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2010/08/10号◆スポットライト「米国国立癌研究所(NCI)の癌情報サービス:全国に情報と支援を」

  • 2010年8月17日

    同号原文
    NCI Cancer Bulletin2010年8月10日号(Volume 7 / Number 16)


    日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中〜

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    ◇◆◇ スポットライト ◇◆◇
    米国国立癌研究所(NCI)の癌情報サービス:全国に情報と支援を

    リック・ムハ氏は活力に満ちた人生を送ってきた。これといった原因もないのにウエストラインが太くなっているのに気づいたときも、彼は真っ向から取り組もうとした。ある夜、長いランニングをこなした後に、ストレッチをしていたムハ氏は腰に妙なものを触った。それは異常な硬さだった。

    「私は彼のそばへ行って手を触れたところ、硬いしこりがありました」と、妻でNCIの職員でもあるキャシー・ムハさんは言った。その夜、夜間診療所でのX線検査で、夫の腰には大きな腫瘍があることが判明した。

    「そこから、夫の病状は急激に進みました」と彼女は語った。「私は、どうするべきか途方に暮れ、これから直面する事態に備えるためにどんな情報が必要なのかもわかりませんでした。NCIで働く者として、毎日、何千人ものアメリカ人が同じような感情に向き合っていることは知っていました。しかし突然、打ちのめされるような現実がわが身に降りかかり、それがどれだけ大きな打撃であるかがわかりました」。

    このような、多くの人が直面する状況のためにNCIの癌情報サービス(CIS)コンタクトセンターがあるのだと、プログラム局長であるマリアン・モンロー氏は述べた。「コンタクトセンターでは一人一人のニーズに合った情報を個別に提供します」と、同氏は説明した。「文面には残さず、会話や提供された情報は完全に秘密厳守とされます。私たちの情報スペシャリストは必要なだけ時間をかけて、相談者が自身の状況を良く理解できるよう援助します」。

    支援のための訓練を受けた情報スペシャリスト

    35年間、癌について疑問を持つ人のために、NCIのCISコンタクトセンターは電話一本で通じるようになっている。1975年に設立されて以来、CISは1千万人以上の相談に応じてきた。相談者自身が癌と診断された場合でも、愛する誰かがが癌に侵された場合でも、無料でサービスを受けることができる。

    「癌は誰にもありえる病気ですから、相談者が治療についての十分な情報を得たうえで判断をするために、思いやりがあり、高度な訓練を受けた、情緒豊かな癌情報のスペシャリストが回答したり情報提供することが必要だといえるでしょう」と、NCIの公衆情報・情報源管理オフィス(Public Information and Resource Management)の次長であるマリー・アン・ブライトさんは述べた。

    NCIのCISはワシントン州シアトルのフレッドハッチンソンがん研究センターにあり、看護およびソーシャルワークといった背景をもった66人の情報スペシャリストが毎年、何千もの電話やLiveHelpでライブチャット相談や、電子メールに対応している。

    相談者と話をする情報スペシャリストは、6週間にわたる初期トレーニングを受ける。癌や関連のトピックについて、また、NCIウェブサイトのさまざまな情報源から相談者が必要な情報を得られるよう案内する方法を学習する。しかし、癌についての最新情報を提供することに加えて、情報スペシャリストは、相談者の話によく傾聴するとブライトさんは説明した。「私たちの情報スペシャリストが配慮するのは情報の正確さについてだけではありません」とブライトさんは述べた。「情報をどのように伝えるのか、サービスを受けた相談者がどのように感じるのかといったことにも気を配ります」。連邦政府の中でNCIのCISは、利用者の非常に高い満足度を得ていることがそれを証明していると彼女は続けた。

    CISでの2年の経験を積んだ情報スペシャリストであるリア・カウンツさんによれば、電話で相談に応じた人の多くにとって、一番辛い時期は診断を受けた直後であるという。「癌という診断を受けるのは初めてのことで、その精神的ストレスに対処しながら治療の選択肢についても考えなければならないのは、大変な負担です」と彼女は述べる。「打ちのめされている相談者の状況を少しでも改善する助けとなることで、私たちのサービスが本当に人々にとって役立つのです」。

    CISコンタクトセンターは参加可能な臨床試験についての情報も提供している。こういった情報について、必ずしも医師は患者に説明をしないのだと、NCIの公衆衛生アドバイザーであるデブ・ピアソンさんは述べた。「私たちの使命は、NCIとそこで行なわれている研究を支援することです。また癌治療法の臨床試験については、可能であれば最初から患者に伝えておくべきです」と、同氏は述べた。「人々が臨床試験に参加するようになれば、研究が進むことになります」と強調した。また臨床試験は最善の治療選択肢となるかもしれない。

    家族の長い道のり

    NCIの職員として、ムハさんは夫が診断を受ける以前からこのサービスについては良く知っていた。しかし彼女は認める。「癌という言葉を耳にした時、1-800(※米国内フリーダイアル)に電話することに相当な不安を抱きました。そして突然、私たちは異次元の世界に押し出されたのです」。

    夫の病気の間に、ムハさんはCISコンタクトセンターに5回の電話をしている。診断から長期の生存権問題に至るまで、癌のすべての段階で、サービスは有用であったと彼女は語った。「私たちが受けた支援は信頼が置けるもので、秘密も保持され、思いやりがありました。家族が癌との長い道のりを乗り切れるよう、情報スペシャリストは最新の医学情報を用いてくれました」。

    「CISに電話をして、最も助けられた部分は、治療の選択肢を理解できるように援助してもらったことでした」と、彼女は続けた。「夫に適した治療の選択肢についての知識を持ち、聞くべきこともわかった上で診察室を訪ねることができました。また決めたことが正しいことだったのかの確信もありました。」

    コンタクトセンターは夫婦に対して、子供の年齢に応じてどのように状況を説明するかを解決する手助けもした。また、コンタクトセンターは全国から利用できるので、夫の状況を各地の近親者に説明する代わりに、単にCISのコンタクトセンターへ直接問い合わせるように頼むことができた。

    「一貫性、情報の質、同じ人が親身になって聞いてくれることが私にとっては大きなことでした。それが人々に電話を勧める理由です」と、彼女は述べた。

    多面的な援助の手段

    長年にわたりCISは多くの変革を行い現在の形になった。スペイン語で話す相談者に対応するバイリンガルの情報スペシャリストがCISに初めて加わったのは、25年前のことであった。またCISは現在、多くの相談者に支援と情報を提供できるように受付時間を以前より延長(東部時間の朝8時〜夜8時まで)している。1-800-4-CANCERへの電話相談に加えて、LiveHelpを使用してオンラインで情報スペシャリストとチャットをすることもできる。質問は電子メールで送ることもでき、さらにはNCIが最近設けたFacebook(フェイスブック)のページ上でも質問ができるようになった。

    「コンタクトセンターは人々に総合的な対応をしています」と、ピアソンさんは述べた。それは、患者に起きるだろう症状から、経済的な質問、担当の医療従事者が忙しすぎて提供できないような情報の案内にまで至っている。

    ムハさんは、家族が最も困難な経験を乗り越えるためにCISが役立ったと評価している。「CISのようなサービスは奇跡を起こすものではありません。しかし、利用者が正しい判断をし、有用な資源を活用できるよう情報を与えてくれます」と彼女は述べた。「それが素晴らしいところなのです」。

    —Sarah Curry

    米国国立癌研究所(NCI)癌情報サービスへの電話の音声クリップ
    電話主からの質問電話主 #1: 僕の…彼女が肝癌になって、化学療法を受けるのですが、肝癌についての情報はありますでしょうか?電話主 #2: もしもし…卵巣癌と診断されたのですが、もっと詳しい情報をいただけますか? ホームページ上ではたくさんの情報を得ることはできるのですが…最初に何を調べればいいのかわからず困っています。

    電話主 #3: 昨日、IV期の咽喉癌と診断されました。医者の話によれば、歯を全部抜いて、2段階の手術を行い、その後3日間…化学療法を受けなければならないそうです。でも、保険に入っていないので、どうしたらよいでしょうか。

    電話主 #4: 幼いころからずっとタバコを吸ってきて、やめる努力をしたこともありますが、今回またやめようと思ったのは、娘がタバコを吸い始めたことを知ったからです。

    電話主 #5: 癌サバイバー本人ですが、非ホジキンリンパ腫について何か新しい情報はありますか。

    情報スペシャリスト: お尋ねしますが、乳癌と診断されたましたか?

    電話主 #6: 今朝、診断されました。

    情報スペシャリスト: それは…残念です。とてもショックだったことと思います。どんな情報をお探しですか?

    電話主 #6: ええと…病期、質問事項、危険因子とか…でも、何だかよくわかりません。

    電話主 #7: 未分化星細胞腫と診断された7歳の孫のことについて電話しています。

    電話主 #8: あの… 妻が大腸内視鏡検査を受けて、医者がとても大きなポリープを取り除いたのですが、正直よく意味のわからない言葉を医者はたくさん話していました。こちらがわかるようにはっきり説明してくれたかという意味では、医者はあまり役に立たなかったので、何か他の情報源があるかどうか探していました。このとても大きなポリープの生検が行われたのですが、前癌細胞が見つかったと医者は言っていました。でも、正確にどういうことなのかよく分かりません。

    電話主 #9: 子宮頸癌になるヒトパピローマウイルスの種類についての情報をいただけますか。

    電話主 #10: 再発した甲状腺癌の患者さんが臨床試験へ参加されるのを手伝っているのですが。

    電話主 #11: 51歳になります。子宮の完全摘出と腫瘍を切除したばかりなのですが、3期の…卵巣癌が見つかりました。

    電話主 #12: エコー検査を行った時点で、結節が嚢胞、腫瘍、それとも癌であるのかわかるものですか?

    情報スペシャリストによる回答

    情報スペシャリスト #1: インターフェロンが治療法となります。それは生物学的療法とよばれています。基本的に生物学的療法というのは、自己の免疫システムを使って癌細胞を攻撃するのを助ける治療法です。

    情報スペシャリスト #2: 癌が発症あるいは再発する時、癌が転移する最も一般的な場所の1つが肺です。しかし、それらの癌細胞は同じものです。つまり、それは2次性の肺の原発癌ではありません。実際、それは肺に転移した咽頭癌そのものなのです。

    情報スペシャリスト #3: 膵臓癌の治療が困難なことは知られていますが、残念ながら進行した段階で発見されることが多いです。ここにある情報によりますと、この癌は化学療法にあまり反応しない傾向があります。また、患者さんが臨床試験への参加を検討されることを強くお勧めいたします。

    電話主からの締めくくりのコメント

    電話主 #1: ありがとうございます。

    電話主 #2: それこそ、探していた回答です。

    電話主 #3: 感謝します。本当に。ありがとう。

    電話主 #4: 夫が病気だったので1990年代からずっと利用していますが、いつもとても参考にさせていただいております。

    電話主 #5: お話を聞いていただきましてありがとうございます。

    電話主 #6: いろいろなお力添えをいただき感謝しております。

    電話主 #7: ご助力ありがとうございます。

    情報スペシャリスト: お役に立てて幸いです。

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    岡田 章代 訳
    河原 恭子 校正
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