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アポトーシス

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アポトーシス

アポトーシス
-APOPTOSIS-(原文)
-Kimball’s
Biology Pagesから-

2005/10/14

(目次)
傷害による死滅
自滅による細胞死
なぜ細胞が自滅するのか?

・ 細胞分裂が適切な発生のために必要なようにプログラムされた細胞死も必要である
・ プログラムされた細胞死は、生体の完全性への脅威となる細胞を破壊するために必要である。
細胞の自滅を決定するものは何か?
・ プラスのシグナルの撤回
・ マイナスのシグナルの受信
アポトーシスのメカニズム
・ 内部シグナルにより起こるアポトーシス
・ 外部シグナルにより起こるアポトーシス
・ アポトーシス誘導因子(AIF)
アポトーシスとがん
免疫系におけるアポトーシス
アポトーシスとエイズ
アポトーシスと臓器移植
植物のアポトーシス

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すべての細胞には寿命があり、死滅する時が決まっている。
細胞が死滅する方法は2つある。

  • 有害物質によって死滅させられる
  • 自滅を誘発させられる

傷害による死滅

  • 物理的損傷
  • 有害化学物質への曝露

などの傷害により損傷を受けた細胞は以下の一連の特徴的変化を起こす。

  • 細胞(及びミトコンドリアなどの細胞内小器官)が膨張する。(イオンと水の経路を統制する形質膜の機能が妨げられるため)
  • 細胞内含有物が漏出する。
  • それによる周辺組織の炎症。

自滅による細胞死

自滅を誘発させられた細胞は、以下の特徴を示す。

  • 縮小する。
  • 表面に泡状の突起(bleb)ができる。
  • 細胞核の染色質(DNA及びたんぱく質)が分解する。
  • チトクロムCの放出によりミトコンドリアが破壊される
  • 細胞膜で覆われた小さな断片に分化する。
  • 形質膜に通常隠れているリン脂質ホスファチジルセリンが表面に露出する。
  • これは、マクロファージや樹状細胞などの食細胞の受容体によって捕らわれ、断片化した細胞が貪食される。
  • 食細胞は炎症を抑制するサイトカイン(例えばIL-10及びTGF-s)を分泌する。

自滅による細胞死のパターンは秩序立っているため、プログラムされた細胞死、あるいはPCDと呼ばれることがよくある。プログラムされた細胞死の細胞機構は、細胞分裂と同様、細胞本来に備わっているものであることが分かる。

プログラム細胞死はまたアポトーシスとも呼ばれる。(この発音の仕方はまだ統一化されていない。アペオトーシスという場合もあればアポプトーシスという場合もある)

なぜ細胞が自滅するのか?

理由は2つある。

1. 細胞分裂が適切な発生のために必要なようにプログラムされた細胞死も必要である

・おたまじゃくしがかえるへ変態する時に起こる尾の吸収は、アポトーシスによって引き起こされる。
・胎児の手足の指の形成には、アポトーシスによる指間の細胞の除去を必要とする。
・月経の初めに起こる子宮内膜の剥離は、アポトーシスによって引き起こされる。
・脳の神経細胞間の適切な連絡(シナプス)形成のためには、アポトーシスによって過剰な細胞が取り除かれる必要がある。

2. プログラムされた細胞死は、生体の完全性への脅威となる細胞を破壊するために必要である。

ウイルスによって感染した細胞
細胞傷害性Tリンパ球(CTL)がウイルス感染した細胞を死滅させる方法の一つは、アポトーシスを誘発させることである。(機序の図)(それを阻止する対抗手段を講じるウイルスもある。アポトーシスとがん
免疫系の細胞

細胞によって仲介された免疫反応が衰退すると、体の構成要素が攻撃されないようにエフェクター細胞を取り除く必要がある。CTLは相互に、またCTL自身に対してもアポトーシスを誘発する。アポトーシスのメカニズムの欠点は紅斑性狼そうや関節リウマチなどの自己免疫疾患と関連がある。
DNAに損傷を受けた細胞

ゲノムの損傷は細胞に以下の変化を引き起こす。

  • 適切な初期発生が阻害され、結果として出生異常を引き起こす。
  • がん化する。

細胞はDNA損傷に対し、p53の生成を強化することによって対応する。p53はアポトーシスの強力な誘発因子である。がん細胞(生存させれば生命体にとって致命的脅威になることを意味する)の中にp53遺伝子変異と欠陥たんぱく質がよく見られることが不思議であろうか?

がん細胞

がん治療に使用される放射線及び化学物質が、ある種類のがん細胞にアポトーシスを誘発する。

細胞の自滅を決定するものは何か?

以下の2つのバランスである。

  • 生存し続けるのに必要なプラスのシグナルの撤回
  • マイナスのシグナルの受信

プラスのシグナルの撤回

生存し続けるために、細胞は他の細胞から絶え間なく刺激を受ける必要があるのがほとんどであり、また、多くの細胞にとって増殖している細胞の表面に接着し続ける必要がある。プラスのシグナルの例は以下の通りである。

  • 神経細胞の成長因子
  • リンパ球の細胞分裂のための必須因子であるインターロイキン-2(IL-2)

マイナスのシグナルの受信

  • 細胞内のオキシダント量の増加
  • これらのオキシダント、あるいは紫外線、X線、化学療法剤などの他の薬剤によるDNA損傷
  • 適切な三次元構造にたたまれなかったたんぱく質の蓄積
  • 細胞表面のある特定の受容体に結合し、アポトーシスを開始するよう細胞にシグナルを送る分子。これらの死活性化物質は、以下の通りである。

    • TNF受容体と結びつく腫瘍壊死因子-α(TNF-α)
    • 同じくTNF受容体と結びつくリンホトキシンTNF-β
    • FasCD95とも呼ばれる)という細胞表面の受容体と結びつく分子であるFasリガンド(FasL)

アポトーシスのメカニズム

アポトーシスによって細胞が自滅するメカニズムは3種類ある。

  1. 細胞内で生じるシグナルによって引き起こされるもの
  2. 細胞表面で受容体と結びついた死活性化物質によって引き起こされるもの

    • TNF-α
    • リンホトキシン
    • Fasリガンド(FasL)
  3. 有害な活性酸素種によって引き起こされる可能性もある。

1. 内部シグナルにより起こるアポトーシス : 内因性あるいはミトコンドリアを介する経路

  • 正常細胞において、ミトコンドリアの外膜表面にはBcl-2たんぱくが見られる。
  • 細胞の内部損傷(例えば活性酸素などによる)により、以下が引き起こされる。

    • Bcl-2はミトコンドリア外膜に穴を開けるBaxという関連たんぱくを活性化する。
    • それにより、チトクロムCが漏出する。
  • 放出されたチトクロムCApaf-1たんぱく(アポトーシス・プロテアーゼ活性因子-1)に結びつく。
  • ATPによって与えられるエネルギーを使う。
  • これらの複合体は会合してアポトゾームを形成する。
  • アポトゾームはCaspase-9と結合し活性化する。
  • Caspase-9は、すべてがプロテアーゼ(たんぱく分解酵素)である多くのカスパーゼ群のひとつであり、アスパラギン酸(Asp)残基の部分で、通常相互にたんぱく質を分解するため、この名前がついた。
  • Caspase-9は分解し、その過程で他のカスパーゼ(Caspase-3、Caspase-7)を活性化する。
  • これらの「殺し屋」カスパーゼは、たんぱく分解のカスケードを生み出す。(血液凝固や捕体活性化作用のようなもの)それによって、以下のことが起こる。
    • 細胞質中の構造たんぱくの消化。
    • 染色体DNAの分解。
    • 細胞の食作用。

2.外部シグナルにより起こるアポトーシス : 外因性、あるいは死受容体による経路

  • FasおよびTNF受容体は、受容体ドメインが細胞表面で露出した膜内在性たんぱくである。
  • 相補的な死活性化物質と結びついて、細胞質にシグナルを伝達する。
  • それが、caspase-8を活性化する。
  • caspase-8は(caspase-9のように)カスパーゼ活性化のカスケードを起こす。
  • それによって細胞の食作用が引き起こされる。

例(右):細胞傷害性T細胞が標的を認識する(結びつく)と、

  • 表面にFasLを更に産生する。
  • これが標的細胞表面にあるFasと結びついてアポトーシスによる死滅を引き起こす。

アポトーシスの初期段階は、少なくともC. elegans(線虫の一種)において可逆的である。細胞の最終的破壊が、貪食細胞によって食されることによってしか保証されていない場合もある。

3. アポトーシス誘導因子(AIF)

神経細胞や恐らく他の細胞は、上記した2つの経路とは異なり、カスパーゼを使わないもう一つの方法で自滅する。

アポトーシス誘導因子(AIF)は、通常ミトコンドリアの膜間腔に位置するたんぱく質である。死滅の時を知らせるシグナルを細胞が受け取ると、以下が引き起こされる。

  • AIFがミトコンドリアから放出される。(第1経路で示したチトクロムCの放出のように)
  • AIFが細胞核に移動する。
  • DNAと結合する。
  • それによりDNA破壊と細胞死が誘導される。

アポトーシスとがん

がんと関連のあるウイルスの中には、形質転換した細胞のアポトーシスを防止する策を使用するものもある。

  • ヒト乳頭腫(パピロマ)ウイルス(HPV)のいくつかが、子宮頚癌の発生に関与している。その一つは、アポトーシス・プロモータのp53と結合し、それを不活化するたんぱく質(E6)を産生する。
  • 単球増加症の原因であり、リンパ腫と関連のあるEBウイルス(EBV)は、以下を産生する。
    • Bcl-2と類似したたんぱく質。
    • 細胞にBcl-2の産生を増加させるもう一つのたんぱく質。これらの作用は、細胞にアポトーシスへの抵抗性をつけさせる。(従ってがん細胞の増殖が続行する。)

ウイルスが関与せずに生成されたがん細胞であってもアポトーシス回避のための策がある場合がある。

  • B細胞白血病やリンパ腫は、Bcl-2を多量に発現するものもあり、そうすることで受信の可能性のあるアポトーシス・シグナルを阻止している。抗体生成のためにエンハンサー領域にBcl-2遺伝子を転座することにより、Bcl-2が多量に産生される。(ディスカッション-Bcl-2原文
  • メラノーマ(最も危険な皮膚癌)の細胞は、Apaf-1をコードする遺伝子の発現を阻害することにより、アポトーシスを回避している。
  • 特に肺癌や大腸癌などの癌細胞は、Fasと結合できないように、FasLと結び付いてふさぎ込む、可溶性の「おとり」分子を多量に分泌する。従って、細胞傷害性T細胞(CTL)は上記したメカニズムではがん細胞を殺すことができなくなる。
  • 他のがん細胞はFasLを大量に発現することで、がん細胞を破壊しようとする細胞傷害性T細胞(CTL)をすべて死滅させる。なぜなら、CTLもまたFasを発現しているからである。(自らのFasLによって守られている)


免疫系におけるアポトーシス

外部からの侵入者に対する免疫反応は、リンパ球(T細胞およびB細胞、あるいはそのいずれか一つ)の急増が関与している。(原文リンク仕事が終われば、少量のメモリ細胞を残してそれらは取り除かれなければならない。(原文リンク)それはアポトーシスによって果たされる。

ヒトがアポトーシスに関して遺伝的欠陥に遭遇することはほとんど稀である。最も頻繁にあるのがFas遺伝子の変異であるが、FasL遺伝子、あるいはカスパーゼの一つの遺伝子変異も稀に見られる。すべての場合、遺伝子による問題は、自己免疫性リンパ増殖性症候群(ALPS)を引き起こす。

特徴

  • リンパ節と脾臓にリンパ球が蓄積し、肥大する。
  • 自己反応性クローンが現れ、「自己」の構成要素を攻撃し、溶血性貧血や血小板減少症などの自己免疫疾患を生み出す。
  • リンパ球のがん性クローンであるリンパ腫が現れる。

ALPS患者のほとんどで、生殖細胞系列の中に遺伝子変異が存在している。つまり、体のすべての細胞がそれを保有している。しかし遺伝子変異が体細胞性のものであり、骨髄の前駆細胞で起こる場合も少なからず存在する。後者の場合には、正常にアポトーシスを遂行するリンパ球とそうでないリンパ球が混在し、遺伝子的モザイクを形成している。後者は前者を圧倒し、リンパ節と血液中の主要な母集団となる傾向がある。

アポトーシスとエイズ

エイズ(後天性免疫不全症候群)の特質は、患者のCD4陽性T細胞数の減少にある。(通常、血液1マイクロリットル(?)中1000個)CD4陽性T細胞はすべての免疫反応に直接的および間接的に関与している(ヘルパー細胞として)。200/?以下に数が低下すると、患者は有効な免疫反応を遂行することができなくなり、一連の危険な感染症が引き起こされる。

CD4陽性T細胞は何が原因で減少するのか?

HIV(ヒト免疫不全ウイルス)がCD4陽性T細胞に侵入し、このHIV感染が原因で細胞が大量に死滅すると推測するかもしれない。しかしそれが主犯ではなさそうである。エイズ患者の血液中にあるCD4陽性T細胞で実際にウイルスに感染しているのは、10万分の1以下である。

では、多くの感染していないCD4+T細胞を死滅させるものは何か?

答えは明瞭で、アポトーシスである。

そのメカニズムは明確ではなく、可能性がいくつかある。その一つは以下に示す通りである。

  • すべてのT細胞は、感染していてもしていなくてもFasを発現している。
  • HIVに感染した細胞のHIV遺伝子(Nefと呼ばれる)の発現は以下を引き起こす。
    • 細胞表面で大量のFasLの発現。
    • 自己のFasとの相互作用が自己破壊に繋がらないように防止する。
  • しかし、感染したT細胞が感染していないT細胞と接触すると(たとえばリンパ節中で)、感染していない細胞のFasLとFasの相互作用がアポトーシスを惹起し、細胞を死滅させる。

アポトーシスと臓器移植

前眼房、および睾丸などの身体のある部分は「免疫学的寛容部位」であると、長い間知られている。これらの部位の抗原は免疫反応を誘導しない。

これらの部位の細胞は常にFasLを大量に発現しているところが、身体の他の細胞と異なっている。従ってFasを発現する抗原反応性T細胞は、これらの部位に入ったときに破壊される。(これは上記したメカニズムの反対である)

この所見は、拒絶反応を防止するための新しい方法の可能性を提起している。

移植された腎臓、肝臓、心臓などの細胞の少なくとも一部に、高度のFasLを発現させるようにすれば、宿主の細胞媒介性免疫系のT細胞からの攻撃から、移植片を守ることが可能になるかもしれない。そうなれば、移植を受けた患者が生涯続けなければならない免疫抑制剤による治療を低減、あるいは中止できるであろう。

現時点では、動物実験による結果は相反する。FasL発現を行った同種移植は、腎臓の生存率を上昇させたが、心臓、およびランゲルハンス島の生存率を上昇させなかった。

植物のアポトーシス

植物も、プログラムされた細胞死のシステムを作動させることが可能である。例えば、ウイルス感染の拡大を食い止める試みがある。

そのメカニズムは、カスパーゼのようにアスパラギン酸(およびアスパラギン)残基の部分で他のたんぱく質を断片化するプロテアーゼが関与してはいるが、動物のものとは異なる。

この酵素の活性化は中央の液胞を破壊し、残りの細胞を分解させる。

(ノーブル めぐみ 訳 ・ 島村義樹(薬学) 監修)

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