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早期前立腺癌には全摘除術か経過観察か

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早期前立腺癌には全摘除術か経過観察か

Surgery Versus Watchful Waiting in Early Prostate Cancer

(Posted: 09/13/2002, Updated: 07/06/2011) 限局性前立腺癌で前立腺全摘除術を受けた男性患者は、「経過観察(watchful waiting)」で管理された患者に比べ、癌が転移する可能性が低く、死亡率(前立腺癌または他の原因による)も低いことが、2005年5月12日付New England Journal of Medicine誌に掲載された研究で示された。

要約

限局性前立腺癌で前立腺全摘除術を受けた男性患者は、「経過観察(watchful waiting)」で管理された患者に比べ、癌が転移する可能性が低く、死亡率(前立腺癌または他の原因による)も低い。これは、この種の外科手術について、全生存率での利点を示した、初の大規模第3相試験である。

出典

2005年5月12日付New England Journal of Medicine(ジャーナル抄録参照)。更新結果は2008年Journal of the National Cancer Institute(ジャーナル抄録参照)および2011年New England Journal of Medicine(ジャーナル抄録参照)で発表。

背景

米国人男性にとって、前立腺癌は2番目に多い癌であり、また癌全体の3分の1を占める。2005年には、米国で232,090人の男性が新たに前立腺癌と診断され、約30,350人が前立腺癌で死亡すると推定される。

しかし、前立腺癌はほとんどが高齢者に見つかり、進行が遅いため、最終的に前立腺癌以外の原因で死亡する患者が多い。癌が転移前の早期に見つかった場合、担当医はある程度のリスクを伴う外科手術や放射線療法の代わりに、「経過観察」を勧めることがある。経過観察は待機療法(expectant management)とも呼ばれ、癌の増悪の徴候がないかどうか、医師が患者を積極的に注意深くモニターし、症状が発現すればそれを治療するという療法である。

前立腺と所属リンパ節を切除する根治的手術は前立腺全摘除術と呼ばれ、隣接する神経を損傷して尿失禁や勃起障害となるリスクがある。

試験

本試験では、1989〜1999年に、スウェーデン、フィンランド、およびアイスランドの医療センター14カ所で、695人の男性が登録された。大半は、症状、尿路疾患、直腸診(DRE)の異常所見により早期前立腺癌と診断されていた。患者の平均年齢は65歳で、2つの群のいずれかに無作為に割付けられた。半数(347人)は前立腺全摘除術を受け、残りの半数(348人)は経過観察でモニターされた。

2002年に、試験を行った研究者らは、両群の患者を6.2年間(中央値)追跡した後、中間結果を発表した。早期前立腺癌患者が疾患と共存できる期間を考慮すれば追跡期間は比較的短い。その時点で、全摘除術群は、経過観察群に比べ、前立腺癌による死亡が50%少なく、癌の遠隔転移が37%少ないという結果が得られた。しかし、全生存率には有意差が認められなかった。つまり、両群とも生存期間は同程度であった。

今回紹介したNew England Journal of Medicineでは、研究者らがさらに3年間追跡した後に再度実施した2回目の解析結果が掲載されている。患者をより長期間追跡することで、いずれかのアプローチが全生存率上昇につながるのではないかと研究者らは期待した。

この試験の筆頭著者はスウェーデン、ウプサラ市のUniversity Hospitalに所属するAnna Bill-Axelson医学博士である。

結果

8.2年間(中央値)追跡した結果、全摘除術の経過観察に対する利点がより顕著となり、全生存率にわずかながら有意差が現れた。全摘除術群で83人、経過観察群で106人が何らかの原因で死亡しており、全摘除術群が26%有利であった。死因を前立腺癌に限った場合、全摘除術群の死亡率の方が44%低く、死亡者は全摘除術群で30人、経過観察群では50人であった。

全摘除術群は遠隔部位への転移が40%少なく、局所進展は66%少なかった。全摘除術群ではこれは腫瘍の局所再発を意味し、経過観察群では、局所進展とは検出可能な腫瘍の出現、あるいは治療を必要とする排尿問題を意味した。

コメント

臨床的に検出された前立腺癌患者について、全摘除術が経過観察群より全生存率を高めることを大規模試験で証明した初めての結果であることは、大きな意義を持つ。試験の全評価項目について、長期間になるほど利点が増加し、「追跡期間を延ばせば、全摘除術の利点はさらに大きくなるでしょう」と著者らは述べた。

また、全摘除術で起こりうる合併症(勃起障害、尿失禁)は、「経過観察群における症状発現率の上昇や疾患の増悪後に行われる治療と、比較考量」しなければならない、とも述べた。

制限事項

本試験の対象患者は米国で新たに診断された前立腺癌患者の典型的プロファイルに合致していないとNCI癌治療評価プログラムの上級治験責任医師であるAlison Martin医師は述べた。

「米国ではPSA検診が普及しているため、国内のほとんどの患者は、前立腺癌が触知できず、症状が発現する前の早期段階で診断されます」と述べた。「このようなごく早期の段階でも前立腺全摘除術が同じだけの影響を与えるかどうかは不明です。これは適正な患者に対する全摘除術の利点を評価した画期的試験ですが、まだ残っている重要な問題は、PSAで検出された早期前立腺癌でインターベンションが必要なものはどれか、必要とすればどんなインターベンションか、を明らかにする分子プロファイルや臨床パラダイムを開発できるかどうかです」。

この解答の一部は、2002年に登録を終えた、前立腺癌におけるインターベンション・観察比較臨床試験(Prostate Cancer Intervention Versus Observation Trial、PIVOT)から得られる可能性がある、とMartin医師は言う。PIVOTの患者の半数は、臨床的に検出不能なほど癌が小さいときにPSAレベル上昇を根拠として診断された。スカンジナビア3国での試験と同様、患者は全摘除術と経過観察群に無作為に割付けられた。PIVOTの初期結果は今後数年のうちに得られるかもしれない。

またMartin医師によれば、カナダ国立癌研究所(NCIC)の主導により2006年に開始予定の標準治療・制限治療比較(Standard Treatment Against Restricted Treatment、START)試験で、米国人男性に最も多い、早期段階で診断された低リスク前立腺癌患者に対して、標準治療(外科手術、組織内照射、外部照射治療のいずれかを選択)と「PSA監視療法(active surveillance)」が比較されることになっている。

症状(通常、転移性疾患による)が発現した場合に治療を行うという経過観察(watchful waitng)は、PSA監視療法とは根本的に異なるとMartin医師は言う。このアプローチでは、PSA監視療法に無作為に割り付けられた患者は、PSA倍加時間や前立腺再生検におけるグリーソンスコアなどの前立腺生物学測定によって緊密に追跡される。これらのパラメーターに経時的変化が現れた一部の患者に対し、外科手術や放射線療法のようなインターベンションがオーダーメードで行われる。増悪リスクを示す分子学的特徴を解析するため、腫瘍の検体が採取される予定である。

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丸野 有利子 訳

榎本 裕(泌尿器科/東京大学医学部付属病院)監修
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