2009/12/15号◆癌研究ハイライト | 海外がん医療情報リファレンス

2009/12/15号◆癌研究ハイライト

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2009/12/15号◆癌研究ハイライト

同号原文|  

NCI Cancer Bulletin2009年12月15日号(Volume 6 / Number 24)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~

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癌研究ハイライト

・骨治療薬と乳癌発症率低下との関連性
・米国における癌の発症率および死亡率が2006年まで持続的に低下
・ニロチニブは慢性白血病の初期治療に有効かつ安全
・アンドロゲン除去療法は心血管疾患および糖尿病と関連
・抗酸化サプリメントが大腸における前癌性病変の再発を予防する可能性

骨治療薬と乳癌発症率低下との関連性

女性の健康イニシアチブ(Women’s Health Initiative:WHI)試験の新しい解析によると、骨の健康を改善するためのビスフォスフォネート製剤の使用によって浸潤性乳癌の発症率が同薬を服用しない女性と比較して約33%低下した。2009年度予備的ではあるが、本所見からこのように一般的に使用される薬剤が乳癌予防の役割を担っている可能性が示されたと、CTRC-AACR サンアントニオ乳癌シンポジウムで報告された。

ビスフォスフォネート剤は主に骨粗鬆症の治療に用いられているが、癌の病態をもつ患者における骨密度関連の治療にも用いることができる。複数の実験室での研究で、これらの薬剤に抗癌作用がある可能性が示唆されており、その関連性については生物学的説明が得られていると思われる。

ハーバー・UCLA医療センターにおけるロサンゼルス生物医学研究所(Los Angeles Biomedical Research Institute)のDr. Rowan Chlebowski氏らはこの関連性を突き止めるため、WHIの試験対象である女性151,000人のデータを分析した。試験への登録時にビスフォスフォネート剤を使用していた2,216人のうち64人が乳癌を発症した。また、これらの癌の大半(50人)はエストロゲン受容体陽性であった。

本結果によると、経口ビスフォスフォネート剤(主にアレンドロネート[フォサマック])の使用者のうち、浸潤性乳癌の発症率が非使用者と比較して32%少ないと解釈できる。サンアントニオで発表された2つ目の試験では、少なくとも1年間ビスフォスフォネート剤を使用したイスラエル人女性のうち、閉経後乳癌の発症率が非使用者と比較して30%近く低下した。

NCI癌予防部門および同研究所のWHI連絡部門のDr. Leslie Ford氏によると、両試験ともランダム化比較対照試験ではないため、仮説生成型と考えるべきであり、根拠に乏しい。「1つの問題は、ビスフォスフォネート剤を服用する女性は低エストロゲン状態にあるために骨密度の低い場合が多いことである。そのため、これらの女性ではビスフォスフォネート剤を服用していない女性と比較して乳癌のリスクが低いのであろう」と同氏は述べる。

現在進行中の臨床試験では、乳癌の補助治療におけるビスフォスフォネート剤の役割について検討している。試験結果にて、同薬を服用する女性では対側(病巣と反対側)乳房における癌発症率が非服用者よりも低いと示されれば、これは「非常に興味深い所見であり、これまでの試験結果の強力な裏づけとなるであろう」と、同氏は述べる。さらに、予防状況におけるランダム化比較対照試験が同薬を標準治療とするうえで必要であるという。

ビスフォスフォネート剤は上顎の骨壊死と 関連しており、FDAは2008年1月にこれらの薬剤の筋骨格関連副作用について警告を出した。1年後、FDAのDr. Diane Wysowski氏は、経口ビスフォスフォネート剤の服用患者における食道癌罹患および死亡のリスク上昇を警告した

米国における癌の発症率および死亡率が2006年まで持続的に低下

米国では2006年までの間、癌の新規症例(発症率)および癌に因る死亡(死亡率)の全体的比率は顕著に低下し続けている。この理由は主に、男性における肺癌、前立腺癌および大腸癌、女性における乳癌および大腸癌の発症率低下である。あらゆる癌の新規診断率は低下し、1999年~2006年では平均してほぼ毎年1%の減少である。2001年~2006年では、癌に因る死亡率は毎年1.6%の低下となった。NCI、CDC、米国がん協会および北米がん中央登録所協会は、これらの結果を年次報告「Annual Report to the Nation on the Status of Cancer(1976~2006)」に報告し、Cancer誌電子版12月7日号に公表した。

本年度の報告書では、大腸癌(CRC)の傾向に関する特別な項目を設けて特集している。最新情報を収集している間、CRCの新規発症率は男性で年間3.0%、女性で2.2%低下し、CRCに因る年間死亡率は男性で年間3.9%、女性で3.4%低下した。NCIのSEERプログラムおよびCDC のNational Center for Health Statistics からのデータをもとに、NCIのCancer Intervention and Surveillance Modeling Network(CISNET)コンソーシアムのマイクロシミュレーションモデル(MISCAN-Colon)を用いて、変動可能な危険因子(肥満、喫煙および食生活)、スクリーニング検査および治療における歴史的変化が過去のCRC発症率および死亡率の傾向におよぼす影響を推定し、2020年までの死亡率の将来的傾向を予測した。

1975年~2000年におけるCRC死亡率低下26%のうち、MISCAN-Colonモデリングの推定では、およそ半分以上が検診の増加によるもの(特に、便潜血検査、S状結腸鏡検査および大腸内視鏡検査を受けた高齢男性)、3分の1以上が危険因子の改善によるもの、および残りがより高度な治療によるものであると示された。同モデルでは、「危険因子、検査および治療に関する現在の状況が継続すれば、2000年~2020年のCRC死亡率は全体的に36%低下する」と予測されている。また、癌制御に対する努力が促進されれば、「2020年までに全死亡率を50%低下させることも可能である」と著者らは記している。

NCI所長のDr. John E. Niederhuber氏は、「この全体的な癌発症率低下の持続は、大規模集団を対象としてリスクを低下させるため、早期に発見するため、および新療法を提供するために過去十数年にわたって成功裏に行ってきた積極的努力の成果が証明されたものである。しかし、発症率および死亡率におけるこのような一定の低下状況に満足してはならず、実際、すべての米国人に個別化した診断や治療を提供できるよう努力をもって邁進しなければいけない。われわれの研究努力や理想像によって、向かうべき方向へと急速に進んでいると信じている」と述べる。

ニロチニブは慢性白血病の初期治療に有効かつ安全

慢性期の慢性骨髄性白血病(CML)に対する一次治療としてのニロチニブ(タシグナ[Tasigna])とイマチニブメシル酸塩(グリベック)を検討する第3相試験の予備結果によると、ニロチニブは本疾患に対する初期治療として有効かつ安全である。本知見は、米国血液学会(American Society of Hematology)の2009年度年次総会にて12月8日に発表された。

イマチニブは変異型タンパク質BCR-ABLを特に標的としていることから、抗癌剤開発者にとってモデルとなっていた。しかし、多くの患者が最終的に同薬に対する抵抗性を示したことから、イマチニブ抵抗性CMLを治療するためにニロチニブやダサチニブ(スプリセル)などの第2世代の標的治療薬が開発されるにいたった。

イタリアにあるトリノ大学のDr. Giuseppe Saglio氏率いる国際研究グループは、ENESTnd試験に患者846人を登録した。ニロチニブ300mg 1日2回投与群、ニロチニブ400mg 1日2回投与群またはイマチニブ400mg 1日1回投与群に参加者をランダムに割り付けた。

12カ月間追跡調査を行ったところ、いずれかの用量のニロチニブ投与を受けた患者では、イマチニブ投与患者と比較して、変異型BCR-ABLタンパク質を発現している白血球細胞が減少し、臨床検査で白血病細胞が検出されない(細胞遺伝学的完全寛解)可能性が高かった。ニロチニブ投与を受けた患者では、進行期への病勢進行が認められた症例は少なかった。

副作用の発現件数や副作用に因る投与中止率は両群間で同等であった。ニロチニブは心律動や心機能の問題を引き起こす可能性が知られているが、Saglio氏によると、心臓に関する重度の副作用はENESTnd試験ではこれまでに認められていない。試験責任医師らは、本試験がまだ進行中であると忠告しているが、報告者らは、最終的にニロチニブがCMLに対する標準的な一次治療薬としてイマチニブの代替となる可能性を示唆した。

アンドロゲン除去療法は心血管疾患および糖尿病と関連

前立腺癌の治療としてアンドロゲン除去療法(ADT)を受けた高齢男性では、心血管疾患および糖尿病のリスクが上昇する可能性のあることは、これまでから研究で示されてきた。新たな研究により、ADT を行った全ての男性において同副作用のリスクが高まる可能性が示唆されている。

ハーバード大学医学部のDr. Nancy L. Keating氏らは、今回の試験を実施するために、退役軍人健康庁を通してADTを受けた男性37,443人を対象に観察研究を行った。成果はJournal of the National Cancer Institute誌12月7日号電子版に掲載された。

「アンドロゲン除去療法(ADT)に関連したリスクは依然として定義が不完全なままであるが、ADT によって不利益を受ける可能性があるため、ADTの有益性について一層理解を深めることの重要性が強調された」と同研究者らは結論している。37,443人の対象者のうち39%が治療の一環として何らかのADTを受けていた。そのうち過半数は、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)作動薬による治療を受けていた。この薬剤は身体でテストステロンの産生を遮断するタイプのものである。両側精巣摘除術(精巣の切除)を受けた患者は0.8%にすぎず、経口抗アンドロゲン薬(テストステロンが前立腺癌細胞に結合するのを遮断する薬剤)単独療法が3.3%、アンドロゲン遮断併用療法(抗アンドロゲン薬およびGnRH作動薬の併用)が4.9%であった。心血管疾患または糖尿病の既往のある患者は、解析対象から除外された。コレステロール値およびスタチンの使用などの因子は解析対象に含まれた。

GnRH作動薬による治療は、糖尿病、冠動脈疾患(CHD)、心臓発作、心臓突然死、脳卒中のリスク上昇と関連していた。アンドロゲン遮断併用療法は冠動脈疾患のリスク上昇と関連がみられ、精巣摘除術は冠動脈疾患および心臓発作のリスク上昇と関連していた。経口抗アンドロゲン薬単独療法では、解析対象のいずれのリスク上昇とも関連しなかった。

ADTにより局所進行前立腺癌患者の生存期間が延長することは示されているが、より進展度が低い前立腺癌患者における利益は明確ではない、とDr.Peter C. Albertsen 氏は付随論説のなかで説明している。こうした明確さが欠如しているにもかかわらず、進展度が低い癌患者に対するADTの使用は増加している。

同誌の関連記事アンドロゲン除去療法(ADT)を受けた男性は、筋肉および筋力を失い、骨粗鬆症やその他の筋骨格系の問題が発生する可能性がある。小規模なランダム化試験の結果報告がJournal of Clinical Oncology 誌11 月30 日号に掲載され、ADT 治療中の男性患者に抵抗性運動とエアロビクス運動を合わせた12週間のプログラムを組んだところ、筋力、持久力、生活の質(QOL)の改善に有効であった。通常のケアを受けている男性28人と比較して、運動プログラム群の男性29人のほうが、除脂肪筋肉量、筋力、持久力、平衡機能が高まったほか、精神機能の改善や、疲労と悪心の減少が報告された。筆頭著者のエディスコーワン大学(オーストラリア)のDr. Daniel A. Galvão氏らは、この運動プログラムが前立腺特異抗原(PSA)値に影響しなかったことから、「ADTを受けている前立腺癌患者において、抵抗性運動とエアロビクス運動の組み合わせは安全に施行できる」ことが示された、と結論している。

抗酸化サプリメントが大腸における前癌性病変の再発を予防する可能性

イタリアで実施された臨床試験の長期結果から、抗酸化化合物が大腸癌を予防する一因となる可能性のあることが示唆されている。この試験では、異時性腺腫と呼ばれる、大腸における前癌性病変の切除後5年間にわたり、プラセボもしくはセレンをベースとした抗酸化化合物のサプリメントのいずれかを投与する群に参加者を無作為に割り付けた。抗酸化サプリメントを投与した患者のほうが、プラセボを投与した患者に比べて、腺腫の再発リスクが統計学的有意に減少していた。研究結果は、ヒューストンで開催された米国癌学会の癌予防研究最前線会議(American Association for Cancer ResearchFrontiers in Cancer Prevention Research conference)で報告された。

イタリアのジェノアにある国立癌研究所のDr. Luigina Bonelli氏らは、抗酸化サプリメントの投与を止めた後も、リスクの減少は13年間継続したと報告している。

試験参加者は411人であり、生存データおよび1回以上の全大腸内視鏡検査の結果が311人から得られた。本試験で使用したサプリメントは、Pharma Nord社が製造したもので、セレノメチオニン、亜鉛、ビタミンC、比較的高用量のビタミンAとEを組み合わせたものであった。

全体で、サプリメントを投与した患者では、長期の観察で腺腫を発症するリスクが41%減少した。腺腫は、サプリメント群の4.2%で再発したのに対し、プラセボ群では7.2%であった。この再発率の低下は、過去に進行した腺腫を切除したことのある患者において特に顕著であった。今回の報告では、この切除歴のある患者が抗酸化サプリメント群に111人、プラセボ群に109人含まれていた。サプリメント投与群ではプラセボ投与群と比較して、進行腺腫の発症リスクが約90%減少した。

今回の結果における臨床的意義に関して、Bonelli氏は「一層適した治療対象者を定めるには、さらに情報が必要である」と述べている。同氏は「進行腺腫の既往がある患者では、最も大きなベネフィットが得られたと考えられる。また抗酸化サプリメントに関連した毒性は皆無かそれに近かった」と補足した。

「今回の結果は、有望であるとはいえ、慎重な判断を必要とする」とNCIの癌予防部門、消化管関連の癌研究グループ責任者であるDr. Asad Umar氏は指摘した。同氏は「大腸癌におけるセレンの効果を調査した観察試験および臨床試験による別のデータでは、リスク低減もしくは無効の両方が混在した結果が得られた」と述べた。また、セレンは皮膚癌および前立腺癌の予防臨床試験においても無効だと考えられたと補足した。

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斉藤 芳子、遠藤 香利 訳

原 文堅(乳腺科/四国がんセンター)、榎本 裕(泌尿器科医) 監修

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