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ソラフェニブによって高血圧リスクが上昇する

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ソラフェニブによって高血圧リスクが上昇する

Sorafenib Increases the Risk of High Blood Pressure
(Posted: 04/02/2008) Lancet Oncology誌2008年2月号によると、標準用量ソラフェニブ(ネクサバール®)を投与された患者は有意に高血圧リスクが高くなったことが9つの試験を併せたデータで示された。ソラフェニブは腫瘍の血管供給を遮断する抗癌剤である。


キーワード
固形腫瘍、ソラフェニブソラフェニブ(ネクサバール)、血管新生阻害薬、高血圧。
(癌関連用語の定義の多くは、Cancer.gov Dictionaryで検索可能です)

要約
臨床試験9本をまとめたデータから、腫瘍への血液供給を阻害する抗癌剤、ソラフェニブ(ネクサバール)の標準用量の治療を受けた患者には高い高血圧リスクがみられることが明らかになりました。治療にあたる医師は、治療期間中はこうした患者を注意深くモニターし、必要に応じて抗高血圧薬を処方しなければなりません。

出典 Lancet Oncology、オンライン版2008年1月24日、紙面版2008年2月(ジャーナル要旨参照)(Lancet Oncol. 2008 Feb;9(2):117-23. Epub 2008 Jan 24)

背景
標的薬ソラフェニブは、進行性腎細胞癌(腎癌の一種)の治療用として米国食品医薬品局(FDA)に承認されており、進行性肝癌患者の生存率も増加させることが示されています。現在、研究者らは、非小細胞肺癌、前立腺癌、メラノーマなど、他の多種類の癌治療でソラフェニブの試験を行なっています。ソラフェニブは(血管新生)を標的とします。血管新生を標的とする他の薬剤の臨床試験では、そうした薬剤で高血圧のリスクが増加することが示されており、まれではありますが、心臓発作や他の重大な心臓イベントも増加がみられています。ソラフェニブ投与を受けている患者に高血圧がみられることが報告されてはいますが、その病態の発現率は臨床試験によっても大きく異なっています。ソラフェニブ投与を受けている患者のうち何人が高血圧になるかを正確に推測するためには、臨床試験責任医師らは個々の臨床試験の結果をまとめることが必要でした。

試験
ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校の試験責任医師らは、腎癌、肝癌、前立腺癌などの固形癌やメラノーマなどの治療としてソラフェニブを試験した9本の前向き臨床試験のデータをまとめました(メタアナリシスといいます)。こうした9本の臨床試験は、英語で発表された医学文献データベース(1966~2007年に発行された論文)および、米国臨床腫瘍学会(2004~2007年)の学会議事録から、臨床試験結果を検索して採用しました。

メタアナリシスに含めた臨床試験はすべて、患者はソラフェニブ400mg1日2回を開始用量として投与を受けました。これは現在FDAで承認されている開始用量です。臨床試験期間中に高血圧に関するデータが集められました。本試験の主執筆者は、ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校、内科腫瘍科のShenhong Wu医学博士です。

結果
9本の試験から患者4,599人のデータを分析に用いました。ソラフェニブ投与を受けたのは3,567人、残りの1,032人は対照薬の投与を受けました。すべての試験で、高血圧を4段階で評価しました。グレード1は治療不要、グレード4は直ちに生命への危険があるとみなされ、複数の薬剤での治療やソラフェニブの中断が必要となる可能性があるものとしました。臨床試験7本に参加した患者3,363人からは、高血圧のグレードのデータをすべて入手できました。高血圧の全グレードの全体的発現率は、ソラフェニブ投与患者では23.4%でした。ソラフェニブ投与を受けている患者は、ソラフェニブ投与を受けていない患者に比べて、いずれかのグレードの高血圧を発現する可能性が約6倍高くなっていました。9本の臨床試験でソラフェニブ投与を受けた患者3,567人全員から、高グレードの高血圧のデータを入手できました。こうした患者の高グレード(グレード3または4)高血圧の全体的な発現率は5.7%でした。興味深いことに、腎癌患者は、他の癌種の患者に比べて高血圧リスクは高くありませんでした。腎臓は血圧の調節に重要な役割を担っているため、試験責任医師らは、腎機能が低下した患者にはソラフェニブ投与は大きなリスクになるのではないかと懸念していました。

制限事項
臨床試験責任医師らは、研究では高血圧の発現率が過小評価または過大評価になっている可能性を認めています。ベースライン時の高血圧に関するデータ(試験の開始時に高血圧だった患者が何人いるか)が入手できておらず、そのため、新たに高血圧になった症例を過大評価する可能性があります。また、高血圧を測定するために用いたスケールで、低グレードの高血圧を患者には病態がみられないものとしてカウントしなかったために全体的に過小評価となった可能性があります。

コメント
「高血圧や循環器系のソラフェニブの副作用については、徹底的な市販後調査や報告などが必要で、ソラフェニブによって誘発された高血圧のメカニズムや適切な治療を確認するためには今後の研究が必要でしょう」と著者らは結論づけています。著者らが説明するには、特にソラフェニブと共に投与しても安全な抗高血圧薬クラスを確認し、ソラフェニブの有効性と生じる可能性のある薬物相互作用や干渉を最小限にする今後の研究が必要です。 国立癌研究所・癌治療評価プログラムの主任研究員、Alison Martin医学博士は、「あらゆる薬剤にはリスクと利点の比率があります」と述べています。「ソラフェニブが患者にとって重要な治療である場合は、医療従事者らは高血圧の可能性を検討し、投薬中は血圧の変化を評価し、必要に応じて抗高血圧薬を投与するでしょう」。

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Snowberry 訳
林 正樹(血液・腫瘍科)監修

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