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2009/11/03号◆特集記事「膵臓癌に関する報告書、臨床試験の変更を要請」

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2009/11/03号◆特集記事「膵臓癌に関する報告書、臨床試験の変更を要請」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2009年11月3日号(Volume 6 / Number 21)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~

PDFはこちらからpicture_as_pdf ____________________

特集記事

膵臓癌に関する報告書、臨床試験の変更を要請

ゆっくりと、しかし着実に癌医療の個別化が進むなかで、膵臓癌については置き去りにされてきた。10以上もの大規模臨床試験が実施されているが、膵臓癌と診断された患者の生存期間は、今日でも20年前と変わっていない。膵臓癌以外では、多くの患者がイマチニブ(グリベック)やトラスツズマブ(ハーセプチン)などの分子標的薬の恩恵を受けているにもかかわらず、膵臓癌は依然として致命的な癌のままである。

最近の科学の進歩、そして新たに行われる臨床試験はこの状況を改善するかもしれない。NCI(米国国立癌研究所)が招集した専門家委員会は統一見解を発表しており、このなかで膵臓癌の治療法開発および臨床試験に関する多くの側面が検討され、次の5年間の戦略が図で示されている。

「本報告書は、対応策を求めるものです」と筆頭著者であるバーバラ・アン・カルマノス癌研究所(ミシガン州デトロイト)のDr. Philip A. Philip氏は述べた。「われわれは確固たる科学的根拠に基づいた、より適切な臨床試験を実施する必要があり、患者に対してこのような臨床試験への参加を後押しする必要があります。」

最も推奨されるのは、過去に大規模試験が期待に反する結果を示したことを踏まえ、このような大規模試験を始める前に可能性のある治療法を小規模の患者群に実施する予備試験をデザインすることである。試験対象とする分子標的や薬剤の決定は、ヒトの膵臓癌をより典型的に観察できる前臨床試験や動物試験など、科学的根拠に基づいて行うことになる。

「新たな分子標的治療や併用療法を提示する場合、われわれは熟慮を重ね、かつこれまで以上に革新的でなくてはなりません」とPhilip氏は述べた。新たな治療戦略に望まれるのは、貴重な資源と患者の時間を有効性が確実な治療法のために使うことである。

膵臓癌は転移して初めて発見されることが多いため、症例数は他の癌ほどではないが、米国では癌の死亡率の第4位を占めている。大半の患者が診断から1年以内に死亡し、従来の化学療法では生存期間が延長できないことがよく知られている。ごくわずかながらも効果が認められたエルロチニブ(タルセバ)を除き、今まで試験が行われた分子標的薬には血管新生阻害剤も含め有効性は認められていない。

膵臓癌治療の開発の課題は、膵臓癌の生物学的特徴に関する知見が限られている現状で開発を進めなくてはならない点である。本報告書は、膵臓癌の複雑なシグナル伝達経路と腫瘍の局所環境が果たす役割についてさらに理解を深める必要があると言及している。腫瘍モデル系の改良、質の高い生物学的標本の収集を行い、前臨床の研究者間でこれらを共有可能にすることも必須である、と癌治療・診断部門で消化器系臨床試験のNCI担当業務を統括するDr. Jack Welch氏は指摘している。

Welch氏はさらに、「膵臓癌は困難な疾患であり、課題の大きさを考えると、広い支持基盤と協力体制が求められます」と続けた。「本報告書で想定されている併用療法を実現するためには、製薬企業、研究者、規制当局は、早い段階から協力し、柔軟性をもって対応することが必要となるでしょう。」

本報告書は、NCI Gastrointestinal Cancer Steering Committee(消化器癌専門委員会)が招集し、研究者、臨床医、患者支援者、製薬企業の代表者が参加した2007年の会議を元に作成されたものである。この”Consensus Report of the National Cancer Institute Clinical Trials Planning Meeting on Pancreas Cancer Treatment(NCI膵臓癌治療臨床試験計画会議における統一見解報告書)”は、Journal of Clinical Oncology (JCO)誌の電子版10月26日号に掲載された。

JCOの同号に報告されている別の論文には、膵臓癌治療に関わる多くの人々が今後回避すべきと考える試験計画の1例を示している。これまでの試験と同様に、実施した実験的治療(この試験では、ゲムシタビン(ジェムザール)とカペシタビン(ゼローダ)の併用と、ゲムシタビン単独との比較)が患者におよぼす効果は、わずかであるか、まったく得られていなかったのである。

この試験は英国のMedical Research Council(MRC:英国医学研究審議会)によるものであるが、ゲムシタビンとカペシタビンを併用してもゲムシタビン単独に比べて全生存率が改善されなかった。しかし、他の基準によれば統計的有意差が認められる。すなわち1カ月に満たない期間ではあるが、この併用療法により疾患増悪までの期間に延長が認められた。

「医師の判断がなくても、この試験でみられた群間差が極めて小さく、実際には臨床的有用性は得られていないことがわかるでしょう」とPhilip氏はコメントしている。「われわれは、統計的有意であることと、患者にとって有意義であることとの違いを明確にする必要があります。」

付随するJCOの論説によれば、膵臓癌の臨床試験に関わる多くのグループが、大規模試験で得られた成果が少ないことを過去の教訓とし、すでに治療法の開発および試験のために新たな考え方を採り入れ始めている。著者らは、膵臓癌を対象に計画されたすべての臨床試験において、本報告書の推奨事項を積極的に検討する必要があると強調している。

腫瘍外科医であり、本報告書の共著者であるカリフォルニア大学サンディエゴ校のDr. Andrew Lowy氏は今後の数年間を楽観視している。「われわれの膵臓癌に対する理解は、かつてないほど深まっており、理論的に同定された分子標的を対象とするさらに新たな薬剤も得られています」と電子メールに記している。

「膵臓癌への認識は医療の世界でますます高まっており、公的支援が増えれば一般に研究資金も増加することになります。これはわれわれの前進の助けとなるでしょう」と続けられている。

—Edward R. Winstead

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波多野 淳子 訳

鵜川 邦夫(消化器内科医/鵜川病院)監修

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