2009/11/17号◆クローズアップ「女性が乳房切除術を選択する理由」 | 海外がん医療情報リファレンス

2009/11/17号◆クローズアップ「女性が乳房切除術を選択する理由」

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2009/11/17号◆クローズアップ「女性が乳房切除術を選択する理由」

同号原文 

NCI Cancer Bulletin2009年11月17日号(Volume 6 / Number 22)

 

 

 

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~

 

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クローズアップ

女性が乳房切除術を選択する理由

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1980年代以降、手術手技、放射線療法、およびホルモンと化学療法の併用療法における進歩により、新たに早期乳癌と診断された女性の意志決定の状況は変化した。乳房温存手術は、乳房組織を温存すると同時に乳癌の再発および乳癌による死亡が減少する点において、胸筋温存乳房切除術と同程度の効果があることが研究で明らかにされたことにより、乳房温存手術後に放射線を照射する療法が多くの女性に望ましい治療過程となった。

その当時、乳房切除術の割合は「ほぼ100%から急落し」約30%まで低下し、その前後で安定していたようであるとアナーバー市にあるミシガン大学ヘルスシステムのDr. Steven J. Katz氏は述べている。しかし、最新のデータでは、乳房切除術が現在増加している可能性があることが示唆されている。乳房温存手術の適応になると判断される患者が乳房温存手術ではなく乳房切除術を選択する場合、医療従事者はその理由を知りたいと考える。

「ほとんどの外科医は低侵襲の乳房温存手術を支持しています」とKatz氏は述べ、また、医療従事者の中には、乳房切除術の割合が高くなることは「過剰治療、場合によっては治療ミスの表れである」と主張する者もいる。新たに診断された乳癌患者がどのように決断を下すのかという点が議論となる。

「過剰治療に対する不安を軽減する直接的な方法は、乳房切除術のリスクとメリットに関する正確な知識に基づいて女性が自分で決断することです」とミシガン大学内科特任教授のDr. Sarah T. Hawley氏は述べた。

乳房切除術のような侵襲の大きい手術では、回復までにかなりの時間を要し、出血もしくは感染症などの合併症が起こる可能性も乳房温存手術の場合より高くなる。多くの女性は乳房再建を受けることを選択しその結果に満足するが、「乳房切除術の場合、元に戻すことができませんし、ボディイメージの変化および正常な乳房機能の喪失などの心理的な影響が出ることもあります」とHawley氏は述べた。

今年発表された研究の中には、女性の選択に影響を及ぼす可能性がある要因を検討しているものがいくつかある。

外科医がその決断に影響を及ぼしているか?

乳房切除術の割合は全米で大きく異なっており、「手術件数がより多い外科医もしくはがんセンターや大学病院に勤務する外科医の患者は乳房切除術を受ける割合が低い」ことが研究で明らかにされている、とKatz氏は述べた。

乳房温存手術は望ましい治療法であるという考えがほとんどの外科医に広く受け入れられているにもかかわらず、10月14日号 Journal of the American Medical Association(JAMA)誌に掲載されたDr. Monica Morrow氏らの研究乳房切除術を検討している患者に対する一部の外科医の影響が浮き彫りにされている。この研究はまた、乳房切除術が過剰に実施されているかどうかの検討にも役立つ。Morrow氏はスローンケタリング記念がんセンターの乳腺科主任である。

調査は、デトロイトとロサンゼルスのSurveillance, Epidemiology, and End Results (SEER)データベースに含まれる、早期乳癌(非浸潤性乳管癌を含む)と診断された女性1,984人を対象に実施された。人種/民族による違いをよりよく理解するために、研究者らはラテン系アメリカ人女性(502人)とアフリカ系アメリカ人女性(529人)を多く調査した。

調査対象女性の約2/3が乳房温存手術にとどめており、1/3が乳房切除術を受けていた。乳房切除術を受けた女性のうち、13%は主治医の勧めに基づいて決断し、ほぼ9%は担当の外科医からいずれかの手技を勧められることがなかったので患者本人の判断で乳房切除術を選択し、残りの9%は第一選択の乳房温存手術が不成功に終わった後で乳房切除術を勧められた。

そうすると、乳房切除術を受けることに対する明確な臨床上の理由がない場合、外科医は女性の意志決定に影響を及ぼしているのだろうか?「今回の研究では影響を及ぼしていません」と、研究チームの一員であったKatz氏は述べた。「両方の手術に適応となった際に担当の外科医から乳房切除術を勧められた、と報告したのはわずか6.2%でした。」さらに、セカンドオピニオンを求めた患者が異なる手技を勧められることはほとんどなかった。「乳房温存手術を受けることができない医学的な理由がなかった場合、患者にとって外科医が乳房切除術の主な原因ではなかったことは明白です」とMorrow氏は述べた。

「最終的には、外科医の勧める手技が適切でした」とMorrow氏は続けた。同氏は、MRIなどの検査手法を用いるより詳細な術前画像診断は、外科医が乳房温存手術を勧める際もしくは勧めない際に役立つとは考えていない。実際、2008年米国臨床腫瘍学会年次総会で発表され9月1日号Journal of Clinical Oncology誌に掲載された研究では、術前MRIは、過剰診断および過剰治療の一因となることから効果よりも害をもたらす可能性があり、結果的に乳房切除術の割合がより高くなる可能性があることが示唆された。

治療法決定を理解する

乳房温存手術が乳房切除術よりも施行しやすく、同等の効果を生み、そして最終的に推奨できる治療法とされた時期は、実際に女性はどのように意思決定をしているのかについて経験に基づく研究はほとんど行われなかった、とKatz氏は述べた。そのような研究は実施し難いものであるだろうと同氏は説明しているが、最近十年間でより多くの研究が行われてきた。このアプローチは、治療法の決定および治療の質を研究することに専念した、Cancer Surveillance and Outcomes Research Team (CanSORT)と呼ばれる、NCIに支援された新しい研究チームによって主導されてきた。

女性が乳房切除術を選ぶ際に影響を与えるとみられる要因をより注意深く観察するために、Hawley氏はJournal of the National Cancer Institute 誌の10月7日号に掲載された別の研究において、前述したものと同様の研究アプローチを使用した。もう一度述べると、このアプローチはデトロイトとロサンゼルスのSurveillance, Epidemiology, and End Results (SEER)データベースに含まれるラテン系アメリカ人女性とアフリカ系アメリカ人女性を2005年にオーバーサンプリングしたものである。患者は外科医の影響についてどう考えたのだろうか。患者が自分は主たる意思決定者だと感じたとき27%の患者は乳房切除術を選択し、この割合は医師と患者が一緒に意思決定を行うと考えたときには16.8%まで減少し、患者が主たる意思決定者は医師であると認識したときには5.3%であった。

乳房切除術の4分の1は、最初の外科医によって特定のアプローチを奨められることがなかった患者によって選択されたものであるため、再発または放射線治療の影響に関する懸念を含め、患者の優先傾向はおそらく手術を選択する際に重要な役割を担っていると、JAMA誌上の研究において研究者らは結論づけた。共著者であるHawley氏は「これらの患者が外科治療の優先傾向をどのように定式化しているのか評価することは特に重要である」と述べた。(下記図表参照)

JNCI誌上で掲載された上記の研究は、外科の選択の際に患者の家族および友達の役割をおそらく最初に評価したものである。誰かが治療に関する議論に出席しているときには、女性はより多くの場合乳房切除術を受けた。あまり文化変容していないラテン系アメリカ人女性は他者の意見を最も重要視し、極めて多くの女性が意思決定の際、配偶者の意見を考慮した。意思決定の際には配偶者の意見が極めて重要であると話した女性では、配偶者の意見が全く重要ではない、またはほとんど重要ではないとする女性と比較すると、最初に乳房切除術を受けることが少ない傾向にあった。「このことによって、治療について議論する際、また最終的には意思決定の際に他者が果たすと思われる重要な役割が強調される」とHawley氏は述べた。

信条、知覚および証拠

Katz氏は「文字通りの意味では、患者が乳房切除術を選択することは不合理に見えるかもしない。しかしこれには多くの問題が関っている。患者による癌再発の懸念が外科治療の選択に大きな影響を与え、このことが乳房切除術を選択させる可能性があることをわれわれは知っている。政策決定者や医師の中でも、より侵襲性の大きい手術を選択することになった背景にそのような強力な認知的および感情的要因があることを過小評価している可能性がある」と述べた。

「質の高い意思決定は、充分に情報が与えられ、意思決定者の根本的な価値と一致しているものとして定義することができる」とHawley 氏は説明した。また、このことは実際に決定された意思よりも、意志決定の過程が重要であるかもしれないことを示唆している、とKatz氏は述べた。

結果を調査している研究者らは、臨床医が自分の推奨する治療法を強調するためにしばしば使用するデータよりも、患者が直面している要因をどのように理解し、解釈し評価するかによって、患者は治療方法の決定の際により影響を受ける可能性があることを発見した。患者の優先傾向や意思決定の過程に関するそのような知識はリスクコミュニケーションやカウンセリングを向上させる土台となるものである。

— Addison Greenwood

どのような過程で患者は意思決定するかミシガン大学の研究者らは、乳房温存手術または乳房切除術を選択する患者をプロスペクティブに観察し、研究結果における興味深い傾向を発見した。39%の女性は乳房切除術を受けたが、4分の1(10%)のみが乳房温存手術の適応者であるにもかかわらず乳房切除術を選んだ。 残りの29%の女性には、外科医が切除断端陰性にできなかった患者(3%)、乳房温存手術に反する明白な臨床上の指摘を受けた患者(15%)、そして外科手術の前に化学療法によって充分に腫瘍を縮小させることができなかった女性が11%以上含まれている。この結果はThe Breast Journal誌に本年度初頭に掲載された。

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豊、佐々木 了子訳

原 文堅(乳腺腫瘍医/四国がんセンター)監修

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