2009/12/01号◆癌研究ハイライト | 海外がん医療情報リファレンス

2009/12/01号◆癌研究ハイライト

更新日

Facebookでシェアする Twitterにツィートする LINEに送る print

2009/12/01号◆癌研究ハイライト

同号原文

NCI Cancer Bulletin2009年12月01日号(Volume 6 / Number 23)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~

PDFはこちらからpicture_as_pdf ____________________

癌研究ハイライト

・子宮頸癌検診はより遅く開始し、より少ない頻度でよいと米国産婦人科学会が報告
・長期追跡調査による肺癌の術後補助療法に対する新たな見解
・「水タバコ(Hookah)喫煙は紙巻タバコ喫煙より害が少ない」には根拠がない
・2007年から2008年の喫煙率に著しい変化はない
・訪問看護は癌の症状管理を改善する

子宮頸癌検診はより遅く開始し、より少ない頻度でよいと米国産婦人科学会が報告

米国産婦人科学会(ACOG)が11月20日に発行した最新の根拠に基づくガイドラインによると、パップテスト(子宮頸部細胞診)を用いた子宮頸癌の検診の頻度はこれまでの推奨より少なくすることが可能となっている。これまでは、思春期の女性は性交渉開始後3年以内または21歳のいずれかの早い年齢で検診を開始し、毎年継続するよう勧められていた。今回、AGOGは検診の開始を21歳まで延期し、30歳までは2年に1回受けることを推奨している。その後は、検診結果が3回連続で陰性であれば3年に1回検診を受けるべきとした。30歳以上の女性は、パップテストとヒトパピローマウイルス(HPV)DNA検査の結果が陰性であれば、これらによる検診を3年に1回受ければよい。新しい提案はObstetrics & Gynecology誌12月号に発表される。

これらのガイドラインでは、ほとんどの子宮頸癌の原因であるHPVに対するワクチン接種を受けているかどうかは考慮されていない(いずれ、ワクチン接種を受けた女性の検診頻度はより少なくなるであろう)。免疫力が低下しているなど、ある種のリスク因子を有する女性はより頻繁に検診を受ける必要があると考えられる。子宮全摘(したがって頸部がない)を受けたり、高悪性度の子宮頸部上皮内腫瘍の既往のない女性は子宮頸癌の検診を完全に中止すべきである。

より慎重な方法への今回の変更は、「思春期女性の、経済的、心理的、ならびに将来の出産にかかわるかもしれない不必要な治療を避ける」意図があり、「性交渉を有する思春期女性ではHPV感染率は高いが、21歳未満の女性の浸潤癌は極めてまれである」と、ニュースリリースで説明した。また、若い女性ほどHPVに感染しやすいが、ほとんどの場合その免疫機能により1~2年以内に感染とそれに伴う子宮頸部上皮内腫瘍が消滅する。しかし、その病変を手術により治療した場合、出産適齢期を何年も先に迎える思春期女性は、その後の出産適齢期に高い早産リスクや高い帝王切開の必要性に直面することになる。

長期追跡調査による肺癌の術後補助療法に対する新たな見解

非小細胞肺癌(NSCLC)患者を対象にした手術後の化学療法に関する2つの大規模ランダム化臨床試験の長期追跡調査報告で、異なる結果が示された。特定のNSCLC患者で術後または補助化学療法の使用を強く推奨した臨床ガイドラインの公表から2年後となる今回、これらの結果がJournal of Clinical Oncology誌電子版に発表された。

5年間の追跡調査に基づいた両試験の初回報告では、術後補助化学療法は手術後の経過観察に比較して全生存で統計的に有意な改善をもたらすことが示された。より長期の追跡調査(中央値9.3年)によると、2試験のうち小規模な方のJBR.10試験の結果では、術後補助化学療法で経過観察より全生存が11%改善して、依然その有益性を示した。ステージIIのNSCLC患者で最も大きな生存の改善がみられた。

ところが、もう一方のIALT試験では、7.5年間の追跡後では、全生存はわずかに改善したが統計的に有意ではなく、初期にみられた生存の改善が持続していなかった。これは主に、経過観察群の患者に比較して化学療法を受けた患者では癌に関連しない死亡が過剰に認められたためであった。JBR.10試験で著者らは、他の原因や二次癌による死亡率に群間差はないと指摘した。

この結果は「術後補助療法を評価するには、より長期の追跡調査が必要」であることを示すと、レンガデュショセンター(フランス・サンテルブラン)のDr. Jean-Yves Douillard氏が同号の論説に記している。JBR.10試験ではシスプラチンと併用して第3世代の化学療法剤ビノレルビンのみを使用したが、IALT試験の患者はシスプラチンと併用してビノレルビンを含む4種類の化学療法剤のいずれかの投与を受けた、と同氏は説明した。他の3剤(ビンデシン、ビンブラスチン、エトポシド)に比較して、ビノレルビンの投与を受けた肺癌患者は「長期間の生存が一貫して改善した」と評した。

「IALT試験の長期追跡調査で持続的な有益性を示さなかったことは悩ましいことです」と、NCI癌研究センターの腫瘍内科学支部および胸部腫瘍学課の長であるDr. Giuseppe Giaccone氏は述べた。「しかし、試験で使用された一部の投与法は最適ではありません」と続けた。同氏は最適の補助療法の推奨に同意し、「シスプラチン/ビノレルビンが最も使用経験があり、禁忌でない限りこの投与法を使用すべきでしょう」と述べた。

「水タバコ(Hookah)喫煙は紙巻タバコ喫煙より害が少ない」には根拠がない

水タバコ喫煙が特に青少年の間で世界的な流行となっており、その原因の一部は、この喫煙法は紙巻タバコによる喫煙より毒性物質への曝露量が少なく健康へのリスクが小さいと信じられていることである。しかし、バージニアコモンウェルス大学(リッチモンド)のDr. Thomas Eissenberg氏とベイルートアメリカン大学(レバノン)のDr. Alan Shihadeh氏による最近の試験で、水タバコ喫煙は紙巻タバコより一酸化炭素への曝露量がより多く、ニコチン濃度は同程度で、「煙への曝露は劇的に多い」ことが明らかになった。

American Journal of Preventive Medicine誌12月1日号に発表された試験には31人の成人が参加し、紙巻タバコ1本喫煙後と45分間の水タバコ喫煙後に検査を行った。血中の一酸化炭素濃度は、水タバコ喫煙後に平均23.9 ppm増加したのに対し、紙巻タバコ喫煙後では2.7 ppmであった。水タバコ喫煙で生成される煙の量は紙巻タバコの40倍を超えていた。最高ニコチン濃度は両法で同程度であったが、水タバコのほうが長時間使用するため、「参加者のニコチン曝露量は紙巻タバコの1.7倍である」と研究者らは報告した。

「これらのデータは水タバコのほうが紙巻タバコより致死性が低いとの概念を全く支持しない」とDr.Eissenberg氏とDr.Shihadeh氏は結論づけている。むしろこの知見は他の発表データとともに、「水タバコ喫煙が、紙巻タバコ喫煙と同じく癌、心血管疾患、肺疾患、ニコチン依存症などのタバコが原因の多くの疾患に関与していると示唆するものである」と著者らは強調した。「今日の課題は、現在の水タバコ喫煙を減らすとともに、これ以上広がるのを防止することである」。彼らは、この種のタバコの使用は比較的害が少ないという一般の誤解に医師や保健当局が反論するのにこの知見を役立ててほしいとの希望を表明している。

2007年から2008年の喫煙率に著しい変化はない

米国疾病対策センター(CDC)は、1998年から2008年の間の米国の喫煙率は3.5%の減少であったが、2007年(19.8%)から2008年(20.6%)にかけての成人の喫煙率には著しい変化はなかったと、CDCのMMWR Weekly誌11月13日号に発表した

CDCの報告は、2008年の国民健康聞き取り調査(NHIS)の結果に基づいたものであった。聞き取り対象者は無作為確率抽出によって選び、調査項目には喫煙と禁煙の試みに関する質問が含まれていた。

2008年は、米国成人のうち推定で20.6%(4600万人)が喫煙者であった。その中で毎日喫煙する人は79.8%(3670万人)、ときどき喫煙する人は20.2%(930万人)であった。これまでと同様に2008年の喫煙の普及率は女性(18.3%)より男性(23.1%)で高く、また人種・民族性、年齢、貧困の程度によっても異なっていた。教育水準レベルによる違いは著しく、高校卒業資格 (GED)保持者の41.3%、高校卒業をしていない者の27.5%が習慣的な喫煙者であるのに対して、大学卒業者は10.6%、大学院卒業者では5.7%であった。

1998年から2008年の間の完全禁煙率(かつて喫煙者であったがその後喫煙していない人の率)は、48.7~51.1%とほとんど変化がなかった。そしてここにも教育水準のレベルによる違いがあった。「大学卒業者と大学院卒業者の禁煙率は、常に60%を超えていた」とCDCは発表した。対照的に、「高校卒業同等程度かそれ以下の成人は、習慣的喫煙者のほぼ半数を占めており、最低の禁煙率(39.9~48.8%)であった」。

CDCは、喫煙防止と禁煙を促す集団ベースの効果的な戦略が世界保険機構のMPOWER packageに紹介されており、「いくつかの広告形態を部分的に規制したにもかかわらず、タバコ業界は下層階級や若年者といった社会的に不利な集団や弱い集団をターゲットとしたマーケティングを続けている」と指摘する。

訪問看護は癌の症状管理を改善する

Journal of Clinical Oncology誌11月16日電子版に掲載された研究によると、訪問看護(Home care nursing:HCN)は、経口抗癌剤のカペシタビンを服用している乳癌患者と大腸癌患者の症状管理を改善する。英国の研究者らは、カペシタビンを服用している大腸癌あるいは乳癌の患者164人を無作為に標準ケア群またはHCN群に割り付け、4.5カ月(化学療法6サイクル)にわたって追跡調査を行った。

この研究により、HCN群の患者は標準ケア群の患者に比べて、口腔粘膜炎、下痢、便秘、悪心、疼痛、疲労や不眠の著しい改善がみられたことが明らかとなった。この改善は、最初の2サイクルの治療中が一番顕著であった。さらに標準ケア群の患者は、予定外の医療資源、特に入院日数が大幅に増加した(HCN群患者の57日に対して標準ケア群患者は167日)。

化学療法の最初の週の間は、HCN群患者のところへは、訪問看護と癌看護の訓練を受けた経験豊富な看護師が訪れた。1時間から1時間半の訪問の間、看護師はカペシタビンとその副作用に関する情報を提供し質問に答えた。その後、患者は、看護師から週に1度の電話を受け、副作用の判定とその克服の方法を話し合った。複数の重篤な副作用(グレード3以上)または化学療法に対処することが難しい患者は、その後に訪問看護を受けた。標準ケア群の患者には、主治医から書面と口頭でカペシタビンの情報が提供され、起り得る副作用に対処するための薬が処方された。標準ケア群の患者は基本の評価をされ、その後は医療アドバイスを行わない研究スタッフより週に1度の電話を受けた。

経口抗癌剤は、多くの癌種で次第に標準治療レジメンの一部となってきており、そのため、「在宅患者を支援する方法を見つけることは必須とみられる」と筆者らは記した。彼らは、症状に着目したHCNプログラムは、在宅患者の支援に効果的な方法と思われると結論づけた。

******

榎 真由、Nogawa 訳

後藤 悌(呼吸器内科医/東京大学大学院) 監修

******

printこの記事を印刷する Facebookシェアする Twitterツィートする LINE送る

免責事項当サイトの記事は情報提供を目的としてボランティアで翻訳・監修されています。翻訳の記事内容や治療を推奨または保証するものではありません。

注目キーワード

新着ドキュメント

一覧

週間ランキング

  1. 1乳がん化学療法後に起こりうる長期神経障害
  2. 2非浸潤性乳管がん(DCIS)診断後の乳がんによる死亡...
  3. 3がんに対する標的光免疫療法の進展
  4. 4若年甲状腺がんでもリンパ節転移あれば悪性度が高い
  5. 5BRCA1、BRCA2遺伝子:がんリスクと遺伝子検査
  6. 6「ケモブレイン」およびがん治療後の認知機能障害の理解
  7. 7治療が終了した後に-認知機能の変化
  8. 8リンパ腫患者の余命は、診断後の無再発期間2年経過で通...
  9. 9コーヒーが、乳がん治療薬タモキシフェンの効果を高める...
  10. 10ASCO、がん臨床試験に対する適格基準の緩和を推奨

お勧め出版物

一覧

arrow_upward