骨粗鬆症治療薬ラロキシフェンは冠動脈性心疾患を予防しないが乳癌リスクを低下させる | 海外がん医療情報リファレンス

骨粗鬆症治療薬ラロキシフェンは冠動脈性心疾患を予防しないが乳癌リスクを低下させる

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骨粗鬆症治療薬ラロキシフェンは冠動脈性心疾患を予防しないが乳癌リスクを低下させる

Breast Cancer Drug Raloxifene Does Not Protect Against Coronary Heart Disease, But Reduces Breast Cancer Risk
(Posted: 08/28/2006, Updated: 07/17/2008) New England Journal of Medicine2006年7月13日号によると、治療薬ラロキシフェン(エビスタ)は、閉経後の冠動脈性疾患の女性、またはそのリスクが高い女性において心臓疾患を予防しなかった。

キーワード  乳癌、冠動脈性心疾患、骨粗鬆症、ラロキシフェン(エビスタ®)

要約
ラロキシフェン(エビスタ®)には、冠動脈性心疾患に罹っているか、そのリスクが高い閉経後女性の心疾患を予防する効果がみられませんでした。この薬剤により浸潤性乳癌や脊椎骨折のリスクが有意に低下しましたが、同時に血栓発生率や脳卒中による死亡率が上昇しました。

出典 Journal of the National Cancer Institute, June 18, 2008(ジャーナル要旨参照) J Natl Cancer Inst. 2008 Jun 18;100(12):854-61. Epub 2008 Jun 10)

背景
最近実施された大規模臨床試験により、最初は骨粗鬆症を予防するために開発されたラロキシフェンには、乳癌リスクが高い閉経後女性の乳癌リスクを低下させる効果もあることがわかりました。

Multiple Outcomes of Raloxifene (MORE) trial(ラロキシフェンの多面的アウトカム試験)では、この薬剤により4年間で、骨粗鬆症に罹った閉経後女性の乳癌発生率がプラセボ群と比べて72%低下しました。Study of Tamoxifen and Raloxifene (STAR) trial(タモキシフェンとラロキシフェンの比較試験)では、乳癌リスクが高い閉経後女性の乳癌を予防する効果についてラロキシフェンとタモキシフェンとを比較しました。両剤とも浸潤性乳癌発症リスクを50%低下させました(NCIのSTAR試験に関する発表参照)。

この要約に記載したRaloxifene Use for The Heart (RUTH) trial(心疾患にラロキシフェンを使用した試験)は最初、冠動脈性心疾患のリスクが高い閉経後女性を対象として、ラロキシフェンがこの疾患のリスクを低下させることができるかどうかをみるためにデザインされた試験です。(冠動脈性心疾患とは、心臓に血液を供給する冠動脈に損傷が生じる疾患で、心疾患では最も多いものです。)MORE試験の結果から、ラロキシフェンを用いると乳癌リスクが低下することがわかったため、RUTH試験チームでも同じようにラロキシフェンの乳癌リスクに対する効果をみようと試験範囲を拡大しました。

試験

1998年6月~2000年8月にかけて、26ヵ国の試験担当医らが女性適格患者10,101人を試験に登録しました。1日当たりラロキシフェン60mgを投与するグループ(5,044人)か同量のプラセボ錠剤を投与するグループ(5,057人)に被験者の女性をランダムに割り付けました。

試験担当医らは年2回、被験者女性の健康状態と、投薬スケジュール通りに薬剤を服用しているかどうかをチェックしました。また、試験開始時、追跡期間の2年目と4年目、追跡期間の最終来院時に心電図測定(心臓の状態を測定するための検査)を実施しました。試験開始時と追跡期間中2年毎にマンモグラムと臨床乳房検査を実施しました。

試験開始時、追跡期間の1年目および5年目、追跡期間の最終来院時には、患者のコレステロール値を測定しました。心臓発作・心不全または心臓手術中の死亡、致命的ではない心臓発作、それ以外の心疾患による入院を冠動脈関連事象として、試験担当医らが冠動脈関連事象、乳癌のほか、脳卒中、静脈の血栓塞栓症(心臓血管系の血栓)などの非冠動脈関連事象、骨折、死亡を記録しました。副作用については検査時に被験者が自発的に報告しました。

結果
ラロキシフェン群でもプラセボ群でも患者の追跡期間中央値は5.56年でした。両群の患者のうち約80%が試験を完了し、約70%が割り当てられた投薬量の70%以上を服薬しました。

副作用を報告した患者数は両群の間で有意な差がありませんでしたが、副作用により試験薬の服用を中止した女性はラロキシフェン群の方が多くいました。

冠動脈を原因とする死亡、致命的ではない心臓発作、急性冠動脈症候群による入院の件数については両群に有意差はありませんでした。この結果は、被験者にすでに冠動脈性心疾患があるのか、あるいはそのリスクが高いのかによって影響を受けるものではありませんでした。

ラロキシフェン群ではLDL(「悪玉」)コレステロール値が有意に低下し、HDL(「善玉」)コレステロール値が有意に上昇しました。ただ、この変化は心臓を保護する作用に相当するものではありませんでした。

追跡調査期間中、プラセボ群では76人が乳癌の診断を受けたのに対して、ラロキシフェン群では52人でした。ラロキシフェンによって浸潤性乳癌のリスクが全体で44%低下しました。エストロゲン受容体陽性乳癌のリスクは55%低下しましたが、エストロゲン受容体陰性乳癌のリスクは低下しませんでした。乳癌リスクの低下率は、通常の乳癌リスクの女性と高い乳癌リスクの女性との間で有意差がみられませんでした。臨床的脊椎骨折の発生率は35%低下しました。

ラロキシフェン群の女性59人(1%)とプラセボ群の女性39人(0.7%)が脳卒中によって亡くなりました。これは、ラロキシフェン群ではリスクが49%高く、統計的に有意であることを意味します。また、絶対数は少なかったのですが、ラロキシフェンを服用した女性ではプラセボ群より44%、冠動脈以外に血栓症が発症しやすいこともわかりました。

コメント
米国国立癌研究所の癌予防部門副部長、レスリー・フォード医師は、「心疾患リスクのある女性のグループでは、ラロキシフェンによる冠動脈性心疾患への影響はありませんでしたが、今回の解析によって、閉経後女性の骨量減少を予防し、乳癌リスクを低下させるラロキシフェンの有用性が確認されました」と言っています。

公表された最新の試験結果に付随する論説でV. クレイグ・ジョーダン医学博士・科学博士が解説しているように、ラロキシフェンによって乳癌も予防できるのではないかと試験担当医らは考えていましたが、非臨床試験でラロキシフェンによる骨密度上昇と循環血液中のコレステロール量低下が示されたことに基づいて、この薬が骨粗鬆症による骨折を予防するかどうか(MORE試験)、冠動脈性心疾患を減少させるかどうか(RUTH試験)が検討されました。ジョーダン氏は、「臨床試験データから、現時点でラロキシフェンには冠動脈性疾患のリスクを低下させる効果はないことがはっきりしました」と記述しています。

個々の患者について予防療法を選ぶのは「リスクと効果との兼ね合い」とフォード氏は言います。「骨粗鬆症の予防が狙いであって乳癌の危険因子がなければ、両方のリスクを低下させることが可能なラロキシフェンか、骨量減少だけを目的としたビスフォスフォネート剤を選ぶことができます。ひとつの薬剤であらゆる必要性を満たしてくれるような薬はありません。何を選択するかを決める際は、既往歴や治療の理由を検討する必要があります」。

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Nobara訳
榎本 裕(泌尿器科)監修

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