子融合に着目したが、アンドロゲンのシグナル伝達によって多くの遺伝子が近接しているであろうと考えている」とChinnaiyan氏は述べた。

これらの知見は、細胞型特異的な核三次元構造を理解する上で重要な意味をもつと、この研究には関与していないシティ・オブ・ホープ(カリフォルニア州デュアルテ)の分子科学科教授であるDr. Steven Smith氏はコメントした。

Smith氏は、「本研究は、癌バイオマーカー研究と基礎生物学の融合という点を実に強調している」と電子メールのメッセージ内で書いている。「人は基礎科学が癌研究を発展させると通常考えるが、この研究のようにしばしば逆のことがありえる。」

—Edward R. Winstead

******

Nogawa 訳

榎本 裕(泌尿器科医)監修

******

printこの記事を印刷する Facebookシェアする Twitterツィートする LINE送る

免責事項当サイトの記事は情報提供を目的としてボランティアで翻訳・監修されています。翻訳の記事内容や治療を推奨または保証するものではありません。

注目キーワード

新着ドキュメント

一覧

arrow_upward