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乳がんー標的抗血管新生療法 (アバスチン) Medscape 2006

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乳がんー標的抗血管新生療法 (アバスチン) Medscape 2006

原文 Medscape
エキスパート・コラム標的抗血管新生療法を乳癌の治療に取り入れる
Ramona Swaby, MD Lori Goldstein, MD

はじめに
腫瘍が1-2mm以上の大きさに成長するためには、新たな血管が発達し、すでに存在している血管は再形成され、必要な酸素や栄養の供給量の増加分を供給しなければならない。
自己分泌をする腫瘍細胞は、血管の動員および血管新生を引き起こすサイトカインを分泌する。血管内皮増殖因子(VEGF)は、複数のアイソフォームを持つ強力な血管新生糖タンパク質である。VEGFは受容体に結合して、基底膜の破壊を始め、その結果、血管漏出および新たな血管を形成する血管新生が起こる。

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血管新生が乳癌の発症および拡大にとって重要である、と示唆する複数の知見がある。例えば、高悪性度の上皮内乳癌は、正常な乳房組織と比べ、VEGFの発現レベルが増加しており、原発性乳癌であると診断された患者におけるVEGF発現レベルは無再発および全体生存期間と相関する。レトロスペクティブ(後ろ向き)分析において、VEGFの過剰発現は不良な予後および転帰と相関をみせた。VEGF過剰発現はまた、HER-2過剰発現との相関も示し、それが進行性の表現型であると認識されていることの一因である可能性がある。以上のことから、血管新生、特にVEGFの過剰発現は、乳癌形成における要であると言える。

乳癌に対する抗VEGF治療の研究がここ数年行われているが、最もデータが得られているのは、血中のVEGFの全アイソフォームを認識するヒト化モノクロナール抗体であるべバシズマブ[bevacizumab](アバスチン[Avastin])である。べバシズマブは、進行性結腸直腸癌の治療薬として米国食品医薬品局(FDA)による承認を受けており、乳癌、肺癌、腎細胞癌などその他数多くの腫瘍において有効性を示している。
乳癌治療において有効性を示すデータが得られるにつれ、当然疑問が湧いてくる。例えば、治療のタイミングや、適切な治療対象者、また副作用の管理などである。これらの疑問に対して、まだ完全な答えは出ていないが、最近の研究成果により、現在および将来の治療にどのようにべバシズマブを取り入れられるかの道筋が示されている。

初期の臨床データ:安全性および投与量の確立
最初の2つの第1相試験において、べバシズマブが素晴らしい安全性プロファイルで良好な耐容性をしめした。単剤療法として、10mg/kgまでの用量漸増投与が安全に行われ、用量規定毒性もみられなかった。試験は有効性をみるためのものではなかったが、登録患者(25人)の約半数において、試験期間を過ぎても疾患は安定しており、臨床効果が示唆された。第1b相拡大試験では、べバシズマブとさまざまな化学療法との併用療法が、そのような組み合わせの安全性および有用性を評価するため行われた。この試験においても、べバシズマブは良好な耐容性を示した。大半の非常に低い程度の毒性と、少数であるがグレード3の毒性を示したものは、べバシズマブではなくその他の選択された化学療法剤によるものであった。注目すべきことに、どの化学療法とべバシズマブの間にも、薬物動態の相互作用や、重複する毒性はなさそうであった。以上の試験より、べバシズマブは半減期約21日という線形薬物動態を示し、低用量で血清中の遊離VEGFを完全に抑制した。

乳癌に対するべバシズマブ単剤療法の第1/2相用量漸増試験から、乳癌における最適有効用量に関する示唆に富む情報が得られた。以前に転移性乳癌の治療として、少なくとも1種類の化学療法(アントラサイクリンやタキサン系薬剤など)を受けた後再発した75人の患者が、この臨床試験に登録された。患者は、3つの用量群(3 mg/kgが18人、10mg/kgが41人、20mg/kgが16人)に分けられ、2週間ごとに投与された。投与量は、各投与量でみられた客観的奏効率の増加に基づいて増量され、毒性が許容不可能になった時点で停止された。客観的奏効が、9%の患者において示され、その大半が10mg/kg投与群であった。それ以前のべバシズマブの試験と同様に、ほとんどの有害事象が軽度であった。治療を必要とする高血圧患者(18.6%)は、降圧療法を受け、無事奏効を示した。腎機能障害を伴わないタンパク尿が、約24%の患者でみられた。より高用量の20mg/kgでは、低用量群ではみられなかった、吐き気や嘔吐を伴う頭痛による用量規定毒性がみられた。それにより、10mg/kgが、最も安全な投与量で最大限の有効性を引き出す用量として定められた。

臨床効果に関するデータ
最初の第3相多施設臨床試験では、乳癌に対してべバシズマブと化学療法の併用治療が行われ、結果の解釈はさまざまであった。本試験において、以前に治療を受けた転移性乳癌患者462人が、カペシタビンによる単剤投与群(2500mg/m2/日、3週間ごとのday 1からday 14まで)または、カペシタビン(2500mg/m2/日、3週間ごとのday 1からday 14まで)とべバシズマブ(15 mg/kg、3週間ごとのday 1)の併用投与群にランダム化された。主要エンドポイントである無増悪生存期間または全生存期間の延長はみられなかった。しかし、実際に併用療法は、奏効率を9.1%から19.8%(P=.001)にまで倍増させた。これらのデータは、べバシズマブをベースにした併用療法が、難治度の低い患者ほど有効である可能性を示唆している。なぜなら、奏効率の増加によって、無増悪生存期間や全生存期間を延長できる可能性があるからである。

つい最近、そのような試験において有望な結果が得られた。第3相ECOG 2100臨床試験では、680人の患者が、転移性疾患の第一選択治療として、パクリタキセルの単剤療法群もしくはパクリタキセルとべバシズマブの併用療法群にランダム化された。この試験における適格患者は、局所再発または転移性疾患を持つ患者である。また患者は以前補助療法としてタキサンによる治療を受けている場合、登録の12ヶ月以上前である必要がある。HER-2/neuを過剰発現している患者は、以前にトラスツズマブ(ハーセプチン)による治療を受けていれば、適格とされた。注意すべきことは、全患者が中枢神経系への転移の検査を受け(頭部CTスキャンまたはMRが義務付けられた)、脳への転移が見つかれば、不適格とされたということである。臨床上有意なタンパク尿(>500 mg/24時間)を示した患者や、治療前の病状から抗凝固治療が必要とされた患者は、除外された。

患者は、パクリタキセル単剤療法群(90 mg/m2、28日サイクルのday 1、day 8、day 15)またはpaclitaxel(90 mg/m2、28日サイクルのday 1、day 8、day 15)とべバシズマブ(10 mg/kg、28日サイクルのday 1、day 15)の併用療法群にランダム化された。各群において、42%の患者は補助療法から24ヶ月以下の無病期間であった。2回目の事前に指示された中間分析の時点までに、484の事象が起こった。

パクリタキセルとべバシズマブ併用療法により、疾患が検出可能な患者においては奏効率が16%から37.7%に、また患者全体(検出可能または評価可能な疾患)においては13.8%から29.9%に倍増した。上記の第一選択治療において、腫瘍奏効率の増加により、無増悪生存期間が6.11ヶ月から11.4ヶ月に延長(ハザード比[HR]=0.51、信頼区間[CI]= 0.43-0.62、P<.0001)され、統計的に有意な改善をもたらした。注目すべきことに、患者サブグループの分析において、以前にタキサンによる治療を受けていた患者でさえも、パクリタキセルとべバシズマブの併用療法の奏効がみられた(HR= 0.38、CI= 0.25および0.59)。

毒性は管理可能であった。最も頻発したグレード3の毒性は、15%の患者にみられた高血圧であった。以前の合併症発症率にもかかわらず、グレード3の血栓塞栓症や出血またはタンパク尿を経験したのは、患者の5%以下であった。パクリタキセルとべバシズマブの併用療法が奏効した患者において、パクリタキセルの長期使用により、末梢神経障害および無気力状態が統計的に有意に増加した。

べバシズマブの実際の使用にあたって
初期の臨床データおよび2つの大規模ランダム化第3相試験の否定的な結果と良好な結果両方を踏まえ、現時点でべバシズマブをどのように臨床現場に取り入れるかを考えることは可能である。もちろん今後の試験結果により、それらの提案が変更される可能性もある。

ECOG 2100試験により、べバシズマブとパクリタキセルの併用療法が、化学療法ベースの治療を必要とする転移性疾患に対する第一選択治療となり得ることが示唆された。対象となる患者は、エストロゲン受容体(ER)/プロゲステロン受容体(PR)陰性患者や、ER陽性であるがホルモン抵抗性となり化学療法ベースの治療を必要とする患者などである。(臨床上の効果が、ER陽性患者、ER陰性患者ともに示された。)加えて、奏効率の倍増が、検出可能な腫瘍を持つ患者および評価可能な腫瘍のみを持つ患者ともにみられたことから、例えば骨に疾患を持つ患者などで有意な効果が得られるであろう。腫瘍組織量の多い患者(3箇所以上の腫瘍部位)や、無病期間が24ヶ月以下の患者も、本治療により効果が得られた。これらのECOG 2100試験の結果に基づき、第一選択治療として、パクリタキセルと併用してべバシズマブを2週間ごとに10 mg/kg投与することが支持された。

試験以前に、より大量の化学療法を受けた患者における、べバシズマブと化学療法の併用療法に対するデータについては、やや有効性が劣る。試験以前に、より大量の化学療法を受けた転移性乳癌患者において、カペシタビンとべバシズマブの併用療法は、無増悪および全体生存期間を改善しなかった。パクリタキセルを除いては、べバシズマブと化学療法の併用における化学療法の役割に関する十分なデータはまだ得られていない。さまざまな組み合わせの第2相試験が複数行われてきたが、べバシズマブと化学療法の併用療法に対する大規模ランダム化第3相試験による有効性および毒性に関するデータは報告されていないため、現時点では、いかなる提案も示すことはできない。

今後の方向性
転移性疾患に対するべバシズマブ治療の有望な試験結果により、乳癌に対するべバシズマブの最適な使用法に関する更なる研究が促進された。ECOG 2100試験により、べバシズマブと化学療法の併用療法は、難治性が低く、獲得した抵抗性の経路が少ない患者ほど有効であるという仮説が裏付けられたことから、ベバシズマブと化学療法の併用療法は、初期の進行段階にある疾患に最も効果があるとの判断が支持されるだろう。ECOG 2104試験は、高用量のドキソルビシンとシクロホスファミドによる補助療法後にパクリタキセルを投与する治療にべバシズマブを組み入れることの、心臓における安全性を評価する予備試験である。心臓における安全性がECOG 2104試験において評価されれば、続いてECOGランダム化第3相補助療法試験がこの仮説を試験するため設定される。この引き続いて行われる臨床試験では、初期の乳癌患者の治療において、有効な第3世代の補助化学療法(アンスラサイクリンとタキサン系薬剤の併用療法)とべバシズマブとの併用療法が、補助化学療法単独の場合と比較される。

継続して行われている臨床試験では、その他の分子標的による抗血管新生治療も試されている。例えば、VEGFを標的とするチロシン・キナーゼ阻害剤が、現在進行中の第1相から3相までの複数の臨床試験において、焦点となっている。VEGF受容体(VEGFR)に加えて、その他の情報伝達経路も阻害する、複数標的小分子チロシン・キナーゼ阻害剤もさまざまな臨床開発段階において多数、試験中である。共にVEGFRに加えて血小板由来増殖因子受容体(PDGFR-B) 、FLT-3受容体(fms関連チロシン・キナーゼ3)、c-Kit受容体を標的とするsorafenib[ソラフェニブ](BAY 43-9006)およびsunitinib[スニチニブ](SU11248、スーテント)が、最も臨床開発が進んでおり、進行性腎細胞癌の治療薬として承認されている。sunitinibは、消化管間質腫瘍(GIST)に対する第2選択治療薬としても承認されている。より初期段階にある臨床試験では、その他の薬剤の抗血管新生における独創的なアプローチが試されている。溶解性の血液中の循環VEGFを「捕まえる」可溶性受容体およびVEGFに対するアンチセンス・オリゴヌクレオチドやペプチドVEGF阻害剤が現在開発中である。一方、それらの抗血管新生治療により最も効果が得られる患者の分子的な特徴を探し出す研究が積極的になされている。最終的に、それらの薬剤が臨床現場において一般的になった際には、それらの治療に対して起こる可能性のある抵抗性の機序の研究が重要になるであろう。

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(Oonishi 訳・林 正樹(血液・腫瘍科) 監修)

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