Tykerb(ラパチニブ)/ラパチニブ(Tykerb)、複数の分子を標的とした、固形腫瘍の経口治療:Howard BurrisIII医師とのエキスパートインタビュー | 海外がん医療情報リファレンス

Tykerb(ラパチニブ)/ラパチニブ(Tykerb)、複数の分子を標的とした、固形腫瘍の経口治療:Howard BurrisIII医師とのエキスパートインタビュー

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Tykerb(ラパチニブ)/ラパチニブ(Tykerb)、複数の分子を標的とした、固形腫瘍の経口治療:Howard BurrisIII医師とのエキスパートインタビュー

Medscape 原文

ラパチニブ、複数の分子を標的とした、固形腫瘍の経口治療:Howard BurrisIII医師とのエキスパートインタビュー
Medscape 2006/1/4
編集者特記(Editor’s Notes):

試験薬ラパチニブは、経口の小分子薬で、ErbB1(EGFR)、ErbB2(HER2/neu)の2つのチロシンキナーゼを阻害して、これら受容体のホモ二量体化とヘテロ二量体化を防ぐ。現在、乳癌、頭頸部癌、肺癌、中皮腫癌と結腸直腸癌を含む複数の固形腫瘍に対しての初期の相で試験対象となっている。試験責任医者らは、ラパチニブをパクリタキセル、ドセタキセル、カペシタビン、レトロゾール、トラスツズマブのような既存の薬剤や、FOLFOX とFOLFIRIのような化学療法レジメンに加えてみたところ、各薬剤で有望な結果が得られた。さまざまな腫瘍タイプにおける臨床試験が進行中であるが、今のところ、最もデータが揃っているのは、特にトラスツズマブ抵抗性乳癌患者への治療である。Sarah Cannon Cancer Center のHoward Burris III医師は、ニューヨークにあるChemotherapy Foundation Symposium XXIIIでの彼のプレゼンテーションの後、この複数の分子を標的とした経口薬剤の臨床開発についてMedscapeに語った。

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Medscape: ラパチニブとその開発にはどのような特徴がありますか?

Burris医師:もともとラパニチブに対する期待は、この薬がErbB1とErbB2またはHER2の両方に作用するチロシンキナーゼ阻害作用をもつ経口剤であることにありました。複数の受容体を阻害できるかどうかが成功の鍵となるであろうと考えられていました。今では、どの腫瘍において、EGFR1が(過剰発現する受容体として、または、タンパク質として)癌細胞を成長させる因子であるかを解明することのほうがさらに困難であることがわかってきました。これとは対照的に、乳癌においては、ErbB2過剰発現とその阻害剤トラスツズマブのストーリーが明らかに腫瘍を縮小する成功への道のりです。

EGFR1発現している腫瘍に対するプログラムは非常に幅広い対象で始められました。現在、ラパチニブが、たとえわずかであっても、どこで効果を表すかという点で、あるパターンがみえてきました。ゲフィチニブ、エルロチニブ、セツキシマブで効果がみられる、頭頸部癌、肺癌、大腸癌のような腫瘍タイプと、ラパチニブで効果のみられる腫瘍タイプは同じです。しかし、実際には、最も効果がみられるのは乳癌の治療においてでした。[1,2] 延命をもたらすことが示されているトラスツズマブが使用可能な状況下で、忍容性のよいこの薬剤を開発することは大変なチャレンジでした。

Medscape乳癌治療のための、ラパチニブの開発を詳しく述べてもらえますか?

Burris医師:プログラムでは、ErbB2発現(HER2陽性)しているかどうか、ホルモン受容体陽性かどうかなどの乳癌の全てのサブタイプでラパチニブを調べてみました。そして、ラパチニブはこれらのすべてのサブタイプで、プラセボ対照試験を行うことが可能な程度まで毒性の発生率が非常に低く、忍容性がよいのが明白になりました。

その後、次の問題は、どのようにラパチニブを投与すると一番効果があるかです。化学療法と併用、ホルモン療法と併用、またはトラスツズマブのようなモノクローナル抗体と併用か?
開発は、非常に単純な構想で始まりました、カペシタビンやパクリタキセルのような広く流通している治療薬を使い、そして単純にそれらと組み合わせた第1相試験を行う、その後ラパチニブを追加した人と、追加しない人との無作為化試験を行う。たとえば、アロマターゼ阻害薬(AI)からベネフィットを得られるエストロゲン受容体陽性の女性では、ラパチニブがレトロゾールに追加されます。しかし、これらの一般的な患者母集団グループでは一定の反応しかみられなかったのに対し、ErbB2過剰発現またはHER2陽性のグループではラパチニブから最も大きなベネフィットを事実得られたことが、すぐに明らかになりました。この作用は、われわれが想定するHER2陽性乳癌を治療するうえでの概念の転換を意味しています。たとえば、われわれは、HER2陽性の患者がファーストライン治療またはセカンドライン治療に失敗した場合、トラスツズマブを続けるべきかどうかの問題で苦闘していました。そして、ラパチニブをトラスツズマブに併用することにより、それらの強い耐性のある腫瘍に対し、極めて大きな効果を示すということを発見しました。実際、ラパチニブは、トラスツズマブを含むレジメン[1,2]を使った後、進行した患者への単独薬としての効果も示しています。この段階で経口薬を使える機会があることは大変喜ばしいことです。

このグループの患者(例えば、HER2陽性の女性)は、予後の非常に悪い状況のグループであったのですが、治療薬トラスツズマブの投与によって、現在、最長の生存率のグループになったほどのベネフィットを得ました。このHER2陽性のグループは、今も投薬と休薬を繰り返しながら3、4、5年の間治療を続けています。また、これらのトラスツズマブを使用してきた人々は、今もわれわれの患者であり、生存期間中央値は3年または4年で、もちろん、一部の患者はもっと長い生存期間を得ています。

そして、術後補助療法のトラスツズマブのサクセスストーリーが最近発表されているのに対し[3,4]、もちろん、その状況でのラパチニブの役割は少々不透明です。トラスツズマブがまだしばらく承認されない諸外国においては、術後補助療法での国際的な臨床試験を行える可能性は高いのですが。

適格女性の大半が術後補助療法でトラスツズマブの投与を1年間または2年間受けますが、そのほとんどが3週ごとの静注治療より経口薬を好むと私は指摘します。このことは、この治療の適応である患者と、ラパチニブ開発者の両方にとって、大きなチャンスなのです。

Medscape化学治療は通常治療の期間が決められていて制限されますが、ラパチニブのような経口の無毒性の薬剤においては、患者がどれくらいの期間治療可能かについて教えてください。

Burris医師:AIの患者の治療期間は、5年間に到達しました。治療に反応しなくなった患者に治療を止めるよう説得することは難しいことです。6ヵ月以上ラパチニブでの臨床試験に登録された患者のために、スポンサーは単純データ収集「ロールオーバー(移行)プログラム」(適応外使用プログラムではありません)を確立しました。それによって、患者が望む限り、ラパチニブ単剤治療が続けられます。何十人もの患者が1年間以上、一部の患者は2年間以上、そして少なくとも2、3の患者は、その薬剤の全ての開発サイクルとおよそ同じ期間である3年間以上その薬剤を使っていました。

Medscape乳癌以外でラパチニブが効果的なのはどのような腫瘍ですか?

Burris博士:ラパチニブで効果のある最も有望な第2の部位は頭頸部癌のようです。頭頸部癌では単独治療で多くの効果がみられました。頭頸部癌とErbB1またはEGFR経路についてはよく知られているので、これは発想の転換を必要とします。セツキシマブを使って非常に成功した試験が頭頸部癌でありましたので、そこに効果があることはわかっていました。ゲフィチニブとエルロチニブも、頭頸部癌での第2相試験で効果を表しました。したがって、頭頸部癌はラパチニブの試験を行うには理にかなったセッティングだと思われます。

結腸直腸癌の化学療法とモノクロナール抗体との併用の概念は、興味をそそられます。具体的には、ラパチニブはFOLFOX[フルオロウラシル、オキサリプラチン、ロイコボリン]との併用で、そして、幾分用量変更した療法、FOLFIRI[フルオロウラシル、イリノテカン、ロイコボリン]との併用で、非常に有望かもしれません。静注の抗体に対し、経口薬が多くの利点を提供できることもまたメリットでしょう。確かに、発疹はそれほど顕著ではありませんし、過敏性反応は存在しません。前臨床では、ラパチニブと化学療法との明らかな相乗作用がみられましたし、確かに、追加効果は臨床試験の初期に認められていました。

将来的には、肺癌でのラパチニブの研究は、有用となるでしょう。現在の治療オプションという意味では、肺癌は治療法が多い分野であるのですが、ラパチニブでも肺癌で多少の効果がみられるように思われます。同様に、ラパチニブは膀胱癌に作用があるかもしれません。

Medscape独特の副作用プロフィールのため、EGFR経路を通して効果を及ぼす薬剤においてはプラセボ対照の設計は困難でした。この点で、ラパチニブがどのように他のEGFR阻害剤と異なるかについて詳しく述べてもらえますか?

Burris医師:転移性乳癌のファーストライン治療の環境では、患者がAI療法の適切な候補と考えられる場合、患者はレトロゾールと ラパチニブの併用またはレトロゾールとプラセボの併用のいずれかに無作為に割り付けされます。実際、試験では、実薬対プラセボに関してほとんど問題なく進行しています。それをみても、多分、ラパチニブが原因で起こるかもしれない発疹と他の副作用がどの程度かよくわかると思います:それはとても軽度なのでプラセボ治療群とも比較可能です。

カペシタビンと、ラパチニブまたはプラセボの試験もとても熱心に行われていました。経口の細胞障害性治療薬をすでに使用している場合、経口の生物学的「現在の治療薬にプラスする上乗せ薬(アドオン)」が使用できれば、確かに患者と医者に魅力的です。このカペシタビン試験で使われた用量は、ほぼ全投与量でした。

したがって、試験のデザイン(特に転移癌のセッティングで)は、標準治療を受ける患者に「上乗せ薬」としてラパチニブまたはプラセボを使用する設計となっています。 これらの試験は、発疹に関しては問題なく進みました。発疹に関しては、ごくわずかな紅斑性、無掻痒性、非座瘡様で、非常に軽度なので、患者に尋ねるか、ベテランの看護師がわざわざ探さない限り、多くの場合、気づかれませんでした。

Medscape: ラパチニブと他の多分子標的薬に関する臨床医に役立つメッセージをお願いします。

Burris医師:われわれは、数年間、癌の標的治療と、抗体または経口薬剤の併用について考えてきました。およそ2年前、乳癌のためにトラスツズマブとゲフィチニブの併用試験は否定的な結果に終わりました。しかし、ラパチニブの場合は、全く違うシナリオです。われわれは実際に、それぞれの治療薬の効果が証明された領域において、経口薬を抗体に加えて投与しています。それは非常に希望がもてます。したがって、われわれは、ラパチニブをトラスツズマブに併用するだけでなく、小分子薬の阻害剤をベバシズマブのような抗血管新生抗体に併用することも試みるべきでしょう。

考慮しなければならないことは、まず、単一の抗体薬または単一の小分子薬で「これで十分だろう」と即決はしたくないということです。両方の投与が正解かもしれません。 次に、小分子薬の長所の1つは、目立った毒性なしに、患者がもっと手軽により長期間、小分子薬の投与を受けられる可能性があるということです。さらに、これらの薬剤は、あらゆる生理的部位に進入できます。滲出液のみられる患者をこれらの薬剤で治療すると滲出液が消失することを、事例としてわれわれはみな知っています。これらの薬剤は、血液脳関門を通過すると思われます。ラパチニブが中枢神経系に入って、脳転移に効果があったとののデータが新たに得られています。そして、その問題に特定して計画された臨床試験が予定されています。

ラパチニブが脳転移のような乳癌のジレンマを解決できるかもしれないと大変楽観的な期待もあります。われわれは、確かに、ラパチニブの有効性が今後の臨床試験によって早期に証明されることを望んでいます。そして日常生活の質をそれほど落とすことなく延命する、比較的毒性のない、長期の投与が可能な経口癌治療に関して順調に研究を進めています。

References
1.Blackwell K, Kaplan EH, Franco S, et al. A phase II, open-label, multicenter study of lapatinib(GW572016) in patients with metastatic breast cancer that has progressed on trastuzumab-containing regimens. Program and abstracts of the 29th ESMO Congress;October 29-November 3, 2004;Vienna, Austria. Abstract 103.
2.Burstein H, Storniolo AM, Franco S, et al. A phase II, open-label, multicenter study of lapatinib in two cohorts of patients with advanced or metastatic breast cancer who have progressed while receiving trastuzumab-containing regimens. Program and abstracts of the 29th ESMO Congress;October 29-November 3, 2004;Vienna, Austria. Abstract 104.
3.Romond EH, Perez EA, Bryant J, et al. Trastuzumab plus adjuvant chemotherapy for operable HER2-positive breast cancer. N Engl J Med. 2005;353:1673-1684.
4.Piccart-Gebhart MJ, Leyland-Jones B, Goldhirsch A, et al. Trastuzumab after adjuvant chemotherapy in HER2-positive breast cancer. N Engl J Med. 2005;353

Howard Burris III(ハワードバリスIII)医師:テネシー州ナッシュビルのSarah Cannon Cancer Center(サラキャノンがんセンター)にてディレクター、薬剤開発
公表:Howard Burris III医師は、Genentech社、Sanofi-Aventis社、GlaxoSmithKline社、Eli Lilly社、Roche社、Telik社、Celgene社、Amgen社から謝礼または講演の料金を受領したことを公表しました。
5.公表:Margie Miller氏は、関連した財政的な関係がないと公表しました。

(HAJI、野中希 訳・林 正樹(血液・腫瘍科) 監修)

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