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2009/11/03号◆癌研究ハイライト

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2009/11/03号◆癌研究ハイライト

同号原文

NCI Cancer Bulletin2009年11月3日号(Volume 6 / Number 21) 

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~

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癌研究ハイライト

・HER2ステータスは微小乳癌でも重要であると研究で判明
・BRCA家系に予測される対側乳癌リスク
・血中総コレステロールの低値は癌リスク上昇と関連なし
・子宮頸癌の前癌状態を発見する検査の精度は同等
・ニコチンパッチとニコチントローチの併用は禁煙の長期継続に有用
・電話による個別カウンセリングは10代の禁煙に役立つ

HER2ステータスは微小乳癌でも重要であると研究で判明

HER2陽性乳癌(HER2タンパクが過剰発現した腫瘍)が1cm以下の女性患者は、同等サイズの小腫瘍を有するHER2陰性の女性よりも、5年以内の乳癌再発リスクが高いことが、2件の後ろ向き研究で示された。成果はJournal of Clinical Oncology誌11月2日号電子版に掲載されたもので、HER2陽性、小腫瘍の女性患者に、術後補助療法において分子標的薬トラスツズマブ(ハーセプチン)を投与すべきかどうかという臨床的に不明な領域の解明に役立つ可能性があるという。HER2陽性の早期乳癌女性のための標準治療として、術後の化学療法とトラスツズマブの併用を確立する大規模臨床試験には、小さな腫瘍を有する患者はほとんど参加していない。

この試験は、テキサス大学M.D.アンダーソンがんセンターおよびミラノのヨーロッパがんセンター(European Institute of Oncology)の両施設で、治療を受けた女性を対象にそれぞれ実施されたものである。両試験では、小腫瘍の女性患者が各施設で受けた治療の診療記録を再調査した。トラスツズマブによる術後補助療法を受けた患者は除外したものの、分析対象となった患者の中にはその他の補助療法を受けていた患者がおり、特にミラノの患者群でその傾向が強かった。両試験ともに、HER2陽性小腫瘍の患者における再発リスクは、HER2陰性小腫瘍の患者の約2.5倍高かった。また、MDアンダーソンの試験では、転移性乳癌を発症するリスクが5倍を超えることが示された。

ダナファーバー癌研究所のDr.Harold Burstein氏およびDr.Eric Winer氏は、今回の研究結果は先行研究2件と同じ見解を示していると付随論説で記している。小さなHER2陽性乳癌は依然予後良好とはいえ、化学療法とトラスツズマブ併用補助療法のベネフィットを得られる可能性があるという今回の知見は、多くのエビデンスにさらに追加されるものになる。

トラスツズマブがHER2陽性小腫瘍の患者の転帰に有効であるとするデータがランダム化臨床試験で不足していることを踏まえて、BursteinおよびWiner両氏は「再発の潜在的リスクに合わせた治療選択肢の個別化は継続する必要がある」との慎重な見方を示した。この傾向は再発リスクが「いまだ特定できない」5mm未満の極小腫瘍を有する女性に特に当てはまる。こうした患者に対して、「術後の化学療法とトラスツズマブ併用における稀な重大リスクの可能性を正当化しがたいと思われる」と同氏らは記している。術後補助療法を検討している女性においては、「トラスツズマブ+化学療法の併用治療の強度を考慮すると、治療期間を短縮するだけでも十分かもしれない」と結論している。

BRCA家系に予測される対側乳癌リスク

遺伝型乳癌の女性は将来的に二次癌を発症するリスクが高く、特にもう一方の(対側)乳房に発生することが多い。ドイツの研究者らは、遺伝型乳癌女性における対側乳癌のリスクを推定し、リスクの関連要因を2つ同定した。ひとつは最初の乳癌診断時の年齢であり、もうひとつはBRCA1またはBRCA2遺伝子の変異を受け継いでいるかどうかであった。成果はJournal of Clinical Oncology誌電子版の10月26日号に掲載された。

BRCA1/2変異の確定または疑いのあるドイツ人女性2,020人の後ろ向き解析から、対側乳癌のリスクが最も高いのは、初回診断時40歳未満のBRCA1遺伝子変異を有する女性であった。同群における25年後の対側乳癌の累積リスクは約63%であることが研究で示された。

初めて乳癌と診断された時期が高齢であることは、リスク増加の減少と関連がみられた。25年後の対側乳癌の累積リスクは、初めて癌と診断されたのが50歳以上のBRCA1変異保有者で19.6%、BRCA2変異保有者では16.7%であり、これは一般人口集団の女性におけるリスクとほぼ同等であった。

今回の研究対象となった全女性患者において、乳癌診断から25年後に対側乳癌を発症する全リスクは約50%であったが、上昇はその後も続いた。このリスク推定値は同群に対して過去に報告されたものよりも低いが、今回の研究結果は「対側乳癌リスクは、最初の乳癌診断から長期経過していても該当する」ことを示唆するものである、と同研究者らは報告している。高リスクの女性の多くが、遺伝学カウンセリングや診断前または診断時におけるBRCA1/2検査を希望しているのは、自らの変異状態を知ることが治療の改善につながるのではないかという期待を抱いているからである。著者らによると、今回の研究結果に裏づけは必要だが、治療決定に影響する可能性はあるとしている。BRCA1変異のある家系の患者が、BRCA2変異保有患者よりも対側乳癌のリスクが有意に高いことを示したのは、今回の研究が初めてとみられる。

付随論説で、ブリガム&ウィメンズ病院のDr. Judy Garber氏およびDr. Mehra Golshan氏は、診断時が若年層の高リスク女性にとって、この推定値は「乳癌治療チームが対側乳房の管理問題を検討せざるを得ないほど説得力のある数値だ」としている。診断時に高年(50歳超)であったBRCA1/2保有者の場合、管理検討への説得力は若干弱いが、対側乳癌リスクは同様に重要であるとも報告している。

血中総コレステロールの低値は癌リスク上昇と関連なし

Cancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention誌11月2日号に掲載された研究から、コレステロールと癌の関係に新たな知見がもたらされた。先行研究から、血中総コレステロール値が低ければ、癌の発症率および死亡率の上昇と関連することが示唆されたが、この研究が因果関係を観察したものだったのか、もしくは、一部で低コレステロール値はごく初期の癌が引き起こす代謝変化の産物であるのかどうかは明らかにされていない。

血中コレステロールと癌リスクの関連をさらに理解するために、NCI癌疫学・遺伝学部門の研究者らは、「アルファトコフェロール・ベータカロテン癌予防試験」に参加した男性喫煙者29,093人の前向きデータを調べた。血中総コレステロール値およびHDL(いわゆる善玉コレステロール)値が、試験開始時および3年後に測定された。対象患者は18年間にわたり追跡され、この間に7,545例の癌が発生した。

血中コレステロールの高値と、癌の全発症率の減少に関連があることが全体で認められた。しかし、試験開始から最初の9年間に診断された癌症例を除外したところ、この関連が認められなくなったため、多くの症例において、この関連は原因ではなく、既存の初期癌に起因している傾向があることが示された。試験筆頭著者のDr. Demetrius Albanes氏は「試験データは、低コレステロールが癌のリスク因子ではないことを非常に強く支持するものだ」と述べている。

また、高HDL値と、癌リスクの減少に関連があることが全体で認められた。総コレステロールとは異なり、追跡調査開始から最初の9年間に診断された症例を除外すると、この関連がわずかに強まった。Albanes氏は「HDLが最も高い値を示すと、全追跡期間中、全癌でリスクが11%低くなることがわかった」と述べている。「試験開始から最初の9年間の追跡期間に診断された症例を除外するとリスクは15%低下し、12年間でも同様だった。今回の新しい知見がその他の研究者によって裏づけられれば、高HDL値により、心血管疾患を予防するだけでなく、癌を抑制するというベネフィットが得られる可能性がある」と同氏は結論している。

子宮頸癌の前癌状態を発見する検査の精度は同等

癌の前駆細胞を検出する手法として一般的に用いられている2つの検査方法の精度は同等であることが、子宮頸癌の2種類の検査を比較した大規模ランダム化試験の結果で示された。液状化細胞診は、現在アメリカにおいて子宮頸癌の検査法としてもっとも一般的だが、癌の発生につながる可能性がある異常細胞の検出において、従来のパップテストよりも優れているわけではないということが本試験でわかった。この結果はJournal of the American Medical Association誌10月28日号で発表された。

本試験はオランダ子宮頸癌スクリーニングプログラム(Dutch cervical cancer screening program)に参加するオランダ国内の250近くの医療機関で検査を受けた30歳から60歳までの約9万人の女性を対象とした。2種類の検査のうちのどちらを用いるか無作為に割り付けて診療が行われた。陽性の結果が出た女性の精密検査を行う医師には、用いられた検査の種類とその結果はふせられていた。子宮頚部上皮内腫瘍とも呼ばれる前癌病変の検出率は二つの検査でほぼ同じであった。また、陽性の検査結果の後に前癌状態の細胞が存在する可能性をあらわす陽性適中率も、両方の検査で同じであった。

液状細胞診は従来のパップテストよりも費用が高いと、試験の筆頭著者であるDr. Albertus G. Siebers氏と共同研究者らは述べた。「しかし疑わしい症例においては、残余検体を用いて、ヒトパピローマウィルス(HPV)DNAが存在するかの検査、あるいは他の細胞周期に関連する分子バイオマーカーによる検査を併用する可能性もある」と著者は述べた。

この試験の結果が「米国における細胞診検査に大きな影響を与えることはあり得ないであろう」と米国国立癌研究所(NCI)癌疫学・遺伝学部門のDr. Mark Schiffman氏と、NCI癌予防部門のDr. Diane Solomon氏は付随論説で述べた。多くの研究室では液状化細胞診のほうが好まれるが、その理由は検体はマイクロスコープ下で精査しやすく、速く行えるためである。また液状化細胞診では、不十分とされる検体がより少ないこともこの試験で判明した。

「細胞診は、現在、初期予防や他の子宮頸癌の二次予防戦略と競合している。その中にはHPVワクチンやHPV DNAテストも含まれている。「ますます強力な一連の予防手段が利用可能になったとしても、ワクチン、細胞診、HPVテスト、コルポスコープや新しい方法のどの組み合わせもすべての状況で万能というわけではないと思われる」と研究者らは述べている。

米国国立癌研究所(NCI)癌制御・人口学部門のDr. Robin Yabroff氏が主導する新しい研究は、パップテストを用いた子宮頸癌検診の実施状況が、医師の専門領域により異なることを示している。この研究は、本日The Annals of Internal Medicine誌で発表されており、1,200人以上の臨床医を対象に調査された。大多数の医師が適格患者に対してパップテストを提案していたが、医師が推奨したパップテストの頻度は、国の推奨するガイドラインとは一致しないことが多かった。

ニコチンパッチとニコチントローチの併用は禁煙の長期継続に有用

5種類の異なる禁煙補助剤を比較する有効性の比較試験で、研究者らは、禁煙の増加においてニコチンパッチとニコチントローチの併用が最も効果があることを見出した。この結果は昨日The Archives of General Psychiatry誌に掲載された。

複数の臨床試験で、ニコチン代替品(ニコチンパッチなど)や非ニコチン製剤(bupuropion[ブプロピオン]など)など、さまざまな禁煙補助剤が人々の禁煙に役立つことが示されてきた。しかしながら、これらの製品の有効性を直接比較する研究がなかったため、喫煙者が方法を選択することも、医師がよりよい補助剤を推奨することも難しかった。

この試験はウィスコンシン大学の Center for Tobacco Research and Intervention のDr. Megan Piper氏が主導し、1,504人の喫煙者を登録して10の治療グループに無作為に割り付けた。10の治療グループは、ニコチントローチ群、ニコチンパッチ群、ニコチントローチとニコチンパッチの併用群、ブプロピオン群、ブプロピオンとニコチントローチの併用群、または、この5種類の実薬のいずれかに対するプラセボ群である。プラセボ群を含む全ての患者は、集中的な禁煙カウンセリングを受けた。

5種類の実薬群のすべてにおいて、プラセボ群と比較して、患者が速やかに禁煙するのに役立ったが、ニコチンパッチ群と二つの併用群の3群のみにおいて、喫煙を止めてから1週間後の時点での禁煙の割合が増加していた。また、禁煙から6カ月後の時点では、ニコチンパッチとニコチントローチの併用群のみがそのプラセボ群に対して有効であった。試験期間にこの併用を服用した患者では、プラセボを投与された患者と比較して、6カ月後も禁煙を継続する傾向が2倍以上であった。

著者は次のように明記している。ニコチンパッチとニコチントローチの併用群が、そのプラセボ群と比較して、最も有効な治療法であった一方、1対1で比較すると(プラセボ群との比較ではなく)、喫煙を止めてから6カ月後の禁煙継続において、5種類の実薬での禁煙療法のすべてが比較的同様の効果をもたらした。さらに、プラセボ群は全て、著しく高い禁煙成功率を達成したが、おそらく集中的なカウンセリングを受けたためとみられる。

電話による個別カウンセリングは10代の禁煙に役立つ

フレッドハッチンソン癌研究センターの研究者らは、この分野で最大の臨床試験において、動機付け面接や認知行動的アプローチを含む電話をベースにしたカウンセリングが10代後半の禁煙に役立つことを示した。この試験は、青少年喫煙者における禁煙の持続効果を証明する最初のものである。試験では、継続効果の定義を少なくとも6カ月の持続とした。この知見は、米国公衆衛生局(U.S. Public Health Service)による2008年のClinical Practice Guidelinesの勧告と一致する。この勧告では、若年者の禁煙を助けるためにはカウンセリングが有効な治療法となり得ると示唆している。

「10代や若年成人による喫煙を減らすための効果的な方法を見つける国の研究を支援し促進するために、これらの結果は非常に重要である」と試験の研究責任者であるDr. Arthur V. Peterson, Jr.氏はプレスリリース中で述べた。この試験はJournal of the National Cancer Institute (JNCI)誌電子版10月12日号に掲載された。

米国国立癌研究所(NCI)が資金提供したこの試験には、ワシントン州の50の高校から2,151人の10代後半の喫煙者(調査で確認)が登録された。半数の学校が秘密厳守のカウンセリングを受けるように無作為に割り付けられた一方で、残りの25校から参加した生徒はカウンセリングを受けなかった。多くの非喫煙者群も、参加者の喫煙状況を隠すために試験に登録された。

カウンセリング群の3分の2近くの参加者が電話によるカウンセリングを少なくとも一度は受けた。研究チームの説明によれば、カウンセリングは2種類の方法を軸として行われた。一つは動機づけ面接で、禁煙するモチベーションと自信を参加者に与えるのに役立つ。もう一つは認知行動的技能訓練で、どのようにして禁煙するかを学ぶ方法を提供する。

すべての喫煙者でみると、カウンセリングを受けた参加者は、受けなかった参加者と比較して6カ月時点の禁煙率が高かった(21.8%対17.7%)。カウンセリングを受けた日常的な喫煙者は、カウンセリングを受けなかった日常的な喫煙者と比較して、6カ月時点での禁煙率を報告する可能性が2倍近くであった (10.1%対5.9%)。カウンセリングによる介入の効果は日常的な喫煙者でも男性と女性では異なった。カウンセリングを受けた男性の日常的な喫煙者では、介入を受けなかった男性の日常的な喫煙よりも、6カ月時点で禁煙率を継続する可能性が高かった。しかしながら、これは女性の若年喫煙者には当てはまらなかった。

JNCI誌の付随論説でアリゾナがんセンターの Dr. Scott Leischow氏とDr. Eva Matthews氏は本試験を称賛し、「介入を実行するため、可能なかぎり」、国による禁煙のためのテレフォン・カウンセリングを、「非常に強力で可能性のある手段として促進するよう」求めた。

 

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遠藤 香利、岡田 章代 訳

原 文堅(乳腺腫瘍医/四国がんセンター)、千種 葉月(薬学)監修

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