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プラルセチニブはRET遺伝子融合に対し、腫瘍部位によらない組織横断的な有用性を達成

あらゆるがん種で有効な選択肢となる分子標的療法の可能性が、第1/2相試験で示唆される

高選択性RET阻害薬プラルセチニブ(販売名:GAVRETO、Blueprint Medicines Corporation社)は、腫瘍部位にかかわらず、RET融合陽性のがん患者において忍容性が高く、強固で持続的な奏効を示すことが、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者らが主導する国際共同第1/2相試験「ARROW」の結果により明らかになった。

本試験の結果は、Nature Medicine誌(8月12日付)に掲載され、さまざまな腫瘍型の患者23人において、全奏効率57%、病勢コントロール率83%を示した。これらの結果は、RET遺伝子変異を有する非小細胞肺がん(NSCLC)や甲状腺がんでこれまでに報告された良好な結果を強化するものであり、この標的療法がRET融合患者に組織横断的な(部位にかかわらない)有用性をもたらす可能性があることを示唆している。

「複数のがん種に共通するバイオマーカーの把握を可能とする臨床次世代シーケンシングでの成果が増えてきており、本研究は、RET融合に対してがん種にかかわらず本剤が作用するかどうかを判断する上で重要でした」と、責任著者であり、がん治療薬研究(Investigational Cancer Therapeutics)部門准教授のVivek Subbiah医師は語る。「腫瘍の種類、前治療、融合する相手の遺伝子に関係なく、反応が認められました。これらのデータは、RETがRET阻害に感受性のある組織横断型の標的であることを立証しています」。

RET融合は、RET遺伝子を含む染色体の一部が壊れて別の染色体に再結合しすることにより生じ、がんを刺激する融合タンパク質を作る。RET変異は、甲状腺髄様がん、甲状腺乳頭がん、非小細胞肺がん(NSCLC)で最も多くみられるが、他の多くの組織型での発現はまれである。

本試験の初期の結果に基づき、米国食品医薬品局(FDA)は、2020年9月にRET融合陽性NCLSCに対する、2020年12月に進行RET変異甲状腺がんに対する治療薬として、プラルセチニブを承認した。

この療法がNSCLCや甲状腺がん以外にも有用性をもたらすかどうかを判断するため、本非盲検単群試験では、多様なRET融合陽性の固形がん患者も登録された。本コホートでは、膵臓がん、胆管がん、神経内分泌腫瘍、肉腫などの一般的ながんを対象とした。

本試験では、がんは12種類、患者29人が登録された。このうち、23人がデータカットオフ日および事前に規定された評価基準に基づき有効性の評価を受けることができた。有効性評価を受けた患者の年齢中央値は53歳で、14人(61%)が女性であった。人種構成は、白人65%、アジア系30%、黒人4%であった。ほとんどの患者は、遠隔転移を有するがんを有し(87%)、がんに対する前治療を受けていた(87%)。

有効性評価を受けた患者のうち、3人(13%)が完全奏効、10人(43%)が部分奏効と確認された。奏効期間中央値は11.7カ月、無増悪生存期間中央値は7.4カ月、全生存期間中央値は13.6カ月であった。

治療関連の副作用は登録された患者29人のうち25人(86%)に認められ、20人(69%)にグレード3以上の有害事象が発現した。主な副作用は、肝酵素であるアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼおよびアラニンアミノトランスフェラーゼの値の上昇、白血球値の低下(好中球減少)であった。また、副作用により17人(59%)の患者が短期間の投与中断を、13人(45%)が永続的な投与量減少を実施した。

「RET融合は肺がんや甲状腺がん以外では極めて稀ですが、これらの患者さんには有効な治療法が必要です」とSubbiah医師は述べる。「これらの結果は、RET阻害剤が腫瘍型を超えて患者に利益をもたらす可能性を示し、患者のがん固有の特徴に基づいて適切な標的療法をマッチングさせる精密医療の力を示すものです」。

今後、Subbiah医師らは、RET変異を有する患者の転帰をさらに改善する可能性があるため、RET阻害剤の耐性メカニズムに焦点を当てる予定である。同チームは、すでに耐性経路の特定に着手しており、新治療の開発に取り組んでいる。

「ARROW」試験(NCT03037385)は、Blueprint Medicines Corporation社およびF. Hoffmann-La Roche Ltd社から支援を受けている。共同著者のリストとその開示情報は、こちらの論文を参照。

 

監訳:小宮武文(腫瘍内科・Parkview Cancer Institute)

翻訳担当者松谷香織

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