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『米国がん年次報告』ーがん死亡率は減少傾向が続き、膵臓がん生存率はやや改善

最新の『がんの現状に関する米国年次報告書(Annual Report to the Nation on the Status of Cancer)』によると、2015年から2019年までの間、米国の主な人種・民族グループの男性、女性、子ども、ならびに青年および若年成人において、がん全体の死亡率は減少し続けている。2014年から2018年にかけて、がん全体の罹患率、すなわち新規症例数は、男性と子どもでは横ばいだったが、女性と青年および若年成人では増加した。Cancer誌(2022年10月27日)に掲載された今年の報告書では、膵臓がんの長期的な傾向や、多様ながんの部位それぞれにおける罹患率と死亡率の人種的・民族的格差も明らかにしている。

本報告書の調査結果はすべて、COVID-19のパンデミック以前のデータに基づいている。

米国保健福祉省のXavier Becerra長官は、「今回の報告は、がんとの闘ってきたわれわれにとって喜ばしい内容であり、バイデン大統領のがんムーンショット計画(Cancer Moonshot℠ Initiative)の重要性を再認識させるものです」と述べた。「がん対策の進歩には目を見張るものがありますし、今後25年間でがんによる死亡率を少なくとも50%減少させるという大統領の目標は必ず達成できるでしょう。がんは撲滅することができます、そうしなければならないのです」。

「がんの現状に関する米国年次報告書」は、米国国立衛生研究所の一部である国立がん研究所(NCI)、米国疾病対策予防センター(CDC)、アメリカがん協会(ACS)、北米がん中央登録所協会(NAACCR)が共同で作成した。

本報告書は、CDCの全米がん登録プログラム(NPCR)とNCIのSurveillance, Epidemiology, and End Results(SEER)プログラムで収集したデータを統合した北米がん中央登録所協会(NAACCR)がん罹患データセットと、CDC国立保健統計センターの死亡データに基づいている。

この報告書によると、2015年から2019年にかけて、男女合わせた全体のがん死亡率は年2.1%減少した。男性の死亡率は年2.3%減少し、女性では年1.9%減少した。年ごとの死亡率の減少は、男女ともに2001年から2019年にかけて加速した。

死亡率の減少が顕著だったのは、男女ともに肺がんとメラノーマ(悪性黒色腫)であった(年4~5%)。男性では膵臓、脳、骨および関節のがんで、女性では膵臓と子宮のがんで死亡率が増加した。

「今年の『がんの現状に関する米国年次報告』をみれば、がん対策が年々進歩しており、がんの予防、発見、治療の効果を反映して、20年以上にわたり死亡率の減少傾向が続いてることがわかります」と、NCI所長のMonica M. Bertagnolli医師はいう。「本報告書では、がん対策が前進していることを明らかにし、この複雑な病気に取り組むために、社会全体で協力し、効果的で公平なアプローチを開発することの重要性を強調しています。われわれはがんコミュニティに属するすべての人たちと協力して、課題に真正面から取り組みたいと思っています。がんに罹患した人々はもちろん、それ以外の人々も、そのように期待しているからです」。

本報告書によれば、2014年から2018年にかけて、男女合わせたがん罹患率はあまり変化しなかった。同期間の男性の罹患率は横ばいだったが、女性では年0.2%上昇した。

同じ期間に、男性で最も多い18種のがんのうち、膵臓、腎臓、精巣の3種で罹患率が増加した。7種で横ばい、残りの8種で減少した。女性では、最も一般的な18種のがんのうち、肝臓、メラノーマ、腎臓、骨髄腫、膵臓、乳房、口腔および咽頭の7種で罹患率が増加した。4種で横ばい、残りの7種で減少した。

男性で罹患率が最も増加したのは膵臓がんで、年1.1%増加し、罹患率が最も減少したのは肺がんで、年2.6%減少した。女性では、メラノーマが年1.8%増と最も急増した一方、甲状腺がんは最も急激に減少した(年2.9%減)。

「科学の進歩に資金を提供し、がんの予防や早期発見を啓発することによって、がんと呼ばれる200以上の疾患の一部への対策は前進しています」と、アメリカがん協会の会長Karen E. Knudsen経営管理学修士・博士(M.B.A.、Ph.D.)は述べた。「しかし、特定の種類のがんについては懸念すべき傾向が続いており、多くの人々にとって効果の高い治療法が見つかりにくいままになっています。私たちは、がん撲滅という共通の目標を掲げながら、研究を加速させ、アドボカシー活動を通じてケアを受けられる機会を増やし、米国中の各地域で直接的な患者サポートを提供することにより、すべてのがん患者さんとそのご家族の生活を改善することに全力を尽くしています」。

本報告書にある主な研究結果は以下のとおり。

2014年から2018年までのがん全体の罹患率は、非ヒスパニック系アメリカ先住民およびアラスカ先住民(AI/AN)の人々で最も高く、非ヒスパニック系白人および非ヒスパニック系黒人が僅差でこれに続いた。がん全体の罹患率は、非ヒスパニック系のアジア太平洋諸島系(API)およびヒスパニックの人々で最も低かった。

すべての部位を合わせた罹患率は、2014年から2018年にかけて、非ヒスパニック系黒人、非ヒスパニック系のアジア太平洋諸島系、およびヒスパニックの男性では減少したが、非ヒスパニック系白人、非ヒスパニック系のアジア太平洋諸島系、非ヒスパニック系アメリカ先住民およびアラスカ先住民、ならびにヒスパニックの女性では増加した。非ヒスパニック系白人、非ヒスパニック系アメリカン先住民およびアラスカ先住民の男性、非ヒスパニック系黒人の女性では横ばいだった。

15歳未満の小児では、がん全体の死亡率は2015年から2019年にかけて減少し、罹患率は2014年から2018年にかけて横ばいだった。この期間、がん全体の罹患率は、非ヒスパニック系黒人の子どもでは横ばいだったが、非ヒスパニック系白人、非ヒスパニック系のアジア太平洋諸島系、非ヒスパニック系アメリカ先住民およびアラスカ先住民、ならびにヒスパニックの子どもで増加した。

15歳から39歳の青年および若年成人では、2014年から2018年にかけて、がん全体の罹患率は年0.9%増加した。がん全体の死亡率は、2001年から2005年まで年3.0%減少したが、2005年から2019年は年0.9%減と減少傾向が鈍化した。

青年・若年成人層に最も多いがんである乳がんの罹患率は、2010年から2018年まで年平均1.0%増加した。

研究者は、個々のがん部位の多くに人種的・民族的格差が存在することを指摘した。たとえば、2014年から2018年にかけて、膀胱がんの発生率は、非ヒスパニック系白人、非ヒスパニック系黒人、非ヒスパニック系のアジア太平洋諸島系、およびヒスパニックの男性で減少したが、非ヒスパニック系アメリカ先住民およびアラスカ先住民の男性で増加した。子宮がんの罹患率は、2014年から2018年にかけて、横ばいだった非ヒスパニック系白人の女性を除き、すべての人種および民族の女性で増加した。

2015年から2019年にかけて、前立腺がんの死亡率は、非ヒスパニック系白人および非ヒスパニック系黒人の男性では横ばいだったが、非ヒスパニック系のアジア太平洋諸島系、非ヒスパニック系アメリカ先住民およびアラスカ先住民、ならびにヒスパニックの男性では減少した。大腸がんの死亡率は、非ヒスパニック系アメリカ先住民およびアラスカ先住民の男性では横ばいだったが、他のすべての人種および民族の男性では減少していた。女性では、肺がん、乳がん、大腸がんの死亡率は、ほぼすべての人種・民族で減少していた。例外は、乳がん死亡率が横ばいだった非ヒスパニック系のアジア太平洋諸島系の女性と、乳がん死亡率が増加し大腸がんの死亡率が横ばいだった非ヒスパニック系アメリカ先住民およびアラスカ先住民の女性だった。

「人種、民族、社会経済的地位などによって、人々の健康状態や寿命の長さが左右されるべきではありません」と、CDCのがん予防管理部門(Division of Cancer Prevention and Control)のディレクターLisa C. Richardson医師、公衆衛生学修士(M.D., M.P.H)は述べた。「CDCは、政府内外の公衆衛生の専門家と協力しながら、プログラムや研究、政策などの多岐にわたる手段を講じてこうした格差に対処し、健康の公平性を促進します。私たちは、共にこの課題に取り組み、人々ががんに罹患しないアメリカを作ることができると確信しています」。

今年の報告書では、特に膵臓がんの罹患率、死亡率、生存率の傾向に焦点をあてた。膵臓がんは、新たに診断されたがんの3%に過ぎないが、がんによる死亡の8%を占め、米国では男女ともにがんによる死亡の第4位である。

2001年から2018年にかけて、膵臓がんの罹患率は男女ともに年1%増加し、2001年から2019年にかけて、死亡率は男女ともに年0.2%増加した。2001年から2018年にかけて、膵臓がんでよくみられる2つの型、神経内分泌腫瘍と腺がんの罹患率は男女ともに増加した一方で、型を特定できないがんおよび他の膵臓腫瘍は減少した。

また、がんの型ごとの生存率の改善も明らかになった。たとえば、膵神経内分泌腫瘍と診断された患者の1年相対生存率は2001年から2017年の間に65.9%から84.2%に、膵腺がんと診断された患者では24.0%から36.7%に増加した。5年相対生存率も、2001年から2013年の間に膵神経内分泌腫瘍では43.4%から65.2%に、膵腺がんでは4.4%から6.6%に増加した。

このような生存率の改善は治療法の改善と関連しているかもしれない。特定できないがんや、内分泌腫瘍および腺がん以外の膵臓腫瘍では改善はみられず、他の型よりも高齢で診断される割合が高い傾向があった。

研究者らによると、腺がんと神経内分泌腫瘍の生存率の増加は、膵臓がん罹患率の全体的な増加(一般的に肥満の有病率増加の結果と考えられる)によって抑えられている。また、膵臓がん症例の80%を占める膵臓腺がんの治療の進歩は、せいぜい漸進的なものにとどまっている。

「膵臓がんの罹患率と生存率は、膵臓がんそのもののリスクと治療可能な段階で診断することの難しさの両方を反映しています」と、NAACCRの執行役員Betsy A. Kohler公衆衛生学修士(M.P.H.)述べた。「スクリーニング技術が進歩し早期段階での効果的な治療が可能になるにつれて、歴史的に特に致死的ながん種である膵臓がんの生存率が大きく向上することを期待しています」。

本報告書の詳細については、https://seer.cancer.gov/report_to_nation/ 

監訳:小宮武文(腫瘍内科・Parkview Cancer Institute)

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