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2010/07/27号◆スポットライト「脳腫瘍の再発時、新検査が手術の決断を助ける」

  • 2010年8月3日

    同号原文
    NCI Cancer Bulletin2010年7月27日号(Volume 7 / Number 15)


    日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中〜

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    ◇◆◇ スポットライト ◇◆◇
    脳腫瘍の再発時、新検査が手術の決断を助ける

    定期的に悪性脳腫瘍患者の手術を行う神経外科医は、癌が再発した場合(多くの場合再発するが)どの患者が追加手術の候補となるかを学んでいく。こうした外科医の経験に代わるものは存在しないが、再発した多形成神経膠芽細胞腫(GBM、成人で最も多い脳腫瘍)の治療でこの新たな検査が手術でベネフィットを得る患者を選択する一助となるかもしれない。

    検査では容易に入手可能な術前の臨床情報を用いて術後の生存の可能性を数量化する。予後に関する3つの要因(患者がどの程度日々の生活を営むことができるか、腫瘍の大きさ、そして腫瘍が脳の重要な領域内にあるかまたは近くにあるか)によるスケールに基づき予測が行われる。

    「こういったスケールを用いることにより患者とその家族が手術を受けるかどうかを決断しやすくなると思います」とこのスケールを開発したチームを率いた米国立神経疾患・脳卒中研究所のDr. John Park氏は述べた。GBM再発患者34人を対象に行った後ろ向き試験では、このスケールにおいて最も点数が低かった患者が点数が高かった患者よりも長く生存した。この統計的に有意な所見は2つ目の患者群の調査によっても確認された。

    この尺度を用いることにより手術の決定がしやすくなることに加え、臨床試験組み入れ時に患者を階層化する一助となる可能性もある、と7月19日付けJournal of Clinical Oncology誌
    電子版で研究者が述べている。

    「本試験は科学論文にとって多大な貢献となります」とシダーズ・サイナイ医療センターの脳腫瘍センター所長で本研究には参加していないDr. John Yu氏は述べた。「われわれのようにこの種の手術を多く行ってきた医師は患者の具合がどうなるかについて直感でわかるものです。Park氏はわれわれが直感でわかることを取り上げ患者にとって手術が有効なのかどうか決定するためのシンプルなスケールにまとめあげたのです」とYu氏。

    検査の有用性について

    この検査はNIH再発GBMスケールと呼ばれるもので、患者には合計スコアが0から3が与えられる。術後に0ポイントの患者は比較的長く(10.8カ月)生存したが、1から2ポイントの患者は中程度の生存期間(約4.4カ月)で3ポイントの患者は生存期間が短かった(1カ月)。

    生存期間が最も長かったグループの全生存期間の中央値は24.9カ月で、これには診断から追加手術までの期間も含まれる。全てのGBM患者の全生存期間の中央値は約14カ月であった。「リスクがあるにもかかわらず患者の多くが追加手術によって利益を得たということを試験結果は示しています」とPark氏は述べた。

    この試験は患者の生存に関して放射線や化学療法といった術後の治療の役割を評価するようにデザインされていなかった、とYu氏は指摘している。しかし、多くの患者にとって現在可能な治療法は効果的ではないと同氏は認めた。「脳腫瘍には画期的な治療法が必要です」とYu氏。

    Park氏もこの点については同意しており、予後スコアが良い患者は手術を受けたあと、試験的治療を行う適切な臨床試験に参加することを促されるべきだと述べた。

    本試験の確認試験段階において研究者はブリガム&ウィメンズ病院で治療を受けた患者109人にこのスケールを適用した。NIHの患者と同様に、術後の生存期間の中央値においてスコアの最小群と最大群の間で統計的有意差が見られた。

    手術を回避する

    「どの患者が手術を受ける「べきでない」かを見極めることができるということに今回用いたスケールの価値があります。なぜならそれらの患者の延命期間は非常に短いため手術が有用でないのです」とNCI癌研究センターの神経腫瘍支部主任でこの試験の上級著者であるDr. Howard Fine氏は述べた。「もしわれわれが手術による利益が全くないであろう患者に対して手術をせずに済んだのであれば、それはそれでわれわれの仕事をしたということです」と同氏。

    患者の予後を見極めるにあたり遺伝子的およびある種の分子マーカーの開発がこの分野の研究で活発になっている。「腫瘍に関連する遺伝子の知識が増えるに従い患者の臨床パラメータと遺伝子的パラメータを組み合わせて予後判定をより正確なものにする必要が出てきます」とYu氏。「しかし、手術を行うかどうかの決定には臨床パラメータの影響のほうが大きいかもしれません」と同氏。

    さらに本試験結果が毎年脳腫瘍手術を行う件数が少ない小規模な地域病院の外科医に当てはまるかどうかは定かではない、とYu氏は指摘した。したがって本試験は追加的な大規模医療施設に加え、地域病院においても確認試験を行うべきべきである、としている。

    将来について

    新たな治療法が導入されるにつれてスケールも更新または修正する必要がでてくる。Fine氏は、現在予後が最も不良な患者、および現在選択可能な治療法に基づくと手術が有益でないとされる患者にとっても新たな治療法が見つかり、手術が価値のあるものになるかもしれないと説明した。

    「これは現在の神経膠腫治療を考えると非常に重要な試験なのです」とFine氏は続けた。「NIHでは通常、将来の新治療法に力を入れていますが、この試験の意義とは現在の患者の治療を改善する一助となるということなのです」と同氏。

    —Edward R. Winstead

    その他のジャーナル記事:脳腫瘍患者では臨床試験参加に同意する能力が低下している可能性がある新所見によると、脳腫瘍によって認知機能障害が引き起こされ患者が臨床試験などの研究への参加に同意する能力に影響が及ぼされる場合があると示唆されている。7月19日付けJournal of Clinical Oncology誌電子版で発表された今回の試験では、相当数の悪性神経膠種患者で調査研究参加に同意する能力が低下していた。例えば、評価力、判断力、理解力といった認知能力を測るためにデザインされた試験では、一般に対象群より悪い結果が出された。「本試験は悪性神経膠腫患者を臨床試験や他の調査研究に組み入れる際、同意書の問題に注意を払う重要性が強調されている」とアラバマ大学(バーミンガム)の研究者は結論づけている。

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    西川 百代 訳
    寺島 慶太 (小児科/テキサス小児がんセンター)監修

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