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2009/12/15号◆スポットライト「サプリメントの科学的応用と癌予防」

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2009/12/15号◆スポットライト「サプリメントの科学的応用と癌予防」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2009年12月15日号(Volume 6 / Number 24)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~

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スポットライト

サプリメントの科学的応用と癌予防

SP-raspberry

肥満の回避、定期的な運動、果物と野菜中心の食生活により、癌を含む多くの疾患リスクが低下することが数多くの研究で示唆されている。しかし、肥満の蔓延が示すように、幅広い層の人がそのような健康的ライフスタイルを受け入れるには大きな障害がある。そこで癌研究者は、疫学的研究および動物モデル試験において、癌の経過に強い影響を及ぼすことが示唆された特定の栄養素が癌リスクを低下させるかどうか、長年にわたって検討してきた。癌研究者はこの研究から多くのことがわかったと話しているが、治療法の研究と同様、新発見のたびに新たに注目すべき領域やその他の進歩の可能性が示される。

有望な生物活性物質が次々現れるため、多くの予防研究者が注目しているのは、例えばブロッコリーやブロッコリースプラウトに含まれる天然化合物スルフォラファンのような物質が試験管または動物モデルで癌細胞を死滅させるかどうか(実際、非常に有効である)ではなく、体内の分子レベルでいかに癌細胞を死滅させるか、また、高い効果を示す癌細胞があるかのどうかや、その期待した効果があることを早い段階で判別する介入方法はあるのかどうかである。

予防:その複雑な領域

大規模な予防試験において、ビタミンA、C、E、セレニウム、ベータカロチン、葉酸などさまざまなサプリメントについて検討されている。少なくとも1件の試験では、サプリメントの併用で癌による死亡が減少したが、他のいくつかの試験では癌による死亡の減少はみられず、若干リスクが上昇した試験もあった。

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これまでの「ヒトにおける示唆に富むエビデンス」が裏付けとなり、こうした大規模な臨床試験が行われたのだと、NCI癌予防部(DCP)部長Dr. Peter Greenwald氏は述べた。さらに、何百万もの人が癌予防など健康が改善すると信じてサプリメントを摂取しており、だからこそ生物医学研究の最も信頼できる判断基準であるランダム化臨床試験からデータをとることが重要である、と述べた。

しかし、癌の複雑さを考えると、「微量栄養素の多量摂取は癌リスクに影響するのではないか、という疑問が出てきます」とフレッド・ハッチンソン癌研究所で長期にわたって癌予防について研究しているDr. Alan Kristal氏は認めている。

DCP栄養科学研究グループ主任Dr. John Milner氏は、「栄養を利用した癌予防が追究されるなかで明らかになったのは、これまで過小評価されてきた癌の複雑さだけではありませんでした。それ以上に、いろいろな意味で、人間が生きるのに必要な食物が、これまで考えられていたよりはるかに複雑なものであるということがわかってきたのです」と述べた。

その複雑さに対して、研究者らは現在さらに直接的に取り組んでいる。

小さな進歩

オハイオ州立大学のDr. Gary Stoner氏らは、この10年間ブラックラズベリーの癌予防の可能性について研究してきた。研究の大部分で使用したのは、重量の85~90%を占める水分を取り除いたブラックベリー粉末であった。

まず実験室での研究および動物モデル試験に着手し、これらの試験でベリー粉末に予防の可能性が認められると、小規模なヒト対象試験に進めた。初期段階のヒト対象試験で食道癌、口腔癌、および大腸癌の予防に関して有望な結果が若干得られた。小規模な皮膚癌予防試験も間近に迫っている。

口腔癌の場合、オハイオ州の研究チームが生成したケンタッキー大学の共同研究者らとともにベリー粉末を含んだジェルを口腔の前癌病変に投与した。6週間投与すると病変が約50%縮小し、細胞の増殖に関連する遺伝子の活性が低下した。この結果に基づいて、NCIはジェルの第2相プラセボ対照試験に資金を提供している。

「お金をかけないもっと小規模な試験でも、何らかの作用があることを立証することは可能です。患者20人を対象とした試験で増殖抑制が認められれば、そこからよい着想が得られるでしょう」と、Stoner氏は述べている。

「小規模なヒト対象試験において、発癌プロセスについてわかっていることを統合し、微量栄養素または生物活性物質を用いてそのプロセスを操作できるかどうか確認できます。その場合も、さらなる試験やより規模の大きな試験につながるような意味のある結果を出せるように慎重にデザインしなければなりません」と、Kristal氏は強調している。

例えば、UCLAジョンソン総合がんセンターのDr. William Aronson氏は、オメガ3多価不飽和脂肪酸を豊富に含む魚油サプリメントに関する第2相臨床試験を主導している。この試験では前立腺を除去する予定の前立腺癌男性を、魚油サプリメントを含む低脂肪食群または標準的な西洋食群のいずれかに割り付けている。試験期間は4~8週間とした。

研究では、手術前後に採取した組織および血液試料の分析により、低脂肪食と魚油を併用することで血中および組織中の前立腺癌の進行と関連のある特定のタンパク質濃度が変化するかどうかの確認を目的としている。「そのようなバイオマーカーは食事介入法の作用している状態を示す可能性があり、ヒトにおける長期の食事介入試験の必須要素となるでしょう」と、Aronson氏は説明している。

「ここにも課題はあります。バイオマーカー候補が発見されても、バイオマーカーの変化によって疾患の経過が変わることを実証する必要があるからです」と、Kristal氏は述べた。

短期の試験とすでに実施された大規模な試験で得られた組織試料の分析のいずれも、反応のばらつきという別の重要な課題に取り組む助けとなると考えられる。「薬剤を使用した試験でも、有効性100%という結果は出ません。反応する人もいる、という結果が得られるだけです。多くの栄養素に同じことが言えます」と、Milner氏は述べている。

「この研究はすべて適正な方向に向かっており、これらの栄養介入法については第2相試験および第3相試験で検討する方向です。癌リスク、機序、およびヒトでのデータと関連があるとされる生物学的エンドポイントに対する影響を明確に証明する試験があれば、それは大変有用な情報になります」と、 Greenwald氏は強調している。

第3相試験へ

さらに多くの初期段階の試験が行われる予定であるが、当分野の専門家は、大規模な第3相試験はやや少なくなるだろうということで意見が一致している。そのような試験の1つであるビタミンDおよびオメガ3に関する試験(VITAL試験と略す)は、2010年1月に計画している参加者20,000人のうち第一陣の登録を開始する予定である。NCIが支援する本試験では、65歳以上の女性および60歳以上の男性において、ビタミンDおよび魚油のサプリメントの単独または併用での定期的使用が全癌リスク(ならびに心疾患および脳卒中のリスク)を低減するかどうかについて検討する。

「このような性質の試験を行う機会は限られています」と、本試験の首席研究者でハーバード大学ブリガム&ウィメンズ病院所属のDr. Joann Manson氏は述べている。同氏によればわずかこの2年で、「ビタミンDおよび魚油のエビデンスはこの規模の試験を立ち上げるのに充分な閾値に達した」という。さらに、研究者があまりにも先延ばしすると、「これらのサプリメントを服用する人が増えて、このような試験はもはや実施できなくなってしまいます」と主張している。

サプリメントの売上データがManson氏の懸念を裏づけている。Nielsen社によると、ビタミン類およびサプリメントの2008年6月から2009年6月までの売上は前年度を5%上回り、総計15億ドルにのぼった。ビタミンDと魚油は売り上げのトップを誇っている。

VITAL試験の研究者は、一部の参加者から採取した血液を分析し、25-ヒドロキシビタミンD(循環血液中のビタミンDの前駆物質)およびオメガ3のようなマーカーの初期濃度が疾患のリスク低下と相関しているかどうか確認する予定である。また、本試験はマイノリティの参加者を多数募集することに特に力を入れているため、研究者は参加者の人種や民族といった背景がサプリメントに対する反応に影響を及ぼすかどうか、また、サプリメントの消費が人種ごとの健康の差を縮小するかどうかも分析できるようになっている。

「一部の試験のように急速な進歩はみられないかもしれないが、進歩しつつあります。今後5年間でわれわれは非常に有意義な進歩を遂げ、より規模の大きな試験に組み込める重要な情報を得られるでしょう」と、Aronson氏は述べた。

—Carmen Phillips

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北本 明子 訳

橋本 仁(獣医師)監修

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