同種(ドナー)幹細胞移植がPh陰性、標準リスクALL患者の生存を延長 | 海外がん医療情報リファレンス

同種(ドナー)幹細胞移植がPh陰性、標準リスクALL患者の生存を延長

更新日

Facebookでシェアする Twitterにツィートする LINEに送る print

同種(ドナー)幹細胞移植がPh陰性、標準リスクALL患者の生存を延長

Allogeneic (Donor) Stem-Cell Transplant Boosts Survival in Ph-Negative, Standard-Risk ALL

(Posted: 01/07/2008)-2007年11月29日のBlood誌に掲載された報告によると、成人急性リンパ性白血病(ALL)治療に関する過去最大規模の臨床試験で、標準リスクのフィラデルフィア染色体陰性ALL患者は、化学療法により得られた第一寛解期後に同種(ドナー)造血幹細胞移植を受ける方が、化学療法を継続するよりも生存期間が有意に延長した。


要約
成人の急性リンパ性白血病(ALL)治療の過去最大の臨床試験において、標準リスクのフィラデルフィア染色体(Ph)陰性ALL患者では、化学療法による1回目の寛解後、化学療法を続ける代わりに、同種(ドナー)幹細胞移植の治療を受けた方が生存期間が有意に長くなりました。驚くべきことに、幹細胞移植を受けるベネフィットは、高リスクのPh陰性患者のほうが標準リスクの患者より少なくなりました。幹細胞ドナーのいない患者では自家(自己)幹細胞移植は、継続的な化学療法より有効性が少なくなりました。

出典
2007年11月29日オンライン発行Blood 誌 (ジャーナル要旨参照
(Blood. 2007 Nov 29 [Epub ahead of print])

背景
同種(ドナー)骨髄幹細胞移植は、白血球の癌である急性リンパ性白血病(ALL)成人患者の治療選択枝になりました。白血球は骨髄で生産されます。

同種移植において、医師は最初に高用量化学療法または放射線療法で患者の骨髄を破壊します。その後、適合する血縁者ドナーからの健康な骨髄幹細胞が患者に注入され、新しい骨髄が生産されます。
同種移植は、研究者が言う「移植片対白血病」効果を引き起こします:白血病細胞を体の正常な一部で「自己」とみなす患者の元来の免疫細胞とは異なり、新しい骨髄によって生産される免疫細胞は白血病細胞を癌と認識し、白血病細胞を攻撃します。

適合するドナーのいないALL患者は、自家(自己)幹細胞移植を受けることがあります。 この場合は、骨髄幹細胞は寛解期に患者から採取され、保存されます。 その後、医師は癌細胞と残りの骨髄を破壊するために高用量化学療法または放射線療法を用います。最後に、保存されていた幹細胞が患者に戻され、新しい完全に健康な骨髄を生産します。

自家移植を行うことで、自家移植以外では不可能な高用量の化学療法を受けられますが、有益な移植片対白血病効果をもたらしません。したがって、自家移植は、同種移植ほど効果的であるとは考えられていません。
幹細胞移植は重度の副作用を伴う可能性があるので、この療法は、標準化学療法後再発した、あるいは、再発のリスクが高いと思われる患者のために主に使われてきました。研究者らは、幹細胞移植についての2つの疑問を解決するために、成人ALLの治療の過去最大の臨床試験を計画しました:

•最初の治療として同種移植が化学療法の代わりに行われた場合、再発リスクが高い患者と、標準の患者の両方で生存期間を改善できるか。
•自家移植は、同種移植を行うための適合ドナーがいない患者に行う継続標準化学療法と同様の効果があるか。

試験
1993年から2006年までに、成人ALL患者が、フィラデルフィア(Ph)染色体と呼ばれている遺伝子突然変異の有無に関わらず、International ALL 試験(MRC UKALL XII/ECOG E2993)に登録されました。遺伝子変異をもつ患者(Ph-陽性と呼ばれる)は再発リスクが最も高くなっています。

試験に登録されたすべての患者は、最初に導入化学療法と呼ばれる高用量化学療法を受けました。導入化学療法後、寛解になった患者は、試験の主要部まで進むことができました。第一寛解期の患者のうち、規定の年齢制限以下で適合血縁ドナーのいるすべての患者は同種骨髄移植を受けました。

ドナーのいない患者は、自家移植あるいは2年半の継続化学療法に無作為に割付けられました。これら両グループの患者は、無作為割付け前に強力化学療法を受けました。

患者は年齢、診断時に存在した白血球数、フィラデルフィア染色体の有無で高リスクと標準リスクの患者に分類されました。全生存率、再発または死亡までの時間、再発率、再発に関連しない死亡について、各治療グループ内の高リスクと標準リスク患者間の比較およびグループ間の比較を行いました。

United Kingdom Medical Research Council と Eastern Cooperative Oncology Group of the United Statesの研究者らは、共同でInternational ALL試験を計画、実行しました。論文の筆頭著者はNorth London Cancer NetworkのAnthony H. Goldstone医師でした。

結果
ここに記す結果は、試験のうちPh陰性患者に関するもののみで、他の要因により再発リスクが高い、あるいは標準に分類されました。研究者らは、後日、試験のPh陽性患者(再発リスク大)のデータを公表します。

試験において、適格患者1,913人のうち、1,646人はPh陰性でした。このうち1,351人は最初の寛解を達成し、試験の主要部に移りました。全体として、適合ドナーのいるPh陰性患者の治療後5年間の生存率は53%で、ドナーのいないPh陰性患者の治療後5年間の生存率は治療がどちらであれ45%でした。

別々に分析してみると、高リスク患者ではドナーのいる人はドナーのいない人に比べて生存期間が有意に長くはなりませんでした(41%対35%)。 この原因の大部分は移植片対宿主病と感染により、移植関連の死亡率が高リスク患者でより高かったからでした。全生存率は、標準リスク患者においてドナーのいる人ではドナーのいない人と比べ有意に改善されました(62%対52%)。

ドナーがいなかった456人の患者では、化学療法グループに無作為に割付けされた患者の方が、自家移植を受けている患者と比較して、再発時間や死亡までの時間を大幅に改善させ、またより良い全生存率を得ました。移植または治療による死亡を含む、再発が原因ではない死亡については、高リスクあるいは標準リスクのPh陰性患者のいずれもグループ間での違いはありませんでした。

その後、研究者らは、同種移植(ドナー在り)を行った患者と化学療法(ドナー無し)を受けた患者を比較し分析を行いました。標準リスクの患者は、同種移植により5年間生存率と全生存率が改善されましたが、高リスクの患者では改善されませんでした。

制限事項
研究の1つの制限は、同種移植の一部として患者に用いられたレジメンの毒性であったと、メリーランド州ボルチモアのジョンズホプキンス大学の腫瘍学准教授、Steven Gore医師が説明しています。 「使用された特定の移植プロトコルは、標準と考えられるものより毒性が強いものでした…移植の結果が移植レジメンの選択により否定的な結果に相殺された可能性もあります。」 と彼は述べています。

米国国立癌研究所のPediatric Oncology Branchの臨床責任者であるAlan Wayne医師が次のように述べています。加えて、試験のデザインによるものから、延命効果は、55才以下の患者でしか示されていません。55才以上の患者のための移植のリスクとベネフィットは、この試験では測定されませんでした。

コメント
「全生存率に関して言えば、ドナーがいることで高リスク患者は標準リスク患者よりベネフィトが劣ることもあることに驚かされるかもしれません。」と著者らは述べています。「高リスク患者は直ちに同種移植を受けなければならないという見方がよくあることから、これは重要な成果です。」

「血縁ドナー同種移植は標準リスクの成人ALLの寛解期での選択される治療で、長期生存のために最も大きなチャンスを提供します。自家移植は、ドナーのいない患者において地固め/維持化学療法より不利な結果です」と結論しました。

「この研究は、ALLの治療として自家移植の実施をさらに阻止することでしょう」と、Wayne医師が同意しました。彼は次のように述べています。「同種移植に関しては、幹細胞移植技術が向上し、例えば非血縁ドナーからの移植のような代換ドナー移植がより安全になれば、 このアプローチは、成人ALLの治療でより大きな役割を果たすことが期待されています。」

******
HAJI 訳
林 正樹(血液・腫瘍科)監修

printこの記事を印刷する Facebookシェアする Twitterツィートする LINE送る

免責事項当サイトの記事は情報提供を目的としてボランティアで翻訳・監修されています。翻訳の記事内容や治療を推奨または保証するものではありません。

注目キーワード

新着ドキュメント

一覧

週間ランキング

  1. 1乳がん化学療法後に起こりうる長期神経障害
  2. 2非浸潤性乳管がん(DCIS)診断後の乳がんによる死亡...
  3. 3BRCA1、BRCA2遺伝子:がんリスクと遺伝子検査
  4. 4若年甲状腺がんでもリンパ節転移あれば悪性度が高い
  5. 5がんに対する標的光免疫療法の進展
  6. 6「ケモブレイン」およびがん治療後の認知機能障害の理解
  7. 7HER2陽性進行乳癌治療に対する2種類の新診療ガイド...
  8. 8ルミナールA乳がんでは術後化学療法の効果は認められず
  9. 9コーヒーが、乳がん治療薬タモキシフェンの効果を高める...
  10. 10治療が終了した後に-認知機能の変化

お勧め出版物

一覧

arrow_upward