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腎癌の根治手術は慢性腎疾患を引き起こす危険性/スローンケタリング記念がんセンター

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腎癌の根治手術は慢性腎疾患を引き起こす危険性/スローンケタリング記念がんセンター

原文
腎癌の根治手術は慢性腎疾患を引き起こす危険性
スローンケタリング記念がんセンター*(MSKCC)
2006年9月5日

2006年9月5日、ニューヨーク-ここ40年の間、腎臓にできた単独の小さな腫瘍の治療には、腎臓全体を摘出することが、標準治療であった。しかし、Lancet Oncology誌の9月号に掲載された、メモリアル・スローン・ケタリングがんセンター(MSKCC)の泌尿器科医らによる後ろ向き研究が、この慣習を評価し直す必要があると示唆している。イメージング技術の進歩により、ほぼ70%の腎癌患者では、腫瘍が非常に小さい(4cm未満)うちに発見されており、外科医が切除の範囲を狭めてより良好な結果を出すことを可能にしている、と研究者らは付け加えた。

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本試験により、腫瘍以外は正常な2つの腎臓をもつ患者に対して、小さな腫瘍を取り除くために、腎温存手術(腎部分切除術)を受けた患者は、腎臓全体を摘出(根治的腎摘除術)された患者に比べ、慢性腎疾患を発症する確率が3分の1であることが分かった。3年間慢性腎疾患を発症しない確率は、腎部分切除術を受けた患者では80%であったのに対し、根治的腎摘除術た患者では35%であった。実際、根治的腎摘除術が、慢性腎疾患発症の有意な危険因子であることが示された。

「私達の試験結果は、小さな腎腫瘍がある患者の、手術前のベースラインでの腎機能は、以前に認識されていたよりもずっと低いことを示しています。小さな腎腫瘍の治療として最もよく行われている根治的腎摘除術を受ける患者は、腎部分切除術を受ける患者に比べ、手術後に慢性腎疾患を発症する確率が有意に高くなります。」と、本試験の代表執筆者であるWilliam C. Huang医師は説明した。

MSKCCで実施された662人の患者の後ろ向き試験では、腎臓から小さな腫瘍(4cm未満)を切除する手術を受ける前に、26%もの患者が慢性腎疾患を患っていたことが示された。更に、腎臓全体を摘出された患者では、慢性腎疾患を発症する確率が2倍以上であった。

MSKCCのような米国の三次医療センターで実施された腎臓手術のうち、腎部分切除術は30から65%を占めるが、Urology誌に報告された全米入院患者サンプル(Nationwide Inpatient Sample)の最新の分析では、1998年から2002年の間に米国で行われた腎癌手術全体のうち92.5%が、根治的腎摘出術であった。同時期における英国保健省の統計でも、同様の傾向がみられた。2002年には、英国で行われた腎癌手術のうち96%(2671件)が腎全摘手術であり、4%(108件)が腎部分切除術であった。

「私達のセンターやその他の施設から、腎部分切除術が、小さな腫瘍に対して、腫瘍の有効な局所コントロールができ、根治的腎摘出術と同等の生存率をあげることができる、という知見が積み上げられてきました。ですが、MSKCCで行われる腎腫瘍手術の約70%が腎部分切除術である一方で、米国やそれ以外の国の全国的データベースによると、80%以上の患者が、小さな腎腫瘍であっても、腎臓全体を摘出するより根治的な手術を不必要にうけていることが示されています。このことに対する説明としては、腎部分切除術の方がより複雑な手術であることがあげられるかもしれません。」と、本試験の上位執筆者であるPaul Russo医師は述べた。

糖尿病、高血圧、喫煙など慢性腎疾患の危険因子の多くは、腎腫瘍患者に頻繁にみられ、そのことが、根治的腎摘出術後大半の患者が、慢性腎疾患を発生するリスクを負う理由であるかもしれない。慢性腎疾患は腎機能の喪失をもたらす可能性があり、腎不全を引き起こすこともある。慢性腎疾患に関連した合併症には、貧血、高血圧、栄養失調、神経障害や生活の質(QOL)の低下、更には心疾患や死亡などがある。

「私達の試験は、小さな腫瘍のために腎臓全体を摘出すると、腎機能に深刻な影響を与え、慢性腎疾患のリスクが高まることを、初めて明示しました。慢性腎疾患は、心血管系の疾患や、入院、更には死亡のリスクを高めます。腫瘍部分だけを切除することによって、患者の正常な腎機能を維持でき、その結果長期の慢性腎疾患の発症を防げる可能性が高まります。」と、外科部門の主任で、本試験の共著者であるPeter T. Scardino医師は述べた。

本試験の共著者は、MSKCCのGanesh V. Raj博士、Angel M. Serio博士、Mark E. Snyder氏、Andrew J. Vickers博士、タフツ・ニューイングランド医療センターのAndrew S. Levey博士である。米国国立衛生研究所(NIH)のグラントにより、一部資金提供を受けた。
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(Oonishi 訳・Dr.榎本 裕(泌尿器科) 監修)

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