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倦怠感を訴える乳癌治療後の人々は、免疫機構の活性化が持続する/カリフォルニア大学ロサンゼルス校

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倦怠感を訴える乳癌治療後の人々は、免疫機構の活性化が持続する/カリフォルニア大学ロサンゼルス校

倦怠感を訴える乳癌治療後の人々は、免疫機構の活性化が持続する
カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)ジョンソンがんセンター
2006年5月

この免疫機構が常時活性化している状態は、乳癌治療を終えた人々から得た血液標本中の特定のタンパク質の量を測定することにより発見されたが、これが倦怠感を引き起こす可能性があるとUCLAの研究者は理論付けている。乳癌の治療が完了した後も何年間にもわたる倦怠感が生存者の約3分の1に影響を及ぼしているが、これらの発見により太極拳やヨガといった行動療法が症状を軽減するのに役立つことにつながる可能性がある。

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これは倦怠感を訴える乳癌治療を終えた人における免疫機構を細胞ベースで見ることとなった最初の試験である、とUCLA Jonsson癌センターの研究者で本試験の主席執筆者であるMichael Irwin医師は述べた。試験については、米国癌研究協会(AACR)の専門家による評価がある学術誌であるClinical Cancer Researchの5月1日号で発表される。

「こういった倦怠感がなぜ細胞レベルで発生するのかということがわからない限り,効果的な治療法を開発できない」とIrwin医師は述べた。同医師は、UCLAセメル神経科学および人間行動学研究所におけるCousin精神神経免疫学研究センターの所長でもある。

「乳癌治療を終えた人は倦怠感によってひどく機能が障害され、生活の質(QOL)に大きく影響を受ける。これは我々の癌治療の悲劇である。」とIrwin医師は述べた。「我々は疾患を治療することに焦点を当ててきたが、その後の患者の心身共に健康な生活にも焦点を当てるべきである。現在は癌に関連する倦怠感の治療法がない。我々は患者が治療前の機能レベルまで回復できるように何かをする必要がある。」

乳癌治療を終えた人のQOLを20年間にわたり研究してきた全米で名高い専門家であるPatricia Ganz医師は、倦怠感は癌生存者にとって深刻な問題であるが、実際主治医がこれを理解しているとは限らないということに同意している。

「乳癌治療を終えた人が主治医に対して疲労や疲労が日常生活に及ぼす影響について話すと、乳癌を克服し生きているだけでありがたいと思うべきであると医師に言われる事が多い。しかし、倦怠感は現実的な問題で真剣に取り組まれるべきことである。」と同試験の共同執筆者であるGanz医師は述べた。

UCLAで以前実施された小規模の試験では乳癌治療を終えた人の免疫機構に異常があることが示された。研究者が免疫機構の活性化の根底にある生物学的要因、すなわち倦怠感の原因を突き止めることができれば、どういった患者が倦怠感を訴えるのかまたは訴えないのかの予測を可能にする状態の生物学的指標(バイオマーカー)を発見することができるであろう、とIrwin医師は述べた。

Irwin医師とそのグループは、乳癌と診断されてから1年から5年後の生存者の血液を採取し2つのグループ(持続的な倦怠感に悩まされた患者と悩まされなかった患者)に分けた。研究者らは、免疫機構が活性化されていることを示す血液中の炎症性サイトカインタンパク量を測定した。炎症性サイトカインタンパク量は2グループ間で大きな差があったとIrwin医師は述べた。持続的な倦怠感を訴える患者では血液中のタンパク質量が30%多かった。更に実験室での分析によるとそれらの患者の免疫細胞は倦怠感を訴えない生存者よりも多くのサイトカインを産生していた。また、これらのサイトカインは免疫反応を引き起こす炎症性タンパク質をより効率的に産生していた。

「本試験では倦怠感を訴える乳癌治療を終えた人において異常な免疫反応が起こることが証明された」とIrwin医師は述べた。「我々は、これらの情報を元に持続的倦怠感を訴えるリスクがより高い患者を確認し、また倦怠感の重さを軽減し期間を短縮することができるように早期に介入を行うことができるかもしれない。」

治療中の乳癌患者の免疫機構は,疾患と闘い、化学療法や放射線治療による副作用から体が回復するのを助けるため高レベルで活性化する。あるデータによると倦怠感を訴える生存者は癌に罹る以前に免疫機構に変化が起こり治療によって悪化した可能性があることが示唆されている。免疫機構の活性化がどのように発生しどのような臨床的要因が原因となっているのかを理解するためさらなる研究が必要である、とIrwin医師は述べた。

「われわれは,これまでの研究から,免疫が活性化しており血液中にサイトカインが循環している動物はあまり動き回らず、食事をせずまた性活動に興味を示さないということを知っている」とIrwin医師。「我々の研究から、乳癌治療を終えた人における倦怠感の重症度は受けた治療の種類や治療期間とは関連しておらず,むしろ継続した免疫活性化によって引き起こされている。このような例の免疫機構はただ単に治療後に活性を低下しないだけである。」

Irwin医師とそのチームは倦怠感が続く乳癌治療を終えた人32例に対して試験を行い、その血液標本を倦怠感を訴えなかった18例の標本と比較した。倦怠感を訴える生存者から得られた血液標本の炎症性タンパク質が治療後に倦怠感を訴える可能性のある患者を分類するバイオマーカーとして使用可能である。倦怠感を示しやすいと考えられる例(本来みられるような免疫機構の活性が低下しない)に対し治療を行うことにより、症状を消失するかあるいは少なくとも倦怠感の重症度を軽減あるいは期間を短縮することが将来可能であると思われる。

スタチンといった免疫反応を低下させる薬剤があるが、Irwin医師とそのチームによるこれからの試験では太極拳やヨガといった行動療法に焦点を当てていく。運動と瞑想を行うことにより血液中の炎症性サイトカインの発現レベルが減少されることが示されている、とIrwin医師は述べた。
「持続性の倦怠感を引き起こすリスクが最も高い癌生存者を特定することができれば、早期に治療を行い患者を助けることができる」とIrwin医師。「毎年増加する乳癌治療を終えた人にとってこれはすばらしいニュースとなるだろう。」

乳癌のスクリーニングおよび治療方法が向上するにつれ、乳癌治療を終了した人々の数が着実に増加している。より多くの患者が早期に乳癌と診断され,長期にわたって生存することになる。実際乳癌治療を終えた人々は、米国内のあらゆるタイプの癌の中で最も生存者が多いグループである。今日米国には推定200万人以上の人々が乳癌治療を終えている。

UCLAジョンソン総合がんセンター は研究、予防および発見、管理、治療および教育に従事する240人以上の研究者と臨床家で構成されている。ジョンソンセンターは国内で最大の総合的ながんセンターのひとつで、研究の促進および研究結果を最先端の臨床試験に反映させることに力を注いでいる。ジョンソンセンターは、2005年7月にU.S. News & World Reportによって米国西部最高のがんセンターに選ばれた。この地位は6年連続で守られている。

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原文No214 Enbrel(エタナーセプト)乳癌倦怠感を予防する
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(エリザベス 訳・瀬戸山修(薬学) 監修)

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