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3月ESMOバーチャルプレナリー:乳がん・肺がんアンメットニーズ領域研究

2022年3月16日、17日開催の欧州臨床腫瘍学会(ESMO)バーチャルプレナリー会議で、早期乳がんと肺がんを対象とした待望の2試験から最初のデータが報告された。 OlympiA試験およびPEARLS/KEYNOTE-091試験の著者によるオリジナルデータの発表に続き、著名な専門家による批評的分析とディスカッションが行われた。

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第3相OlympiA試験:生殖細胞系BRCA1/2変異陽性(gBRCAm)乳がんに対する術後薬物療法としてのオラパリブ(リムパーザ)の全生存に関する解析

「BRCA1またはBRCA2遺伝子変異陽性、HER2陰性早期乳がん患者の一部は、現在最良の局所および全身に対する標準療法を実施しても再発リスクが高い」と、OlympiA運営委員会議長および共同試験責任研究者のAndrew Tutt氏(英国、ロンドンの The Institute of Cancer Research および King’s College London 腫瘍内科教授)はいう。「明らかに未だ十分な治療がない領域です。OlympiA試験に登録されたような高リスク患者の約10~15%は、最良の治療にもかかわらず、診断後3~4年以内に死亡している。これは改善する必要があり、それがこの試験の目的でした」。

任意抽出した乳がん患者の約5%に生殖細胞系BRCA1またはBRCA2変異があり、こうした変異が認められる患者は、乳がんの強い家族歴があり、若年で、対側乳がんまたは卵巣がんを有する傾向がある。「ロンドンの The Institute of Cancer Research で以前行った私たちの研究では、BRCA1またはBRCA2 遺伝子に異常がある乳がんの腫瘍細胞には相同組換えDNA修復に欠損があることを明らかにした」とTutt氏は説明する。「PARP阻害薬はDNA修復のこの欠損を特異的に標的とする。OlympiA試験では、PARP阻害薬が生殖細胞系BRCA1/2変異陽性早期乳がん患者に対する術後薬物療法として有効であるという仮説を立てた」。

「トリプルネガティブ乳がんを発症している女性、または乳がんの強い家族歴を有する女性は、BRCA1およびBRCA2遺伝子の検査を受ける。OlympiA試験は以下のような疑問に答える。この情報を調べ利用してこのような患者の治療を変えるべきか?そして、こうした遺伝子異常に関連する生物学的特徴を標的とする治療は、BRCA1またはBRCA2遺伝子変異がある高リスク早期乳がん患者の再発リスクを低下させ命を救うのだろうか?」とTutt氏はいう。そして「この試験は、世界中の数百の病院から参加している乳がんの遺伝的特徴を有する患者、BRCA1およびBRCA2遺伝子の生物学的特徴を理解している科学者、および医師が参加する大規模な共同作業である。つまり、基礎研究、がん遺伝学、臨床試験医師および製薬業界が患者と協力し、個別化医療の開発、検証を試みる実例である」と結論する。

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第3相ランダム化三重盲検EORTC-1416-LCG/ETOP 8-15 – PEARLS/KEYNOTE-091試験:早期非小細胞肺がん(NSCLC)に対する完全切除術および必要に応じた術後化学療法後のペムブロリズマブ(キイトルーダ)とプラセボの比較

「私たちは、早期非小細胞肺がん患者の治癒率を改善する必要がある。こちらも緊急に治療法が必要な領域である。手術と化学療法で根治可能であるにもかかわらず、早期肺がん患者の50%以上が再発して死亡する」と、スペイン、マドリードのHospital Universitario 12 de Octubre腫瘍内科長で本論文の筆頭著者である Luis Paz-Ares氏は説明する。

近年、免疫チェックポイント阻害薬の使用によって、進行または転移性肺がん治療のシナリオが激変した。「ペムブロリズマブは進行肺がん患者に対する標準治療なので、完全切除術を受けた早期肺がん患者の転帰を改善できるかを調べたいと考えた。早期肺がんでは免疫系の調節不全があまり生じていないため、免疫療法で再発リスクを低下させれば生存を改善することができるかもしれない」。

この新しい試験の臨床的意義を考えて、Paz-Ares氏は「今回の結果は早期非小細胞肺がん患者にとって本当に朗報だと思う。私たちは、患者の再発を抑止する新たな治療を獲得したのかもしれない」と考える。そして「再発率の低下が長期生存効果をもたらしているかどうかを調べるために、今後も追跡調査を行うことが重要である」と加える。

 

ESMOバーチャルプレナリー:ESMOバーチャルプレナリーは、毎月開催される会合で、画期的ながん研究に迅速にアクセスできる機会を提供している。この会合では、アンメットニーズの分野における優れた治療効果、科学的洞察または進展を実証する重要なランダム化第2相または3相試験から得られた最新のデータが発表されている。科学の進歩が速く、研究成果を臨床医と共有してデータについて検討し、実臨床に移行して患者に利益をもたらすためには年会を待つことができないほど重要である新しいデータを研究者が発表する機会を、プレナリーは提供する。(以下略)

翻訳粟木瑞穂

監修下村昭彦(乳腺・腫瘍内科/国立国際医療研究センター 乳腺腫瘍内科)

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