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デノスマブはアロマターゼ阻害剤の使用に関連した骨量減少の予防に役立つ

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デノスマブはアロマターゼ阻害剤の使用に関連した骨量減少の予防に役立つ

Denosumab May Help Prevent Bone Loss Related to Use of Aromatase Inhibitors (Posted: 09/11/2008)

– Journal of Clinical Oncology誌が2008年8月25日にオンラインで発行した報告によれば、乳癌の再発予防にアロマターゼ阻害剤の投与を受けている閉経後の女性では、試験薬デノスマブの投与により骨密度が増加した。


要約 臨床試験薬デノスマブを用いた治療によって、乳癌の再発を予防するためアロマターゼ阻害剤(AI)を服用している閉経後女性の骨密度が増加しました。今回の結果には大きな疑問点も残っていますが、デノスマブがAIにともなう骨量減少に効果的治療である可能性が示唆されます。

出典 Journal of Clinical Oncology、オンライン版先行公開、紙面版2008年8月25日(ジャーナル要旨参照) (J Clin Oncol. 2008 Aug 25. [電子版先行])

背景 乳房腫瘍の多くは「エストロゲン感受性」です。これは、エストロゲンというホルモンが腫瘍の成長を促すことを意味しています。エストロゲン感受性の腫瘍がある患者には、初回治療から少なくとも5年間は抗エストロゲン製剤を服用して再発リスクを抑えることが勧められます。 乳癌の再発リスクを下げる抗エストロゲン剤として最初のものはタモキシフェンでした。ところが、いくつかの大規模臨床試験で、エストロゲン感受性の乳癌の再発予防には、アロマターゼ阻害剤(AI)と呼ばれる製剤がタモキシフェンよりも効果的であることが示されました。AIは、血液凝固や子宮内膜癌のリスクも低減します。いずれもタモキシフェンの副作用で起こりうるものです。現在、米国では3種類のAI製剤が利用できます(アナストロゾール(anastrozole)[商品名:アリミデックス(Arimidex)]、エキセメスタン(exemestane)[商品名:アロマシン(Aromasin)]、レトロゾール(letrozole)[商品名:フェマーラ(Femara)])。 しかしながら、AIにはそれ自体の副作用があります。エストロゲンは骨を菲薄化から保護する役割を担っています。AIはエストロゲンの生産を阻害するため、体内のホルモン量が減少し、骨密度の低下が加速されてしまいます。タモキシフェンは体内での作用が異なるため、骨量の減少を実際に防ぐことができます。 乳癌の再発予防のためにAIを服用し、骨密度も低い患者は、ビスホスホネートと呼ばれる薬剤も処方されていることがあります。こうした薬剤は、骨粗鬆症(脆弱骨疾患)の予防や治療用としてFDAに承認されており、骨密度のさらなる低下を制限することによって作用します。ビスホスホネートの副作用は通常は軽度ですが、まれに顎や腎臓に重篤な障害を生じることがあります。 デノスマブはRANK(receptor activator of NF-κB)リガンドと呼ばれるタンパクを抑制する臨床試験中のモノクローナル抗体で、骨吸収に関与します。先に行なわれた第2相試験では、骨量が低下していた閉経後の無再発患者にデノスマブによる治療を2年間行なったところ、骨密度が増加しました。

試験 今回の第3相試験は、乳癌の再発予防のためにAI治療を受け、骨密度が低下していた252人の患者を対象に行なわれました。すべての患者が、外科手術、放射線治療、化学療法などの癌治療を完了していました。患者は、現在利用できる3種類のAI製剤のいずれか1剤を服用しました。中にはこれまでにタモキシフェンや、ラロキシフェンという別の抗エストロゲン剤を服用したことのある患者もいました。骨粗鬆症や脊椎骨折の既往歴があったり、ビスホスホネートを服用したことがある患者は、この試験への登録は不適格とされました。 参加者は無作為にデノスマブまたはプラセボの投与群に割り付けられ、6ヵ月ごとに投与を受けました。試験は二重盲検で行なわれました。つまり、患者と担当医師のいずれも、誰にデノスマブが投与され、誰にプラセボが投与されたのかは、試験が終了するまで分からないという方法です。 試験治療は2年間行なわれました。本試験に登録された患者はすべて、カルシウムとビタミンDのサプリメントを毎日摂取するよう指導されました。こうしたサプリメントは健康な閉経後女性の骨密度をゆるやかに改善することが認められています。本試験の主席試験責任医師は、ワシントン州シアトルのシアトル癌治療連合(Seattle Cancer Care Alliance )のGeorgiana K. Ellis医学博士です。

結果 1年後、デノスマブによる治療を受けていた患者は、プラセボを投与された患者と比較して、腰椎の骨密度が5.5%増加しました。2年後、腰椎における骨密度は、デノスマブの治療を受けていた患者で7.6%増加しました。この効果は、患者のAI服用期間、服用していたAIの種類、以前にタモキシフェンを服用したことがあるかどうかなどには関係ありませんでした。 デノスマブ治療群とプラセボ治療群のいずれの患者にも、ほぼ同数に治療による有害事象がみられました。最も頻度の高い有害事象は、疲労と、関節・四肢・背中の痛みでした。重篤な有害事象の報告は、プラセボ治療群では9%でしたが、デノスマブ治療群では15%でした。ただし、試験責任医師によると、こうした有害事象はいずれも治療との関連性はないと判断されました。また、2つの治療群の相違を示すような有害事象のパターンも認められませんでした。

制限事項 こうした結果は大変に有望なものですが、最終的な推奨が行なわれる前に、立証したりさらに詳しく調べることが必要であると 国立癌研究所の臨床遺伝学支部のスタッフ医師、Larissa Korde, M.D., M.P.H.は述べています。また、同医師は、多くの疑問が残っているとも言っています。最も重要なことは、この試験は、デノスマブの投与で認められた骨密度に対する効果が、AIを服用している患者の骨折リスクを実際に減少させるのかどうかを調べるために設計されたものではなかったということです。

コメント とはいえ、Korde医師は次のように述べています。「今回の試験は、デノスマブが、AI治療を受けている閉経後の乳癌患者における骨量減少を治療し、予防する効果的な薬剤であることを示唆する現在のデータを補足するものです。」 同医師は、ビスホスホネートとデノスマブを直接比較する臨床試験によって、各治療アプローチの相対的な利点とリスクが明らかになるだろうと述べています。2008年6月、研究者らが米国臨床腫瘍学会年次総会で発表した試験結果では、ビスホスホネート製剤ゾレドロン酸(ゾメタ)を使用した乳癌患者では、骨や他の臓器への転移の可能性が低いことが示唆されました。 「もしこの結果が立証されれば」、と、Korde医師は言います。「疾患再発に対してデノスマブにも効果があるかどうかを調べることが重要です。2種類の製剤が骨密度に対して同様の効果をもたらすとして、一方が乳癌の再発により高い予防効果があるとしたら、最適な治療方法の選択を決定付けるものになるでしょう。」

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snowberry訳

林 正樹(血液・腫瘍科)監修

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